あの夏、金木犀が揺れた

朝、琥太朗の机に手紙が。

不良仲間の残党からの脅し。

「柊、母親の病院、知ってるぞ。今夜、校庭で話つけよう」

彼の顔が青ざめる。

「コハク、近づくな。俺がケリをつける」

その声に、決意と恐怖が混じる。

「君は一人じゃないよ。私も一緒に」

私が言うと、琥太朗の目が揺れる。

「…バカ、お前まで危ねえ」

でも、彼の手が私の手を一瞬、握った。

放課後、校庭の金木犀の木の下で、黒い服の男たちが待つ。

「柊、裏切ったな」

リーダーの声が、低く響く。

琥太朗が前に出る。

「もうお前らの鎖には縛られねえ。母さんも、俺も、自由だ」

その言葉に、男たちが詰め寄る。

私は琥太朗の隣に立ち、叫んだ。

「君は一人じゃない!私がいる!」

遠くで、警察のサイレンが響く。

琥太朗が事前に教師に相談し、警察を呼んでいた。

男たちは慌てて逃げるが、警官に取り押さえられる。

琥太朗の肩が、震えながら緩んだ。

「コハク…お前、ほんとバカだな」

その声に、笑顔の片鱗。