あの夏、金木犀が揺れた

(視点変更:琥太朗)

コハクの声が、胸に響く。

あの夜、彼女が俺を救った。

「琥太朗は一人じゃない!」

スケッチを握り、泣きながら叫ぶ彼女。

金木犀の木と、笑う俺たちの絵。

あの絵が、俺の心を焼いた。

親父の拳、母さんの咳、借金の鎖。

俺はゴミだと思ってた。

笑う資格なんてねえと、仮面を被った。

なのに、コハクの笑顔が、俺の闇を溶かす。

彼女の純粋さが、俺の汚さを映す。

汚したくねえ、と思ってきた。

でも、今、そばにいたい。

コハクの声が、昔の俺を呼び戻す。

「バカ…こんな俺、ふさわしくねえ」

心で呟く。

でも、彼女の目を見るたび、笑いそうになる。