奥さまが恋に落ちるまで

「あるある。大ちゃん、柔道部の主将だよね?翼がどうして中学で柔道部に入ってみたものの、すぐ辞めたのかを考えたら、なんだか色々と繋がったよ」
「え!?まさか、翼の好きな相手って⋯⋯」
「いやいや、これはあくまで憶測。本人がそう言った訳じゃないし」

 夫の憶測というのは、こうだ。
 翼は、かつて女の子のことで面倒な思いをし、柔道一筋のガキ大将、大ちゃんに救われる。
 最初は、純粋に友情だけでいつも一緒に居て、翼も柔道を始める。
 小学6年生のサマーキャンプで、何かに目覚めてしまう。悩んだ末、大ちゃんとの友情を壊さぬよう、逃げるように中学受験。
 中学でも柔道部に入ったが、心と裏腹に体が反応しそうな自分が嫌で、退部。
 大ちゃんは今でも翼との友情を大事にし、翼は自分の恋を決して悟られぬよう、そっけなくしてしまうが、好きな相手だから突き放すこともできず、親友のまま悶々とし続けている。