◆居酒屋の座敷室・夜
飲み物が入ったグラスが掛け声とともにカツンとぶつかる。
藤代「それではカメラ部」
恵舞「演劇研究部、合同の新歓はじめまーす」
藤代・恵舞「かんぱーい」
藤代:カメラ部の長。プロは目指していないがカメラをこよなく愛するメガネ男子。
乾杯の音頭で賑わうの中、半泣きの困り顔をしている里奈。
里奈の隣にはにっこりと微笑んでいる宏人。
里奈モノ『なんで…こんなことに!?!?』
◆里奈の回想・数日前に時を遡る
里奈モノ『言い逃げみたいなことをして、いつ呼び出されるのかとヒヤヒヤしていたけど、結局、なにもなく。私は無事にカメラ部に入部した』
◆里奈の回想・カメラ部の部室
藤代「ようこそ、カメラ部に。最近はいろんな技術が発展しているから人口が減りつつあるけど、こうして若い子が入ってくれるのは嬉しいよ」
金本「部長、そんなことを言っているとまたジジくさいって言われますよ」
金本:カメラ部2年。しっかり者女子。つり目がチャームポイント。
金本に指摘されて、苦虫をつぶしたような顔をする藤代。
藤代「でもさ。昔に比べたら人数すごく減っているから…つい…」
金本「はいはい。それって数年前の話ですよね。ここ1、2年の話じゃないんですから。そんなことより、新入部員に活動内容を説明して上げてください」
藤代「あ、そうだった。えっと、うちの部は結構歴史が長いんだ。だからこその強みがうちにはあってね」
里奈「強み、ですか? コンテストに出るとか、実績とかではなくて?」
藤代「うん。いい質問だね。もちろん、コンテストにも参加しているし、実績もあるんだけど。うちの強みは現場実践できること。さすがに企業とのコラボ…なんてこと難しいけど、我が部は演劇研究部と協力関係にあるんだ。だから舞台撮影や人物撮影の実践ができるし、ポートフォリオのモデルなども頼むことができるよ」
※ポートフォリオ…作品集。自分を売り込む時に使用するクリエイターの作品履歴書のようなもの。
里奈モノ『へぇ…すごい。私は風景写真がメインだけど、ポートレートもできたらやってみたいな』
藤代「これが去年の僕たちの作品集だよ」
藤代が黒いファイルを持ち、端に座っていた新入部員のひとりに渡す。
藤代「僕たちにとって経験が積めるし、演劇研究部の人たちもプロフィール写真だったり、グッズ発売などに使用できる写真を僕たちが撮ることで、WIN-WINな協力関係なんだ」
里奈モノ『なるほど。いろんな撮影に挑戦できるのはいいかも』
里奈の隣に座る女子が小さな声を上げる。
女子1「えっ、うそ。モデルのヒロト!?」
女子2「ほんとだ。うちの大学にいるってホントだったんだ」
里奈は隣の女子がテンションが上がっているの気づいたものの、なにに興奮しているのか、いまいちピンとこない。
誰のことを指しているのか、気になって見る。
里奈の視線に気づく女子があわてて黒いファイルを回す。
女子1「ごめん。お待たせ」
里奈「う、うん?」
急かしたつもりがなかった里奈は戸惑いながら、黒いファイルを開く。
舞台で演技している時に撮影したと思われる写真やチラシ用に撮影したと思われるプロフィール写真が閉じられている。
ぺらりと、ページをめくると、里奈の記憶に深く刻まれている、顔の整った男・宏人の写真があった。
驚きで手が止まる里奈。
里奈の様子に気づいた隣の女子がささやく。
女子1「ヒロトって、なに着ても似合うよね!」
里奈「あ、え、あ、うん。そうだね」
里奈はそっとファイルを閉じて、隣に座る男子に黒いファイルを回した。
