心理カウンセラーと傾国美男(イケメン)と社内公募婚~導きたいのに私が甘く導かれてます~

「おい‼」

その声と同時に首元の息は仰け反るように離れ私の視界にさっき出て行ったはずの陽翔が殺気を帯びた顔で男を睨みつけている。

「せん…はると」

男の髪を引っ張りデスクに打ち付けるけど男は体勢を崩してもなお彼に食ってかかる。

「うわあああ!!!!!!」

大声で叫び倒されても立ち上がる姿に震えが止まらない。
暴れまくった男は彼に腕を取られて部屋の中央で半回転して関節を抑えられた。

「霧島‼」

後を追って入って来た霧島さんが彼の代わりに男を押さえる。

「千湖」

カタカタ震える私に自分のスーツを着せて優しく抱き寄せる。
優しい腕と動悸が早い胸に安堵して涙腺が崩壊した。


「男の動機等はこれから調べて分かると思いますが…状況聞く限り先生に対する依存とストーカーですね」

男は私が毎朝挨拶を交わしていた警備員だった。
深めにかぶっていた帽子と制服と言う安心感から男の顏を見たことが無くて分からなかった。

「警察には良かったのか?」

警察を呼べばホテルへの風評被害にもなりかねない。
新しい服も準備して貰い派遣会社にも連絡して貰ってそれ以上は望まない。

「警察より酷くないですか…?」

あの男はこれから彼と海外に旅立ちそして辺境に追いやられる。
国外追放のような物で二度と日本に戻れない。

「これでも甘い!本当ならここで」

顏が犯罪者の顏になってる。
この四条 陽翔は思ったより“鬼”だと思う。
霧島さんからは「また、ありとあらゆるコネを使いました」と聞いた。

「あいつ変だったもんな…」

二年前と内容は違ってもまた自分のせい。
私は彼が少しずつ回復してると勘違いしてた。
距離感を取ってたつもりなのに。