あの夏、金木犀が揺れた

夜、琥太朗が私の家に来た。

手に、父親からの手紙。

「借金を返せ。俺はまだ生きてる」

彼の目が、暗く沈む。

「親父の拳、母さんの咳。あの夜が、俺を縛ってた」

小四の痣、小六の夜逃げ。

琥太朗の声が、震える。

「コハク、お前の笑顔がなかったら、俺、立ち上がれなかった」

私は彼の手を握った。

「君はもう、過去に縛られないよ。君の笑顔は、私の光だから」

琥太朗が手紙を手に、校庭へ向かった。

金木犀の木の下で、彼は手紙を燃やした。

「親父の呪い、終わりだ」

炎が消え、香りが彼を包む。

私はそっと抱きしめた。

「君は自由だよ、琥太朗」

彼の目が、涙で光る。