奥さまが恋に落ちるまで

 そんな昼下がりの情事のあと、ベッドの中で、
「翼は⋯⋯いつからなのかしら?」
 ポツリと呟いた。
「いつからって?」
「同性が好きだと自覚したこととか、エッチなことに興味を持ったことよ。あんなにシャイで真面目な子が、そういうことに興味あるとは思わなくて⋯⋯」
「ショックだった?」
「ママ友から、健康な男の子ならエロ本を隠し持っていても当たり前だって聞かされていたから、別にショックでは⋯⋯ううん、本音を言えば、まさかうちの子にかぎって、と思ってた」
「それって、性への目覚めのこと?それとも、同性愛者であること?」
「たぶん、どちらとも。あーもう!私って母親失格ね⋯⋯」
「そんなことない。君は本当にいい母親だよ。まさに良妻賢母。それに⋯⋯女性としても極上だしね」
 髪を撫でながら、少しいたずらっぽく言われ、思わずドキッとしてしまう。