護見合い―もりみあい―

 それからは、お父さんが料理の話を始めた。

 この店を選んだのは一条家。そのことについてのお礼と、店選びのセンスを褒めるのが顔合わせの終盤とされていた。

 わたしは出された料理をなんとなく口に運んでいただけで、味なんてほとんどわかってなくて……。

 里春さんとの会話の後は、自分の気持ちに整理がつかなくて、それをごまかすようにジュースを飲んでいた。

 デザートが終わって、園田さんが仕切り始めた。



「本日はとても良いお食事でしたね。ここでお開きにして、後のことは一条家から。里春さん、あやめさん、お疲れ様でした」



 家に帰って、ワンピースを脱ぎ捨て、ジャージでソファに転がった。



「はぁ……疲れたよぉ……!」



 お父さんもぐったりしていた。



「緊張した……あやめ、里春さんはどうだった? って、決めるのは里春さんなんだけど。一週間以内には返事がくるみたいだ」

「うん……また、会ってみたい……」



 お母さんが言った。



「本当に素敵な人だったねぇ。あやめ、もしダメでも次があるからね」

「うん、そんなに期待はしないでおく」



 ところが、その時だった。

 お父さんのスマホが鳴った。



「園田さんだ……えっ、もう?」



 お父さんは電話に出ると、相槌を打ちながらペコペコと礼をした。



「あやめ! 里春さん、交際に進みたいって!」

「ほ、本当に?」



 また、里春さんに会える。

 詳しく聞くと、映画館に連れて行ってくれるみたい。

 ただ、二人きりというわけにはいかなくて、それぞれの両親と一緒に、というのが条件だ。

 あっという間に、約束の日がやってきて。

 今度はカジュアルな姿の里春さんと対面した。



「あやめさん。今日はたっぷり楽しみましょうね」

「はい!」



 映画館に行くと、香ばしい匂いがフロア中に漂っていた。

 子供時代の頃を思い返す。

 これは……ポップコーンだ!

 でも、食べたいなんて言ったら子供っぽく思われるかな、と素知らぬ顔をしていたら、里春さんの方からこう言われた。



「ポップコーン食べませんか? 僕、大好きなんです」

「じゃあ、ぜひ……」



 映画館では、わたしと里春さんは隣同士に座った。

 ポップコーンは大きいものを一つ、真ん中に置いて分け合った。

 わたしたちは交際に進んだとはいえ、会うのはまだ二回目。

 指が当たらないように、遠慮がちにつまんだポップコーンは、キャラメル味。心までとろけそうな甘さだった。