あの夏、金木犀が揺れた

琥太朗が膝をつき、息を切らす。

私は彼に駆け寄り、抱きしめた。

血と汗の匂い。

彼の体が、震えている。

「コハク…なんで…バカ」

彼の声が掠れ、頬に涙が落ちる。

初めて見る、琥太朗の涙。

私の心が、熱くなる。

「君が…大事だから。昔も、今も」

声が震えた。

君の笑顔が、私の初恋だった。

失いたくない、絶対に。

琥太朗の手が、そっと私の背中に触れる。

「コハク…俺、ダメな奴なのに…ありがとう」

その声に、笑顔の片鱗があった。

目尻が、ほんの少し、緩んだ。

小四の君が、蘇る。

金木犀の香りが、遠くから漂う。

あの木の下で、君と出会った日から、私の心は君と共にある。