婚約することになったのは良かったけど
この一週間で私はすでに後悔しつつある。
「ネクタイはこちらですかね」
早く帰って欲しい。
適当に自分好みのネイビーとグレーのストライプの方を渡すけど受け取らない。
「結んで」
近すぎる‼
顏を近づけてくるから背もたれの下がる位置最大までのけ反る。
「それより何やってくれてるんですか?!」
「心配なんだから仕方ないだろ?本当なら俺の部屋の隣に移動したいくらいだ!」
だからってこの対策ってどう思いますか?
「そこに隠しカメラと…」
「霧島さん、もう良いですから」
カウンセラー室の模様替えが始まってる。
頼んだわけじゃない。
勝手に彼のやってること!
ため息まじりに呟くと「お疲れ様です」と言葉とは真逆の表情で霧島さんは慰めてくれる。
霧島家は長年、四条家の秘書的役割をしているらしく彼のわがままを嫌と言うほど聞いてきた人。
(…少し残念かな)
あの噂は皆んなの都合の良い妄想だったってこと。
「私の仕事が減って助かります。一時期は本当に先生へのストーカーみたいで」
遠い目をされる。
相当私に執着してたんだと思うけど実害はなかったから気にしてはいない。