里奈モノ『ウソでしょー!? ガチな有名人なの!? あんな・・・”勘違いするな”、”自意識過剰”なんて言っちゃったんですけど。でも、きっと私のことなんて覚えているはず、ないよね。うん。私みたいな地味女のことなんて』
藤代「それで来週、演劇研究部の合同の新歓があるんだ。会費は……」
ぐるぐると頭の中で考え事にしている里奈に、藤代の声は遠く届いていなかった。
◆現在・居酒屋の座敷室
宏人「やぁ、2週間ぶりかな?」
にっこりと微笑む宏人。
冷や汗だらだらの里奈。
里奈「あ、はは。そう、です、かね?」
里奈モノ『覚えてますよねー! 失礼な地味女のことー!!』
宏人「この前の勢いはどこに行っちゃったのかな?」
里奈「あーれはーですねー。はい。本当、失礼なことを言ってしまい申し訳ありませんでしたっ」
里奈は先手必勝とばかりに、謝罪を口にする。
宏人「ふーん。失礼なことね。じゃあ、俺のこと追いかけたくなった?」
里奈「いえ、それはまったくないです」
宏人の言葉に即答してしまった里奈は”しまった”という顔をする。
宏人「・・・表情に出過ぎじゃない?」
里奈「すみません」
呆れたように息をつく宏人。
宏人「ま、いいよ。オレも大人気なかったし。年下をいじめるのも趣味じゃないしね」
里奈「え、じゃ、じゃあ…!」
里奈はビシバシと刺さる女子たちからの視線”宏人の隣に座っていて羨ましい”、”なにを喋っているのか”を感じていた。
宏人の言葉にどこかに移動してくれるのだと、希望に満ちた目を向ける里奈。
宏人「・・・なに、その表情。オレがここにいると都合が悪いのかな?」
里奈ににっこりと輝く笑顔を向ける宏人。
遠くにいる女子たちが黄色い声を上げる。
里奈は心の中で黄色い声ではなく、悲鳴に近い声を上げる。
里奈「ひっ。い、いえ。そういうわけではなく。あ、私、後輩が移動すべきですよね…すみません…気が回らず…」
視線をそっとズラす里奈。
移動するために、荷物をまとめようとした里奈の手を、宏人が上から重ねるように止める。
宏人「なに。移動していいよなんて、オレ、言ってないよね?」
にっこりと笑う宏人。息を飲む里奈。
里奈モノ『だから、その綺麗な笑顔が逆に怖いんですって!』
里奈は心の中で泣きながら、なんとか宏人に返事をする。
里奈「そう、ですね…」
里奈モノ『もはや。私に残された道は出てくる料理を楽しむことに集中するしか…!!』
ぐっと箸を持った里奈はもぐもぐと一心不乱に食べはじめる。
そんな里奈を横目に、宏人はため息をつく。
翼「よいしょっと。お邪魔するよー」
翼が里奈の隣に座る。
里奈モノ『救世主!』
翼の登場に喜んだものの、周囲がより強い女子の視線になっていることにハッとする里奈。
里奈を挟むように翼、宏人が座り、里奈は”両手に花”状態になっている
里奈モノ『堕天使だったっ』
翼「いやー。こいつが女子、しかも年下の子とこんなに長く話しているなんて珍しくて」
お酒を飲んで頬を赤く染めた翼はクスクスと笑う。
宏人「おい、酔っ払い。変な風に言うな。こいつに話があっただけだ」
翼「でもさ、こんな風に表のクールな宏人様じゃなくて、裏の、口が悪い宏人様ってのも、珍しいよねぇ」
宏人「ふん。こいつにやる必要がないと判断しただけだ」
里奈を挟んで交わされる会話に里奈は戸惑いつつ、口を開く。
里奈「あのー。私は先輩になんの印象もないので、どうぞご自由になさってください」
里奈モノ『私のことはどうぞ空気だと思ってください』
無になろうとして出した里奈の言葉に、宏人と翼は動きを止める。
宏人「・・・変なやつ」
翼「きみ、面白い子だねぇ」
くくっと押し殺して笑う宏人と、あははと声を上げる翼に挟まれた里奈はますます困惑した。
