護見合い―もりみあい―

 わたしと里春さんは、お世話になった人たちにゆったりと過ごしてもらえるような式を選んだ。

 特別な催しや余興はなし。料理とお花にはこだわった。

 歓談の時間をたっぷりと設けて、わたしはウェディングドレス姿でテーブルを回った。

 式が終わり、新居となるマンションにて。

 里春さんが先に引っ越していて、準備は全て整えてもらった状態。

 慣れないハイヒールで足がパンパンになったわたしは、たまらずソファに腰掛けた。



「うう……楽しかったけど、疲れました」

「僕も。もう楽にしてください。それに……敬語もやめない? 僕たち、これで本当に夫婦になったんだから」

「うん、そうだね……」

「これからよろしくね、あやめ」

「こちらこそ、その……里春、さん……」

「さん付けじゃなくていいのに」

「まだ恥ずかしいよ。しばらくは里春さんって呼ばせて?」

「うん、いいよ」



 里春さんは、隣に座ってわたしの手を握り、囁いてきた。



「本当に、僕でいいんだね? 番になったら一生だよ?」

「わたしは、里春さんがいいの。結婚式までずっと待っていてくれたし……信頼してるから」

「僕、その……けっこう食べ物の好き嫌いあるよ?」

「もう、こんな時にそんな話する? それも含めて好きだよ。少しずつ食べられるようになってね」

「うん、わかった。あやめ、大好き」



 里春さんの長い指がわたしの髪をといた。うなじをあらわにされ、そして……噛まれた。



「んっ……!」



 鈍い痛みがあったけれど、その後に幸せが胸いっぱいに広がった。これでわたしたちは番になれたのだ。

「あやめ、大丈夫?」

「うん、平気。それより、嬉しい。これで、わたしたちはずっとずっと一緒だね?」

「そうだよ。何があっても、二人で乗り越えていこう」

 こうして番になった日のことを、わたしは生涯忘れないだろう。

 護見合い。それは、運命。



END