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碧い瞳に艷やかな金髪。赤いネッカチーフを付けた、現代には少し珍しい服装。胸には……なんかレーニンに似た顔つきのおじさんが彫られたピンを付けていた。そう言えば、何故ここにこの子が居るのだろうか。さっきまではいなかったはずだし、来たとしても砂の上を歩いたとして、音が鳴らないなんてあり得ない。もう日が沈んでいる。この子はこんな時間まで、大丈夫なのだろうか。それに、心なしか、ピオネールの団員に似ていないか?(ピオネールとは、十歳から十五歳の子どもが入る、共産主義少年団のこと)さまざまな思考が駆け巡り、まとめるのも大変になってきた。
私は、少しばかり、勇気を出して話しかける。
「もう遅い時間だけど、大丈夫?」
少年は直ぐに目を覚まし、なにか、言葉を発した。
「Кто ты!」
あまりはっきりとしない発音を用いた言語。やはりソ連の人ではないのか。期待がどんどん膨らんだ。
「あの…ソ連…の人ですか…?」
「На каком языке вы говорите и где я нахожусь?」
全く理解できないが、話してくれるのだろうか…?………現代の翻訳アプリは便利だ。それを使うこととするか。
「えーと……Из какой вы страны?(あなたはどこの国から来ましたか?)」
特に差別を意味する訳では無いが、とりあえず聞いておこうと思った。もしロシア語であるなら、伝わるはずだ。
「Советский Союз. Вы говорите по-русски. Кстати, где мы?」
解読するのは相当の技術を要する。もしもこれがソ連だとしたら、翻訳ではロシア語を使って正解だったと思える。……しかし、何が何でも可笑しくないか?現代にピオネールの団員…コスプレでロシア人という可能性だってあり得るじゃないか。そもそもなぜこの公園にいる?私の中を駆け巡る疑問はリアリストじみたものであった。自分でも夢がないって失望を覚えるほどである。
夜に近づいてきた。この子は大丈夫なのか心配なので、家に連れて行ってあげることにした。幸いというべきなのか、家には遅くまで親が帰ってこないし、一人っ子の私に、話し相手が欲しいところであった。私は早速、
「えーと…私の家に招待しますって…えー…Я приглашу вас к себе домой.」
もしかしたら不審者だと思われるんじゃないか、そんな思考も頭をよぎったが、物事は簡単に進んだ。
「Ну тогда пожалуйста」
表情は先ほどよりもゆるく微笑んでいるように見えるので、きっと来れるとかそういうようなことを言ってるんだろうな…。多分。
「こっち。」
できるだけ簡単な単語で、指をさして道を行った。暗くて迷子になると大変なので、手をつないでいくことにした。
「Что ты делаешь!」
顔を赤くした少年を横目に、私は走り抜けていった。
碧い瞳に艷やかな金髪。赤いネッカチーフを付けた、現代には少し珍しい服装。胸には……なんかレーニンに似た顔つきのおじさんが彫られたピンを付けていた。そう言えば、何故ここにこの子が居るのだろうか。さっきまではいなかったはずだし、来たとしても砂の上を歩いたとして、音が鳴らないなんてあり得ない。もう日が沈んでいる。この子はこんな時間まで、大丈夫なのだろうか。それに、心なしか、ピオネールの団員に似ていないか?(ピオネールとは、十歳から十五歳の子どもが入る、共産主義少年団のこと)さまざまな思考が駆け巡り、まとめるのも大変になってきた。
私は、少しばかり、勇気を出して話しかける。
「もう遅い時間だけど、大丈夫?」
少年は直ぐに目を覚まし、なにか、言葉を発した。
「Кто ты!」
あまりはっきりとしない発音を用いた言語。やはりソ連の人ではないのか。期待がどんどん膨らんだ。
「あの…ソ連…の人ですか…?」
「На каком языке вы говорите и где я нахожусь?」
全く理解できないが、話してくれるのだろうか…?………現代の翻訳アプリは便利だ。それを使うこととするか。
「えーと……Из какой вы страны?(あなたはどこの国から来ましたか?)」
特に差別を意味する訳では無いが、とりあえず聞いておこうと思った。もしロシア語であるなら、伝わるはずだ。
「Советский Союз. Вы говорите по-русски. Кстати, где мы?」
解読するのは相当の技術を要する。もしもこれがソ連だとしたら、翻訳ではロシア語を使って正解だったと思える。……しかし、何が何でも可笑しくないか?現代にピオネールの団員…コスプレでロシア人という可能性だってあり得るじゃないか。そもそもなぜこの公園にいる?私の中を駆け巡る疑問はリアリストじみたものであった。自分でも夢がないって失望を覚えるほどである。
夜に近づいてきた。この子は大丈夫なのか心配なので、家に連れて行ってあげることにした。幸いというべきなのか、家には遅くまで親が帰ってこないし、一人っ子の私に、話し相手が欲しいところであった。私は早速、
「えーと…私の家に招待しますって…えー…Я приглашу вас к себе домой.」
もしかしたら不審者だと思われるんじゃないか、そんな思考も頭をよぎったが、物事は簡単に進んだ。
「Ну тогда пожалуйста」
表情は先ほどよりもゆるく微笑んでいるように見えるので、きっと来れるとかそういうようなことを言ってるんだろうな…。多分。
「こっち。」
できるだけ簡単な単語で、指をさして道を行った。暗くて迷子になると大変なので、手をつないでいくことにした。
「Что ты делаешь!」
顔を赤くした少年を横目に、私は走り抜けていった。