◆居酒屋の前
恵舞「じゃ、宏人。その子のこと駅まで送ってあげてね」
恵舞が里奈と宏人の前に立っている。
里奈の顔色は悪い。たくさんの視線が集まる中、食事を食べることに集中した結果、食べ過ぎてしまい気持ち悪くなっていた。
宏人「なんで俺が…」
恵舞「人気者の宏人くんが一次会で抜けれるのは、誰のおかげかしらねー?」
宏人「ちっ」
里奈は恵舞と宏人の間で何度も視線をうろうろと動かす。
里奈「あ、あのー…。私、ひとりで帰れますよ?」
恵舞「いいのいいの。これぐらいは先輩としてやってくれなきゃ、ね?」
宏人はふんと顔を背ける。
里奈モノ『すごく、ご機嫌が悪そうなんですけどー』
里奈は助けを求めるように恵舞に視線を向ける。
しかし恵舞はキラキラと輝く笑顔でにっこりと笑う。
恵舞「じゃあ、またね」
さっぱりと別れの挨拶をした恵舞は手をひらりと振ると、店内へと戻っていく。
里奈モノ『えぇぇぇぇぇぇ!?』
呆然としている里奈の腕をぐっと掴み、引き寄せる宏人。
宏人の顔が近く、ドキリとする里奈。
宏人「ほら、帰るぞ」
里奈「へ、はい…」
歩き出す宏人と里奈。
里奈は気持ち悪さで途中、足が止まる。
里奈モノ『うぅ…気持ち悪いよ……』
何度か呼吸を繰り返す里奈。
視界の端に宏人の靴が見えることに気づく。
里奈モノ『あれ…先輩待ってくれてる?』
里奈が顔を上げる。
宏人はじっと里奈の様子を見ている。
宏人「…歩けるか」
里奈「は、はい。大丈夫です」
◆春の夜空下
再び歩き出す里奈と宏人。
宏人「……」
里奈「……」
里奈モノ『嫌がってたから置いていくと思ってた。先輩って、案外世話焼きタイプなのかな…』※里奈の思考はすこし(方向音痴)ズレている。
宏人、里奈の顔を静かに見ている。
自分のことでいっぱいの里奈は宏人の視線に気づかない。
飲み物が入ったグラスが掛け声とともにカツンとぶつかる。
藤代「それではカメラ部」
恵舞「演劇研究部、合同の新歓はじめまーす」
藤代・恵舞「かんぱーい」
藤代:カメラ部の長。プロは目指していないがカメラをこよなく愛するメガネ男子。
乾杯の音頭で賑わうの中、半泣きの困り顔をしている里奈。
里奈の隣にはにっこりと微笑んでいる宏人。
里奈モノ『なんで…こんなことに!?!?』
◆里奈の回想・数日前に時を遡る
里奈モノ『言い逃げみたいなことをして、いつ呼び出されるのかとヒヤヒヤしていたけど、結局、なにもなく。私は無事にカメラ部に入部した』
◆里奈の回想・カメラ部の部室
藤代「ようこそ、カメラ部に。最近はいろんな技術が発展しているから人口が減りつつあるけど、こうして若い子が入ってくれるのは嬉しいよ」
金本「部長、そんなことを言っているとまたジジくさいって言われますよ」
金本:カメラ部2年。しっかり者女子。つり目がチャームポイント。
金本に指摘されて、苦虫をつぶしたような顔をする藤代。
藤代「でもさ。昔に比べたら人数すごく減っているから…つい…」
金本「はいはい。それって数年前の話ですよね。ここ1、2年の話じゃないんですから。そんなことより、新入部員に活動内容を説明して上げてください」
藤代「あ、そうだった。えっと、うちの部は結構歴史が長いんだ。だからこその強みがうちにはあってね」
里奈「強み、ですか? コンテストに出るとか、実績とかではなくて?」
藤代「うん。いい質問だね。もちろん、コンテストにも参加しているし、実績もあるんだけど。うちの強みは現場実践できること。さすがに企業とのコラボ…なんてこと難しいけど、我が部は演劇研究部と協力関係にあるんだ。だから舞台撮影や人物撮影の実践ができるし、ポートフォリオのモデルなども頼むことができるよ」
