あの夏、金木犀が揺れた

(視点戻る:琥珀)

昼休み、図書室で生徒会の資料を整理していると、琥太朗が入ってきた。

「…先生に、ここの手伝えって」

彼はそっけなく、本棚の整理を始める。

狭い通路で、手が触れる。

彼の指が、温かい。

「コハク、顔赤いぞ」

琥太朗がニヤッと笑う。

私の心臓が、ドクンと鳴る。

「…う、うそ!赤くないよ!」

慌てて否定すると、彼が笑う。

小四の笑顔が、蘇る。

「バカ、ドジだな、お前」

彼が私の髪に挟まった紙くずを取ってくれる。

その手が、そっと髪に触れる。

君の目が、近い。

心臓が、うるさすぎる。

「琥太朗…ありがとう」

小さな声で呟くと、彼は目を逸らし、「別に」と呟く。

でも、その耳が、赤い。