あの夏、金木犀が揺れた

校門を出ると、琥太朗の姿が見えた。

黒い服の男たちと話している。

「柊、借金の話、ちゃんと伝えろよ」

低い声が聞こえ、琥太朗が「うるせえ」と吐き捨てる。

私は物陰に隠れ、胸が締め付けられる。

彼は何を抱えているの?

放課後、急に雨が降り出した。

傘を持たず、校庭の金木犀の木の下で立ち尽くしていると、頭上に影。

琥太朗が無言で傘を差し出した。

「…濡れるぞ、コハク」

その声に、昔の彼が重なる。

「ありがとう、琥太朗」

彼は目を逸らし、「別に」と呟く。

でも、傘を握る手に、力が入っていた。