◆里奈の過去回想・朝・ネモフィラ草原
眉をひそめている宏人
一眼カメラを持って座っていた里奈は驚きで瞳を大きくしている。
里奈モノ『最悪な出会いだったのに』
◆里奈の現在よりすこし先の未来・スタジオ
里奈の目の前に立つ宏人。
里奈モノ『いま、私は 先輩とどれくらいの距離でいればいいのか わからない』
宏人「オレを撮影するのは、お前だ」
宏人の姿が光でぼやけていく。
里奈モノ『ファインダー越しの F値がゆらいでいる』
※F値とは…カメラに取り込む光の量を調整する名称。ピント《ボケ具合》が変わる。
◆現在・里奈の一人暮らしの部屋・朝
バタバタと慌ただしく、肩で跳ねる黒髪をまとめ、バックに筆記用具を入れている里奈。
テーブルの上にスマホ。
スマホの画面には《母》と表示され、通話状態になっている。
里奈母『里奈、聞いている? 大学に迷わないでいける?』
里奈「大丈夫だって、入学式でちゃんといけてたからバッチリ」
バックのチャックを閉じる。
コンビニで買ったクリームパンを口の中へ押し込む里奈。
里奈母『そうだけど。ご近所の商店にも迷ってたじゃない』
里奈「それは小学生の話。私、もう大学生だよ。迷わないって」
コップに入った牛乳をごくりと飲み干して、テーブルの上におく。
里奈母『そうよね…気をつけていってらっしゃい』
里奈「うん。いってきます!」
画面の通話を切り、カバンを持って玄関を出る里奈。
◆町の風景
ビルの間で電車が走っている。
◆大学の最寄り駅
駅に降り立つ里奈。桜が舞っている。
里奈モノ『やっぱり都会は人がすごい。遅延とかしてたけど、早めに出たから余裕余裕って…』
小学生ぐらいの制服を着た小さな女の子が地図看板の前に立っている。
女の子の眉を下げて、困った表情を浮かべている。
里奈「あれ?」
◆大学の講堂
ひとり荒い呼吸を繰り返す里奈。
里奈「はぁ、はぁ…」
里奈モノ『道に迷ってる女の子を…助けようと思ったのに…全然、道わからなくて、結局、交番で道を聞くことになってしまった。しかも交番探している間に、自分も道がわからなくなって…警察のおじさん、笑ってたな…』
ずぅーんと青い顔で反省する里奈。
◆里奈の回想
キラキラと輝く笑顔の女の子。
女の子「お姉ちゃん、ありがとう」
◆里奈の現在・大学の講堂
ふぅと小さく息をつく里奈。
里奈モノ『でも、あの子が間に合ってよかった』
周囲を軽く見渡す里奈。
所々でグループが出来上がっている。
里奈モノ『最初のグループ作りには乗り遅れちゃったけど、これからまだつくるチャンスはあるし、それに私の最大の目的はーー』
◆大学の構内
サークルの勧誘で人があふれている。
里奈モノ『サークル!!』
人ごみをかき分けながら、道を進む里奈。
サークルの部員募集が貼り付けられた掲示板を見つけ、足を止める。
里奈モノ『えーっと、カメラ、カメラ・・・カメラ部、あった”写真やカメラが好きな人が集うサークルです”。活動場所はクラブハウス部室、4階一番奥、ね』
里奈が移動しようと振り返ろうとした瞬間、女子たちの黄色い歓声が聞こえてくる。
女子の歓声「きゃー!!」
里奈が声がした方へ向けると、人だかり(宏人の周りに人が集まっている)ができていた。
里奈モノ『? なにかパフォーマンスでもやっているのかな? ま、いまはカメラ部に行かなきゃ』
◆大学の廊下
廊下を歩く里奈。
里奈モノ『私はカメラ好きの父の影響で、小さい頃からカメラに触れていた。気づいた時にはカメラで仕事ができたらと思うようになるぐらいに好きになっていた。でも調べてみればフォトグラファーの道は狭く険しかった』
クラブハウスの案内を確認する里奈。
