夕飯を作り終えた頃、夫が帰ってきた。
「おかえりなさい。ちょっと、相談したいことがあるの」
 翼に聞かれぬよう、小声で言うと、夫は可笑しそうに、
「わかったわかった。今度は何だろねー?」
 私だけが真剣に悩んでいて、夫はいつもと変わらず余裕綽々なのが、なんだか少し悔しい。
「おーい、起きろ。夕飯できたって」
 夫が翼のことを起こし、いつもと変わらぬホームドラマのようにのんびりした夕食の風景。
 そんな中、私は悶々と、どうやって夫に相談しようか考え続けていたが、なんでもかんでも夫に相談してばかりでなく、たまには一人で考えようと決めた。

 翼が自分の部屋に戻ったあと、
「じゃあ、さっきのお悩みを聞こうか」
 夫はそう言ってくれたが、
「あ⋯⋯それなんだけど、もう少し自分一人で考えてみる」
「大丈夫?」
「ええ。あ、そうだ。パソコンを貸してもらえるかしら?」
「いいよ」