「どれにします?」
コーヒー、紅茶、水がある。
「私はどれでも」
「なら水っすね。ガトーショコラにもカフェイン入ってますし、摂り過ぎると睡眠の質が落ちる」
選ぶと蓋を開けた状態で手渡された。
「ネイルしてると開けにくいと思いまして。ダメでした?」
「……ううん、駄目じゃない。ありがとう」
「なら良かった。おしぼりもどうぞ。で、ショコラは取り分けちゃいますね」
西山君はテキパキと動き、父と私は食べるだけの状態となる。
「それでは、いただきます!」
挨拶を促され手を合わす。
(ネイル、気付いてくれたんだ)
ちょっと嬉しい。
「ん〜うまい! 主任とお父さんと食べると格別っす〜」
「もう、大袈裟」
「大袈裟じゃないです。ね? お父さん」
考えてみたら西山君は父をナチュラルに『お父さん』と呼んでいて。
「あぁ、とても美味しい。退院したらまた皆で食べたい」
「じゃあ、お店を予約しますね〜デザートだけじゃなく料理もうまいです」
「いいのかな? 悪いよ。なぁ? 美由紀」
まんざらでもない父は意見を求めてくる。
「そうだね、西山君も忙しーー」
「くなんかないので、ご一緒します〜! 楽しみだなぁ。きっとプロジェクトも成功してるんで、そのお祝いも兼ねましょうね」
私の語尾を乗っ取り、父へさらなる喜びを与える。どうせ心配するだけだろうとプロジェクトを任された件は伝えていなかった。
どんな治療や薬も、娘の充実した近況報告には敵わないらしい。ベッドから身を乗り出して、かじり聞く姿に目頭が熱くなる。
私が営業部への異動を受けた理由、それは父の入院環境をより整える為。広くてキレイな個室で療養させるのが孝行と思っていたが、勘違いだった。
ガトーショコラはほろ苦く、甘い。
コーヒー、紅茶、水がある。
「私はどれでも」
「なら水っすね。ガトーショコラにもカフェイン入ってますし、摂り過ぎると睡眠の質が落ちる」
選ぶと蓋を開けた状態で手渡された。
「ネイルしてると開けにくいと思いまして。ダメでした?」
「……ううん、駄目じゃない。ありがとう」
「なら良かった。おしぼりもどうぞ。で、ショコラは取り分けちゃいますね」
西山君はテキパキと動き、父と私は食べるだけの状態となる。
「それでは、いただきます!」
挨拶を促され手を合わす。
(ネイル、気付いてくれたんだ)
ちょっと嬉しい。
「ん〜うまい! 主任とお父さんと食べると格別っす〜」
「もう、大袈裟」
「大袈裟じゃないです。ね? お父さん」
考えてみたら西山君は父をナチュラルに『お父さん』と呼んでいて。
「あぁ、とても美味しい。退院したらまた皆で食べたい」
「じゃあ、お店を予約しますね〜デザートだけじゃなく料理もうまいです」
「いいのかな? 悪いよ。なぁ? 美由紀」
まんざらでもない父は意見を求めてくる。
「そうだね、西山君も忙しーー」
「くなんかないので、ご一緒します〜! 楽しみだなぁ。きっとプロジェクトも成功してるんで、そのお祝いも兼ねましょうね」
私の語尾を乗っ取り、父へさらなる喜びを与える。どうせ心配するだけだろうとプロジェクトを任された件は伝えていなかった。
どんな治療や薬も、娘の充実した近況報告には敵わないらしい。ベッドから身を乗り出して、かじり聞く姿に目頭が熱くなる。
私が営業部への異動を受けた理由、それは父の入院環境をより整える為。広くてキレイな個室で療養させるのが孝行と思っていたが、勘違いだった。
ガトーショコラはほろ苦く、甘い。