里奈モノ『進路の話をした時、両親は渋い顔をした。でも、期間を決めることと、可能性が増える都会の大学へ進学して、その間に結果を残すことが条件になった』
廊下で立ち止まり、ぐっと握り拳を作る里奈。
里奈モノ『だから私は都会で一人前になれる証明をしなくちゃいけない!! 私はできる子! やるぞやるぞやるぞー!』
◆数十分後・大学の廊下
クラブハウスの案内の前に立ち尽くす里奈。
里奈「な、なに。私は迷路にでも迷い込んでいるの…? この案内、さっきも見た気がする……」
里奈の頭の上にはぐるぐると黒いモヤが渦巻いている。
里奈モノ『部員勧誘でほとんど外に出てるのか、クラブハウスに人気がないし。ダメもとで人がいそうな部に声かけてみようかな…』
里奈が悩んでいると、人の声が聞こえてくる。
里奈モノ『人か来た!?』
里奈が勢いをつけて振り返った瞬間、出会い頭にぶつかる。
ガツっと硬い音が聞こえる。
宏人は口元を押さえ、里奈は尻餅を着く。
宏人「いっつぅー…」
里奈「う゛ー…」
里奈は頭とお尻が痛くて、うめく。
宏人と一緒に移動していた恵舞と翼が慌てた様子で声をかける。
恵舞「宏人、大丈夫!?」
翼「きみも、ケガとかしてない?」
恵舞:演劇研究部の看板女優。明快な女子。
翼:演劇研究部所属。演技力が高く、ほとんどの主役を演じる好青年。
里奈「あ、すみません。ちょっと慌てて…」
恵舞「きゃ! 宏人っ…唇切れているわよ」
宏人が押さえていた手を外すと、唇に血がじんわりとにじんでいる。
里奈「っ!? す、すすみません」
青ざめる里奈をすぅと冷めた目でみる宏人。
怖くなった里奈は目線をそらす。
宏人「・・・なに。待ち伏せ? こんなところまで来るとかアリエナイんですけど。常識とかないの?」
翼「宏人、落ち着けって。さっきまで外に出てたお前を待ち伏せとかないって」
宏人「どうだか。さっきから目を合わせようともしてないし。なにかやましいことがあるからそうしてるんじゃないか」
いまいましく血を拭う宏人。
苛立つ宏人を宥めようとする翼。
翼「そんなわけあるわけないだろ」
里奈も急いで、誤解を解こうとする。
里奈「そ、そうです! ぶつかってしまったことは謝ります。でも、私はあなたのことは知りません!」
パッと顔を上げて、そこで里奈は宏人の顔をしっかり見る。
さらりと流れる明るい髪。怒りで歪んでいてもわかる整った宏人の美貌に、息をのむ里奈。
宏人「なに、オレの顔に見惚れてんの?」
里奈を馬鹿にするような笑みを浮かべる宏人。
ハッとする里奈。
里奈モノ『ていうか、ぶつかったのは私が悪いけど、なんでここまで言われなきゃいけないわけ?』
じわじわと宏人の言葉に怒りを湧き上がってくる里奈。
里奈の理性がプチンときれる。
里奈「か顔がいいからって勘違いしないでください! 誰もがあなたを好きになって追いかけているとかって自意識過剰じゃないですか!?」
宏人「じ、自意識過剰・・・?」
翼「ぷっ」
恵舞「くふ」
唖然とする宏人。吹き出す翼と恵舞。
里奈「私はあなたのことを撮りたいとは思いませんから!」
里奈は廊下に落としたバックを掴むと、廊下を走り、クラブハウスの外へと向かう。
茫然と里奈の後ろ姿を見ている宏人に声をかける翼と恵舞。
翼「くくっ。あの子イケメンって褒めてるけど、勘違いしないでくださいって…くっ」
恵舞「怒る気持ちはわかるけど、宏人の負けね。ふふっ」
宏人「……うるさい」
里奈の姿を見えなくなった廊下を見ながら宏人がつぶやく。
宏人「あいつ、どこかで見たことがあるような…」※誰にも聞こえていない。ひとりごと
◆大学構内・外
半泣きになりながら走る里奈。
里奈モノ『入学早々、やらかしちゃったよー! どうしよう〜!!!』
