あの夏、金木犀が揺れた

放課後、校庭の金木犀の木の下に立った。

香りが、甘く胸を締め付ける。

琥太朗が、木の下に来た。

「コハク、何だよ、呼び出して」

彼の声はそっけないけど、目が優しい。

私はスケッチを差し出した。

金木犀の木と、笑う二人の絵。

「琥太朗、この絵…君の笑顔、描きたかった」

私の声が震える。

彼の目が、スケッチに止まる。

「…バカ、こんな価値ねえよ、俺」

彼の声が、低い。

「そんなことない!君の笑顔が…私の夢なんだから!」

言葉が溢れる。

琥太朗の目が、私を捉える。
「コハク…お前、ほんとバカだな」

彼が一歩近づく。

風が、金木犀の花びらを舞わせる。

私の心臓が、止まりそうだった。