時の流れはあっという間で、とうとう今日は雪祭りの日。
 アリシアは今から最後の練習です。
 アリシアは凍った泉の真ん中から滑り出します。
 ぐんぐん加速してジャンプにチャレンジしますが――

「あぁっ!」

 やっぱりダメ。勇気を見つけたと思ったのに……まだ足りないのでしょうか。

「おしかったよ。次はきっと――」

「無理だよ、もう本番だもの……!」

 アリシアはとても落ち込んでいるみたいです。
 青い目からぽろぽろ、涙がこぼれてきました。

「アリシア……」

 はげまそうとティナが声をかけた時――ふと、空から白いつぶが落ちてきました。雪です。

「たいへん! 氷の上に雪がつもってる!」

 ティナはスコップを持って氷の上に行きました。
 すてんと転んでしまいますが、すぐに立ち上がって雪かきを始めます。

「アリシアのショー、中止になっちゃう!」

 つもらないで! といのりながら、アリシアはいっしょうけんめい雪を氷の外へ出します。

「いいよ別に!」

「よくないよ、アリシアがあんなにがんばったのに! それに、わたしも国中のみんなも、ショーを楽しみにしてるのに!」

 雪はどんどんつもっていきますが、あきらめません。

「みんな楽しみにしてないよ。だってジャンプできないもの」

「ううん、楽しみにしてる! ほら見て!」

 悲しそうな顔で言うアリシアですが、そんなことはありません。
 だって――たくさんの人がスコップを持って、走ってきたのですから。
 これだけいれば、雪がつもるはやさにも負けません!

「みんなアリシアのショーが楽しみなんだよ!」

「アリシアちゃん、がんばって!」

「雪に負けるなー!」

 みんなせっせと雪をどけながらそう言います。
 アリシアの心がぽっとあったかくなりました。

「勇気は見つけられなくてごめん! でもあきらめなかったらできるって信じてるよ!」

 ショーがしたいってわくわくが、ぽっ。
 みんなの応援が、ぽっ。
 心があったまって、おくから何かがわきあがってきます。
 もしかして……これが、勇気でしょうか。

「ティナ! 私、飛べる気がする!」

「うん、アリシアならぜったい飛べる!」

 雪がやんだら、とうとう本番。でも、もう怖くありません。
 だってアリシアの心には、2人で見つけた勇気がありますから。