朝、目が覚めると、世界が少しぼやけて見えた。
時計の針が読めない。数字が、形を失っていく。
「またか…」 凛は小さくつぶやいた。
最近、こういうことが増えてきた。
記憶が抜け落ちるように、日常が少しずつ崩れていく。
病院のベッドに座りながら、凛はスマホを開いた。
鈴馬との写真が並ぶフォルダ。
笑顔、笑顔、笑顔。
「全部、宝物だよ」
でも、その宝物を、彼に渡すことはできない。
渡してしまえば、彼はきっと泣く。
苦しむ。
それだけは、絶対に避けたかった。
看護師が部屋に入ってくる。
「凛ちゃん、今日は少し顔色いいね」
「そうですか?…でも、頭の中はぐちゃぐちゃです」
「無理しないでね。何かあったらすぐ呼んで」
凛は微笑んでうなずいた。
その笑顔の裏で、彼女は自分の“終わり”を静かに受け入れ始めていた。
凛はノートを開いた。
そこには、彼女が密かに書き続けていた“手紙”があった。
宛先は、楠木鈴馬。
ページをめくるたびに、凛の想いが綴られていた。
凛はその手紙を封筒に入れ、母に託した。
「私がいなくなったら、鈴馬に渡して。お願い」
母は泣きながらうなずいた。
「わかったよ。絶対に渡すからね」
その夜、凛は窓の外を見つめた。
星が瞬いていた。
「鈴馬、今もどこかで笑ってるかな」
そう思うと、胸が少しだけ温かくなった。
ベッドの横には、彼との思い出の品が並んでいた。
ペアのキーホルダー、文化祭で撮った写真、彼がくれた手紙。
それらをそっと撫でながら、凛はつぶやいた。
「ありがとう。私、幸せだったよ」
そして、凛はそっと目を閉じた。
残された時間は、もうわずかだった。
でも、彼に渡したい言葉は、確かにここにある。
それが、彼女の最後の願いだった。
時計の針が読めない。数字が、形を失っていく。
「またか…」 凛は小さくつぶやいた。
最近、こういうことが増えてきた。
記憶が抜け落ちるように、日常が少しずつ崩れていく。
病院のベッドに座りながら、凛はスマホを開いた。
鈴馬との写真が並ぶフォルダ。
笑顔、笑顔、笑顔。
「全部、宝物だよ」
でも、その宝物を、彼に渡すことはできない。
渡してしまえば、彼はきっと泣く。
苦しむ。
それだけは、絶対に避けたかった。
看護師が部屋に入ってくる。
「凛ちゃん、今日は少し顔色いいね」
「そうですか?…でも、頭の中はぐちゃぐちゃです」
「無理しないでね。何かあったらすぐ呼んで」
凛は微笑んでうなずいた。
その笑顔の裏で、彼女は自分の“終わり”を静かに受け入れ始めていた。
凛はノートを開いた。
そこには、彼女が密かに書き続けていた“手紙”があった。
宛先は、楠木鈴馬。
ページをめくるたびに、凛の想いが綴られていた。
凛はその手紙を封筒に入れ、母に託した。
「私がいなくなったら、鈴馬に渡して。お願い」
母は泣きながらうなずいた。
「わかったよ。絶対に渡すからね」
その夜、凛は窓の外を見つめた。
星が瞬いていた。
「鈴馬、今もどこかで笑ってるかな」
そう思うと、胸が少しだけ温かくなった。
ベッドの横には、彼との思い出の品が並んでいた。
ペアのキーホルダー、文化祭で撮った写真、彼がくれた手紙。
それらをそっと撫でながら、凛はつぶやいた。
「ありがとう。私、幸せだったよ」
そして、凛はそっと目を閉じた。
残された時間は、もうわずかだった。
でも、彼に渡したい言葉は、確かにここにある。
それが、彼女の最後の願いだった。

