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　営業部と経理部での飲み会の日がやってきた。幹事の役割は松永君がほぼ片付けてくれ、私は化粧室の鏡の前に立つ。

（メイクを直すか、直さないか）
　通常ならば親交を深める席に上司はいない方がいい。現に小佐田部長は参加しない。
　しかし、その部長から幹事をするよう言われた手前、不参加という訳にもいかず。形式上、私が責任者となるから。

（だからと言ってメイク直ししたら、気合を入れてるって思われるかも）
　この飲み会は合コンの側面もある。自意識過剰だと思うがあまり目立ちたくない。乾杯の挨拶をすませ、さっさと引き上げるつもり腹づもりだ。
　身だしなみレベルの化粧直しに躊躇するなんて、馬鹿げている。
　馬鹿げているけれどーー

　口紅からスマートフォンへ持ちかえ、メッセージを呼び出す。

『社に戻らず、店へそのまま向かいます。適当に抜け出してラーメン食べに行きましょう！　俺、もう口がラーメンの口ですよ〜（笑）』

　差出人は言わずもがな西山君。楽しみにしてくれているのに、これまた行かない訳にもいかず。

（西山君と食事へ行くにあたり、この疲れた顔はいかがなものか）
　そんな思考にハッとする。
（いやいや、色気づいているんじゃなくて。あんなイケメンの隣を歩くんだからエチケットとして、ね）
　またまたハッとする。
（イケメンって言い方は宜しくない。西山君は部下でしょうに）
　あぁ、百面相が虚しい。がっくり肩を落とす。