眉をひそめている宏人
一眼カメラを持って座っていた里奈は驚きで瞳を大きくしている。
里奈モノ『最悪な出会いだったのに』
◆里奈の現在よりすこし先の未来・スタジオ
里奈の目の前に立つ宏人。
里奈モノ『いま、私は 先輩とどれくらいの距離でいればいいのか わからない』
宏人「オレを撮影するのは、お前だ」
宏人の姿が光でぼやけていく。
里奈モノ『ファインダー越しの F値がゆらいでいる』
※F値とは…カメラに取り込む光の量を調整する名称。ピント《ボケ具合》が変わる。
◆現在・里奈の一人暮らしの部屋・朝
バタバタと慌ただしく、肩で跳ねる黒髪をまとめ、バックに筆記用具を入れている里奈。
テーブルの上にスマホ。
スマホの画面には《母》と表示され、通話状態になっている。
里奈母『里奈、聞いている? 大学に迷わないでいける?』
里奈「大丈夫だって、入学式でちゃんといけてたからバッチリ」
バックのチャックを閉じる。
コンビニで買ったクリームパンを口の中へ押し込む里奈。
里奈母『そうだけど。ご近所の商店にも迷ってたじゃない』
里奈「それは小学生の話。私、もう大学生だよ。迷わないって」
コップに入った牛乳をごくりと飲み干して、テーブルの上におく。
里奈母『そうよね…気をつけていってらっしゃい』
里奈「うん。いってきます!」
画面の通話を切り、カバンを持って玄関を出る里奈。
◆町の風景
ビルの間で電車が走っている。
◆大学の最寄り駅
駅に降り立つ里奈。桜が舞っている。
里奈モノ『やっぱり都会は人がすごい。遅延とかしてたけど、早めに出たから余裕余裕って…』
小学生ぐらいの制服を着た小さな女の子が地図看板の前に立っている。
女の子の眉を下げて、困った表情を浮かべている。
里奈「あれ?」
◆大学の講堂
ひとり荒い呼吸を繰り返す里奈。
里奈「はぁ、はぁ…」
里奈モノ『道に迷ってる女の子を…助けようと思ったのに…全然、道わからなくて、結局、交番で道を聞くことになってしまった。しかも交番探している間に、自分も道がわからなくなって…警察のおじさん、笑ってたな…』
ずぅーんと青い顔で反省する里奈。
◆里奈の回想
キラキラと輝く笑顔の女の子。
女の子「お姉ちゃん、ありがとう」
◆里奈の現在・大学の講堂
ふぅと小さく息をつく里奈。
里奈モノ『でも、あの子が間に合ってよかった』
周囲を軽く見渡す里奈。
所々でグループが出来上がっている。
里奈モノ『最初のグループ作りには乗り遅れちゃったけど、これからまだつくるチャンスはあるし、それに私の最大の目的はーー』
◆大学の構内
サークルの勧誘で人があふれている。
里奈モノ『サークル!!』
人ごみをかき分けながら、道を進む里奈。
サークルの部員募集が貼り付けられた掲示板を見つけ、足を止める。
里奈モノ『えーっと、カメラ、カメラ・・・カメラ部、あった”写真やカメラが好きな人が集うサークルです”。活動場所はクラブハウス部室、4階一番奥、ね』
里奈が移動しようと振り返ろうとした瞬間、女子たちの黄色い歓声が聞こえてくる。
女子の歓声「きゃー!!」
里奈が声がした方へ向けると、人だかり(宏人の周りに人が集まっている)ができていた。
里奈モノ『? なにかパフォーマンスでもやっているのかな? ま、いまはカメラ部に行かなきゃ』
◆大学の廊下
廊下を歩く里奈。
里奈モノ『私はカメラ好きの父の影響で、小さい頃からカメラに触れていた。気づいた時にはカメラで仕事ができたらと思うようになるぐらいに好きになっていた。でも調べてみればフォトグラファーの道は狭く険しかった』
クラブハウスの案内を確認する里奈。
