殺し屋・ユウトのゆるっと日常


「はい、じゃあ今日からここでバイトよろしくね〜」
「よろしくお願いしま〜す(あ、やべ口調ゆるんだ)」

――ここは町の回転寿司チェーン「すし丸」
時給:950円
制服:キャップ付きエプロン
職種:ホールときどき厨房
そして、新入り:殺し屋(23)

 

※なぜバイトを始めたか?
答え:ターゲットがここでよく寿司食ってるから(超日常派)

「オレも普通に寿司好きだしね」
※本当に好き。特にサーモンチーズ炙り。

【AM11:00】
さっそく初仕事。

「いらっしゃいませー!」
(うわ、なんかテンション上がりすぎて声裏返った)
「番号札3番の席でーす」
(※この声が数時間後、店長を震え上がらせることになる)

 

――厨房に入ると、先輩のアルバイト・シュウくん(19)が話しかけてくる。

「魚さばけたりする?」
「……さばくというか、仕留めるのは得意かな」
「え、こわ」
「安心して。君には刃物は向けない」
「やっぱこわ!!」

【PM1:00】
事件が起きた。
常連の“ターゲット”が来店。しかも他の客と口論中。

「おい!お前、さっき俺のウニ取っただろ!」
「ウニ回ってたんで取っただけです!」
「は!?そっちは人の皿だろうが!」

(ターゲット…癖も悪いが、マナーも最悪)

 

その時――
ホール奥からユウトがゆっくり歩いてくる。
手には、皿の乗ってない銀色のレーン台。

「申し訳ありません…お客様、“命”と“ウニ”は、一度手放したら戻りません」

「えっ……」
一瞬で場が静まる。

「ここは寿司屋。命のやりとりは厨房までにしてください」

(めっちゃ怖い顔してる。誰だよあのバイト……)

 

ターゲット、一言も返せず帰宅。
ウニは回り続ける。

【PM6:00】
「ユウトくん、今日が初日とは思えない活躍だったよ〜」
「いやあの、最後のセリフ、あれ即興?」
「即興です(ドヤ)」

店長、泣きながら時給を100円上げる。
“伝説の新人バイト”と呼ばれた男の1日がこうして終わった。

 

帰り道、ユウトはポツリと呟いた。

「結局、ターゲットには手出せなかったな…」
「まぁ…ウニ取ってる時点で罪は重いか」