奥さまが恋に落ちるまで

　私が中学時代に仲の良かった友達は、同じく内部進学の子が多い。
　そんな中、中学受験組のある同級生が、彼氏持ちだと言った時には、周りはやたら色めき立った。
「ねーねー、彼とはどこまでいったの？」
　周りは興味津々で彼氏持ちの子に尋ねると、彼女は少し戸惑いがちに、
「湘南まで⋯⋯仲間も一緒に」
「そういう使い古されたボケはいいって！チューぐらいはした？」
「えっ！？ないない！」
「そうなの？じゃあナニしてんの？」
「ナニって⋯⋯単に両想いというだけで、今は学校も違うから、デートすらまともにしたことないよ」
「えー？そんなもん？」
「少なくとも、私はね」
　私は、みんなの食いつきぶりについていけず、ただ聞いているだけでしかなかったが、その後まもなく彼女は転校したとのこと。
　しかし、必死で中学受験したのに、一年の二学期を待たずに転校というのも妙な話だろう。