あの夏、金木犀が揺れた

(視点戻る:琥珀)

夜、町外れの廃倉庫へ向かった。

金木犀の香りが、遠くから追いかけてくる。

足が震える。

不良たちに何ができる?

優等生の私なんて、ただの弱虫だ。

生徒会の責任、完璧な自分。

そんな仮面、全部どうでもいい。

琥太朗が傷ついてるなら、怖くても進む。

校庭の金木犀の木の下で、スケッチを握った。

君が「ずっと描けよ」と言ってくれた絵。

小四の笑顔、小六の押し花。

君の笑顔が、私の初恋だった。

失いたくない、絶対に。

「琥太朗、待ってて」

香りが、私を導く。