里奈モノ『進路の話をした時、両親は渋い顔をした。でも、期間を決めることと、可能性が増える都会の大学へ進学して、その間に結果を残すことが条件になった』
廊下で立ち止まり、ぐっと握り拳を作る里奈。
里奈モノ『だから私は都会で一人前になれる証明をしなくちゃいけない!! 私はできる子! やるぞやるぞやるぞー!』
◆数十分後・大学の廊下
クラブハウスの案内の前に立ち尽くす里奈。
里奈「な、なに。私は迷路にでも迷い込んでいるの…? この案内、さっきも見た気がする……」
里奈の頭の上にはぐるぐると黒いモヤが渦巻いている。
里奈モノ『部員勧誘でほとんど外に出てるのか、クラブハウスに人気がないし。ダメもとで人がいそうな部に声かけてみようかな…』
里奈が悩んでいると、人の声が聞こえてくる。
里奈モノ『人か来た!?』
里奈が勢いをつけて振り返った瞬間、出会い頭にぶつかる。
ガツっと硬い音が聞こえる。
宏人は口元を押さえ、里奈は尻餅を着く。
宏人「いっつぅー…」
里奈「う゛ー…」
里奈は頭とお尻が痛くて、うめく。
宏人と一緒に移動していた恵舞と翼が慌てた様子で声をかける。
恵舞「宏人、大丈夫!?」
翼「きみも、ケガとかしてない?」
恵舞:演劇研究部の看板女優。明快な女子。
翼:演劇研究部所属。演技力が高く、ほとんどの主役を演じる好青年。
里奈「あ、すみません。ちょっと慌てて…」
恵舞「きゃ! 宏人っ…唇切れているわよ」
宏人が押さえていた手を外すと、唇に血がじんわりとにじんでいる。
里奈「っ!? す、すすみません」
青ざめる里奈をすぅと冷めた目でみる宏人。
怖くなった里奈は目線をそらす。
宏人「・・・なに。待ち伏せ? こんなところまで来るとかアリエナイんですけど。常識とかないの?」
翼「宏人、落ち着けって。さっきまで外に出てたお前を待ち伏せとかないって」
宏人「どうだか。さっきから目を合わせようともしてないし。なにかやましいことがあるからそうしてるんじゃないか」
いまいましく血を拭う宏人。
苛立つ宏人を宥めようとする翼。
翼「そんなわけあるわけないだろ」
里奈も急いで、誤解を解こうとする。
里奈「そ、そうです! ぶつかってしまったことは謝ります。でも、私はあなたのことは知りません!」
パッと顔を上げて、そこで里奈は宏人の顔をしっかり見る。
さらりと流れる明るい髪。怒りで歪んでいてもわかる整った宏人の美貌に、息をのむ里奈。
宏人「なに、オレの顔に見惚れてんの?」
里奈を馬鹿にするような笑みを浮かべる宏人。
ハッとする里奈。
里奈モノ『ていうか、ぶつかったのは私が悪いけど、なんでここまで言われなきゃいけないわけ?』
じわじわと宏人の言葉に怒りを湧き上がってくる里奈。
里奈の理性がプチンときれる。
里奈「か顔がいいからって勘違いしないでください! 誰もがあなたを好きになって追いかけているとかって自意識過剰じゃないですか!?」
宏人「じ、自意識過剰・・・?」
翼「ぷっ」
恵舞「くふ」
唖然とする宏人。吹き出す翼と恵舞。
里奈「私はあなたのことを撮りたいとは思いませんから!」
里奈は廊下に落としたバックを掴むと、廊下を走り、クラブハウスの外へと向かう。
茫然と里奈の後ろ姿を見ている宏人に声をかける翼と恵舞。
翼「くくっ。あの子イケメンって褒めてるけど、勘違いしないでくださいって…くっ」
恵舞「怒る気持ちはわかるけど、宏人の負けね。ふふっ」
宏人「……うるさい」
里奈の姿を見えなくなった廊下を見ながら宏人がつぶやく。
宏人「あいつ、どこかで見たことがあるような…」※誰にも聞こえていない。ひとりごと
◆大学構内・外
半泣きになりながら走る里奈。
里奈モノ『入学早々、やらかしちゃったよー! どうしよう〜!!!』


