あの夏、金木犀が揺れた

夕方、校庭で清掃ボランティアが始まった。

生徒会の私がゴミ袋を配ると、琥太朗が意外にも参加していた。

「…先生に強制されただけだ」

彼はそっけないが、ゴミを拾う手は丁寧だった。

木の下で、私がゴミ袋を落とすと、琥太朗が拾ってくれた。

「コハク、昔っからドジだな」

その声に、笑顔が一瞬蘇る。

「…覚えててくれるんだ、君」

私が呟くと、彼は目を逸らす。

「…バカ、忘れるわけねえだろ」

小さな声だった。

清掃後、琥太朗が不良仲間からの電話を無視するのを見た。

「もう、いい加減にしろよ」

彼の呟きに、変化の兆しを感じた。