映画は暗号を巡るミステリーだった。
探偵の男性が主人公。成り行きで出会った考古学者の女性と共に謎を解き明かしていく。
初めはケンカばかりしていた二人だったけど、真相に近づくにつれて、互いを認め合い、惹かれ……最後には結ばれる。そんな話だった。
「あやめさん……どうでした?」
場内が明るくなり、里春さんに尋ねられた。
「すごく面白かったです……! 音楽が壮大で、ハラハラして、最後の展開には感動しました!」
「良かった……楽しんでくれて」
それから両家で昼食。やっぱり話すのは父親同士だった。お父さん、顔合わせの時よりは緊張してないみたい……?
食事が終わる頃、里春さんのお父さんがこう言った。
「少しだけなら、二人にしてやりたいと思うんですが、森野さんは構いませんか」
「はい、ぜひ!」
そんなわけで、わたしと里春さんはカフェに行くことになった。
並んで歩いてみると、里春さんはすごく背が高い……。
そして、歩調をわたしに合わせてくれている。
それだけで胸が締め付けられるようだった。
きっとこの流れはあらかじめ予定されていたものだったのだろう。
里春さんは迷うことなく隠れ家的なこぢんまりしたカフェに連れて行ってくれた。
店内に入ると、漂う香ばしいコーヒー豆の匂い。控えめに流れるジャズ。
奥の方の席に向かい合って座った。
「あやめさんは何を飲まれますか?」
「えっと、その……わたし、こういうカフェにもあまり来たことがなくて。コーヒーはブラックじゃ飲めないです」
「ではカフェラテはいかがですか?」
「はい、それで」
里春さんが目配せをすると、店員さんが来てくれて、里春さんがホットコーヒーとカフェラテを注文した。
初めての二人きりの時間。ずっと、待っていたような気がする。
里春さんが語りかけてきた。
「その……実は、僕、あまり女性と話すのが慣れていないんです。出身は男子校でした」
「えっ……そんな風には思えなかったです。里春さん、すごくわたしのこと気遣ってくださるから」
「あやめさんに失礼なことはしたくないですから。僕なりに考えました」
飲み物が運ばれてきて、わたしたちはそれに口をつけた。
「あやめさん。正直なことをお伺いしたいんです。さっきの映画のように偶然の出会いではなく、決められた出会いで……そんな風に始まる護見合いのことを、どう思いますか」
「えっと、その……」
確かに、わたしだって映画や小説のような出会いを思い描いたこともあった。
さっきの映画の二人もすごく理想的だと思う。
けれど……。
「わたしは、護見合いでの出会いも運命だと思っています。古いしきたりとかに縛られて、窮屈ですけど。でも、それって安全のためだと理解しています。だから、わたしは、こうして里春さんと出会えて嬉しいんです」
それは、口にして初めて気付いた自分自身の本音だった。
探偵の男性が主人公。成り行きで出会った考古学者の女性と共に謎を解き明かしていく。
初めはケンカばかりしていた二人だったけど、真相に近づくにつれて、互いを認め合い、惹かれ……最後には結ばれる。そんな話だった。
「あやめさん……どうでした?」
場内が明るくなり、里春さんに尋ねられた。
「すごく面白かったです……! 音楽が壮大で、ハラハラして、最後の展開には感動しました!」
「良かった……楽しんでくれて」
それから両家で昼食。やっぱり話すのは父親同士だった。お父さん、顔合わせの時よりは緊張してないみたい……?
食事が終わる頃、里春さんのお父さんがこう言った。
「少しだけなら、二人にしてやりたいと思うんですが、森野さんは構いませんか」
「はい、ぜひ!」
そんなわけで、わたしと里春さんはカフェに行くことになった。
並んで歩いてみると、里春さんはすごく背が高い……。
そして、歩調をわたしに合わせてくれている。
それだけで胸が締め付けられるようだった。
きっとこの流れはあらかじめ予定されていたものだったのだろう。
里春さんは迷うことなく隠れ家的なこぢんまりしたカフェに連れて行ってくれた。
店内に入ると、漂う香ばしいコーヒー豆の匂い。控えめに流れるジャズ。
奥の方の席に向かい合って座った。
「あやめさんは何を飲まれますか?」
「えっと、その……わたし、こういうカフェにもあまり来たことがなくて。コーヒーはブラックじゃ飲めないです」
「ではカフェラテはいかがですか?」
「はい、それで」
里春さんが目配せをすると、店員さんが来てくれて、里春さんがホットコーヒーとカフェラテを注文した。
初めての二人きりの時間。ずっと、待っていたような気がする。
里春さんが語りかけてきた。
「その……実は、僕、あまり女性と話すのが慣れていないんです。出身は男子校でした」
「えっ……そんな風には思えなかったです。里春さん、すごくわたしのこと気遣ってくださるから」
「あやめさんに失礼なことはしたくないですから。僕なりに考えました」
飲み物が運ばれてきて、わたしたちはそれに口をつけた。
「あやめさん。正直なことをお伺いしたいんです。さっきの映画のように偶然の出会いではなく、決められた出会いで……そんな風に始まる護見合いのことを、どう思いますか」
「えっと、その……」
確かに、わたしだって映画や小説のような出会いを思い描いたこともあった。
さっきの映画の二人もすごく理想的だと思う。
けれど……。
「わたしは、護見合いでの出会いも運命だと思っています。古いしきたりとかに縛られて、窮屈ですけど。でも、それって安全のためだと理解しています。だから、わたしは、こうして里春さんと出会えて嬉しいんです」
それは、口にして初めて気付いた自分自身の本音だった。