※ポートフォリオ…作品集。自分を売り込む時に使用するクリエイターの作品履歴書のようなもの。
里奈モノ『へぇ…すごい。私は風景写真がメインだけど、ポートレートもできたらやってみたいな』
藤代「これが去年の僕たちの作品集だよ」
藤代が黒いファイルを持ち、端に座っていた新入部員のひとりに渡す。
藤代「僕たちにとって経験が積めるし、演劇研究部の人たちもプロフィール写真だったり、グッズ発売などに使用できる写真を僕たちが撮ることで、WIN-WINな協力関係なんだ」
里奈モノ『なるほど。いろんな撮影に挑戦できるのはいいかも』
里奈の隣に座る女子が小さな声を上げる。
女子1「えっ、うそ。モデルのヒロト!?」
女子2「ほんとだ。うちの大学にいるってホントだったんだ」
里奈は隣の女子がテンションが上がっているの気づいたものの、なにに興奮しているのか、いまいちピンとこない。
誰のことを指しているのか、気になって見る。
里奈の視線に気づく女子があわてて黒いファイルを回す。
女子1「ごめん。お待たせ」
里奈「う、うん?」
急かしたつもりがなかった里奈は戸惑いながら、黒いファイルを開く。
舞台で演技している時に撮影したと思われる写真やチラシ用に撮影したと思われるプロフィール写真が閉じられている。
ぺらりと、ページをめくると、里奈の記憶に深く刻まれている、顔の整った男・宏人の写真があった。
驚きで手が止まる里奈。
里奈の様子に気づいた隣の女子がささやく。
女子1「ヒロトって、なに着ても似合うよね!」
里奈「あ、え、あ、うん。そうだね」
里奈はそっとファイルを閉じて、隣に座る男子に黒いファイルを回した。
里奈モノ『ウソでしょー!? ガチな有名人なの!? あんな・・・”勘違いするな”、”自意識過剰”なんて言っちゃったんですけど。でも、きっと私のことなんて覚えているはず、ないよね。うん。私みたいな地味女のことなんて』
藤代「それで来週、演劇研究部の合同の新歓があるんだ。会費は……」
ぐるぐると頭の中で考え事にしている里奈に、藤代の声は遠く届いていなかった。
◆現在・居酒屋の座敷室
宏人「やぁ、2週間ぶりかな?」
にっこりと微笑む宏人。
冷や汗だらだらの里奈。
里奈「あ、はは。そう、です、かね?」
里奈モノ『覚えてますよねー! 失礼な地味女のことー!!』
宏人「この前の勢いはどこに行っちゃったのかな?」
里奈「あーれはーですねー。はい。本当、失礼なことを言ってしまい申し訳ありませんでしたっ」
里奈は先手必勝とばかりに、謝罪を口にする。
宏人「ふーん。失礼なことね。じゃあ、俺のこと追いかけたくなった?」
里奈「いえ、それはまったくないです」
宏人の言葉に即答してしまった里奈は”しまった”という顔をする。
宏人「・・・表情に出過ぎじゃない?」
里奈「すみません」
呆れたように息をつく宏人。
宏人「ま、いいよ。オレも大人気なかったし。年下をいじめるのも趣味じゃないしね」
里奈「え、じゃ、じゃあ…!」
里奈はビシバシと刺さる女子たちからの視線”宏人の隣に座っていて羨ましい”、”なにを喋っているのか”を感じていた。
宏人の言葉にどこかに移動してくれるのだと、希望に満ちた目を向ける里奈。
宏人「・・・なに、その表情。オレがここにいると都合が悪いのかな?」
里奈ににっこりと輝く笑顔を向ける宏人。
遠くにいる女子たちが黄色い声を上げる。
里奈は心の中で黄色い声ではなく、悲鳴に近い声を上げる。
里奈「ひっ。い、いえ。そういうわけではなく。あ、私、後輩が移動すべきですよね…すみません…気が回らず…」
