「営業部と経理部で飲み会ですか?」

 プロジェクトも佳境を迎えた頃、小佐田部長が提案してきた。
(この忙しい時に? 飲み会?)
 そんな暇などないと喉まで込み上げ、必死に飲み込む。いっそ部長は席でうたた寝していて欲しい。

「お言葉ですが」
「さて幹事は誰がいいかな? お、西山〜」

 やるのであればプロジェクトを終えてから、そう進言しようとするも躱(かわ)される。丸々膨れた身体の何処にそんな俊敏さが宿るのだろう。最短距離で実行を可能にする人物を手招く。

「部長、主任、お疲れ様っす〜」

 西山君はプロジェクトと並行し、大きな案件の詰めに入っているはず。心なしか顔色が優れない。

「小佐田部長! 彼は今ーー」
「トップセールスマンが幹事となれば人の集まりも良くなるだろう?」
「そんな」

 呆れて言葉は続かず、項垂れる。私も残業が重なって、余計な事柄に脳のリソースを割きたくないのだが。

「飲み会ですか?」

 部長とのやりとりを眺め、西山君が忖度した。

「西山君はいいの、私がやるから」

 片手を翳して会話へ踏み込むなと合図を送る。しかし彼は見えない尻尾を振り、私の隣へ立った。

「西山が素直に僕のデスクに来るなんて珍しい」

 並んだ私達を交互にみやると、部長はニヤニヤ笑顔を浮かべる。