あの夏、金木犀が揺れた

放課後、校門で琥太朗が黒い服の男たちと話していた。

「柊、金、いつ返すんだ?」

低い声に、琥太朗が「うるせえ、待てよ」と吐き捨てる。

私は物陰に隠れ、息を詰める。

彼は何を背負ってるの?

校庭に戻ると、金木犀の香りが強くなっていた。

木の下に立つと、琥太朗の痣や傷跡が頭をよぎる。

小四の彼は、笑顔で私を助けてくれた。

でも、誰が彼を助けてあげられるの?

私は生徒会の書類に挟んだスケッチを取り出した。

金木犀の木の絵。

昔、琥太朗が「ずっと描けよ」と言ってくれたから、こっそり続けている。

君の言葉が、私の夢になったのに。