視線をそっとズラす里奈。
移動するために、荷物をまとめようとした里奈の手を、宏人が上から重ねるように止める。
宏人「なに。移動していいよなんて、オレ、言ってないよね?」
にっこりと笑う宏人。息を飲む里奈。
里奈モノ『だから、その綺麗な笑顔が逆に怖いんですって!』
里奈は心の中で泣きながら、なんとか宏人に返事をする。
里奈「そう、ですね…」
里奈モノ『もはや。私に残された道は出てくる料理を楽しむことに集中するしか…!!』
ぐっと箸を持った里奈はもぐもぐと一心不乱に食べはじめる。
そんな里奈を横目に、宏人はため息をつく。
翼「よいしょっと。お邪魔するよー」
翼が里奈の隣に座る。
里奈モノ『救世主!』
翼の登場に喜んだものの、周囲がより強い女子の視線になっていることにハッとする里奈。
里奈を挟むように翼、宏人が座り、里奈は”両手に花”状態になっている
里奈モノ『堕天使だったっ』
翼「いやー。こいつが女子、しかも年下の子とこんなに長く話しているなんて珍しくて」
お酒を飲んで頬を赤く染めた翼はクスクスと笑う。
宏人「おい、酔っ払い。変な風に言うな。こいつに話があっただけだ」
翼「でもさ、こんな風に表のクールな宏人様じゃなくて、裏の、口が悪い宏人様ってのも、珍しいよねぇ」
宏人「ふん。こいつにやる必要がないと判断しただけだ」
里奈を挟んで交わされる会話に里奈は戸惑いつつ、口を開く。
里奈「あのー。私は先輩になんの印象もないので、どうぞご自由になさってください」
里奈モノ『私のことはどうぞ空気だと思ってください』
無になろうとして出した里奈の言葉に、宏人と翼は動きを止める。
宏人「・・・変なやつ」
翼「きみ、面白い子だねぇ」
くくっと押し殺して笑う宏人と、あははと声を上げる翼に挟まれた里奈はますます困惑した。
◆居酒屋の前
恵舞「じゃ、宏人。その子のこと駅まで送ってあげてね」
恵舞が里奈と宏人の前に立っている。
里奈の顔色は悪い。たくさんの視線が集まる中、食事を食べることに集中した結果、食べ過ぎてしまい気持ち悪くなっていた。
宏人「なんで俺が…」
恵舞「人気者の宏人くんが一次会で抜けれるのは、誰のおかげかしらねー?」
宏人「ちっ」
里奈は恵舞と宏人の間で何度も視線をうろうろと動かす。
里奈「あ、あのー…。私、ひとりで帰れますよ?」
恵舞「いいのいいの。これぐらいは先輩としてやってくれなきゃ、ね?」
宏人はふんと顔を背ける。
里奈モノ『すごく、ご機嫌が悪そうなんですけどー』
里奈は助けを求めるように恵舞に視線を向ける。
しかし恵舞はキラキラと輝く笑顔でにっこりと笑う。
恵舞「じゃあ、またね」
さっぱりと別れの挨拶をした恵舞は手をひらりと振ると、店内へと戻っていく。
里奈モノ『えぇぇぇぇぇぇ!?』
呆然としている里奈の腕をぐっと掴み、引き寄せる宏人。
宏人の顔が近く、ドキリとする里奈。
宏人「ほら、帰るぞ」
里奈「へ、はい…」
歩き出す宏人と里奈。
里奈は気持ち悪さで途中、足が止まる。
里奈モノ『うぅ…気持ち悪いよ……』
何度か呼吸を繰り返す里奈。
視界の端に宏人の靴が見えることに気づく。
里奈モノ『あれ…先輩待ってくれてる?』
里奈が顔を上げる。
宏人はじっと里奈の様子を見ている。
宏人「…歩けるか」
里奈「は、はい。大丈夫です」
◆春の夜空下
再び歩き出す里奈と宏人。
宏人「……」
里奈「……」
里奈モノ『嫌がってたから置いていくと思ってた。先輩って、案外世話焼きタイプなのかな…』※里奈の思考はすこし(方向音痴)ズレている。
宏人、里奈の顔を静かに見ている。
自分のことでいっぱいの里奈は宏人の視線に気づかない。


