それからティナは毎日泉へ行くようになりました。
 泉がよく見えるところに座って、アリシアの応援をします。
 アリシアは頑張って練習していますが、今日もジャンプはできません。

「はぁ……ぜんぜんだめ」

 練習を終えたアリシアはほうきを手に取りました。
 氷の上をすーっと滑って、ほうきではいていきます。

「何してるの?」

「氷のかけらを外に出してるの。氷上のお手入れよ」

 さっさっさっとほうきを動かすと、氷の粒が泉の外へ。
 ですがこんなに広い泉を1人でなんて、とてもできそうにありません。

「いつもこれしてるの?」

「そうよ。雪がふった時なんて大変なんだから! 急いで雪かきしないと滑れなくなっちゃうの!」

 アリシアははあっと大きくため息。
 そんなにてまがかかっているなんて、ティナはちっとも知りませんでした。

「手伝うよ!」

「いいの? それじゃあスコップで穴をうめてくれる?」

「わかった!」

 確かに氷の上は、デコボコへこんでいるところがあります。
 ティナは小さなスコップを手に取って、アリシアの手伝いをすることにしました。


《問題》
 画像:上から見た泉。小さなデコボコが点つなぎになっている。


 2人がかりでがんばっても、広い泉はなかなかきれいになりません。
 もうずいぶん長い間こうしています。

「手伝ってくれてありがとう。そろそろ帰らなくていいの?」

「いいよ。だってパパもママもぜんぜん帰ってこないもん!」

 ティナはぷんぷんとおこって言います。
 ティナの家族はとってもなかよしで、ティナはパパとママが大好き。
 だけど雪祭りが近づくと、2人ともいそがしくなって――ティナはひとりぼっちです。

「忙しいのね」

 雪祭りは、国中の人が楽しみにしているイベント。
 ですがティナはあんまり好きではありません。
 だって準備が大変で、パパとママにあまり会えなくなるんですもの。

「『雪祭りは宝物ができる日だよ』ってママは言うけど、そんなのうそ! ちっとも楽しくないのに」

 悲しそうなティナを見て、アリシアも困った顔。
 だけどティナを元気づけたくて、にこりと笑いました。

「なら、私がショーをがんばってティナを楽しませなくちゃね! 勇気探しを手伝ってくれる、お礼!」

 アリシアが笑うと、ティナの気持ちがふわっと明るくなった気がします。
 毎年ひとりぼっちでたいくつな雪祭り。だけど今年は、なんだかちがう気がしました。