奥さまが恋に落ちるまで

「あはは!箱入りお嬢様のきみまで同類にしちゃ悪いか。それより、翼のことだけど⋯⋯。あの子はまだ中学生で、親の管理下にある。もし男が好きだとしても、そのことを問題にするつもりはないよ。跡継ぎ息子でもないんだし。ただ、危険な目に遭ってからでは遅いだろう?だから、あの子の情報はちゃんと共有してほしい。僕には、父親としての責任があるし、母親には言いにくいこともあるだろうから」
 そう言われると、かつて翼が学校に行くのが嫌だと言い出した時も、私よりも夫のほうがうまく理由を聞きだすことができた。
 当然、お腹をいためて翼のことを生んだのは私で、一緒の時間も私のほうが多いのに、男の子にとって話しやすいのは父親のほうということなのだろうか。
 なんだかちょっと、悔しい⋯⋯。
「桜子さーん?なんか、ふくれっ面になってるよ」