あの夏、金木犀が揺れた

週末、町の夏祭りに誘った。

小六の花火を、君とまた見たい。

屋台の喧騒を抜け、校庭の金木犀の木の下に立った。

花火が、夜空に弾ける。

琥太朗が、私の隣にいる。

「コハク、昔、ここで花火見たよな」

彼の声が、懐かしい。

「うん…君が、押し花くれた」

私が呟くと、彼がポケットから何か取り出す。

薄れた紙に、金木犀の花びら。

「…俺も、持ってた」

彼の声が、震える。

私の胸が、熱くなる。

花火の光に、君の顔が照らされる。

小六の君が、蘇る。

人混みで、誰かに押されそうになった時、彼の手が私の手を握った。

「コハク、離すなよ」

その声に、心臓が暴れる。

君の手、温かい。

「…うん、離さない」

私の声も、震えた。