あの夏、金木犀が揺れた

家に帰り、押し花とスケッチを机に並べた。

金木犀の花びらと、木の絵。

琥太朗の涙が、胸に焼き付いている。

彼の闇は、深くて重い。

父親の拳、母の咳、借金の鎖。

それでも、君は私の名前を呼んでくれた。

スケッチに新たな線を引いた。

金木犀の木の下、君が笑う姿。

涙を拭う私の手。

「琥太朗、この夏、君を救うよ」

私は呟いた。

君の笑顔を、ずっと守りたい。

そして、言えなかった「好き」を、いつかちゃんと伝えたい。

窓の外、金木犀の香りが、夜を優しく包んだ。

あの香りが、君の闇を裂き、未来を照らすと信じて。