いつもの習慣で、私は翼の部屋の掃除を始めた。
 基本的に几帳面な性格の子なので、酷く散らかしたりすることはないのだが、完璧に掃除してあるとは言い難いから。
 掃除機をベッドの下にかけると、何か本のようなものを吸う音がした。
 教科書だったら大変だと思って引っ張り出したのだが⋯⋯それは、どう見ても教科書ではない。
「これが、ママ友から聞いていたアレかしら⋯⋯?」
 私のママ友というと、年上ばかりである。翼が中学生になった頃、三兄弟の母親で、既に長男は成人していたママ友から、
「園田さん。もし、翼くんの部屋からエロ本が見つかっても、動揺して咎めるようなことは野暮ってもんよ。中学生にもなれば、大抵の男の子はそういうことに興味があるってこと、私たちの時代にも、保健体育の授業でも習ったでしょ?」
 習っただろうか?それは、ちょっと思い出せない。