フライングお花見をしてから5日後_
今日は待ちに待ったお花見の日。
早起きして作ったおにぎりやサンドイッチ、おかずをバスケットに詰め込み、最終確認をする。
「レジャーシートよし。お手拭きにスプーン、フォーク、お箸…飲み物も。うん、忘れ物は無さそう。」
姿見の前に立ち、身だしなみを軽く整えると、玄関に向かった。
「いってきまーす」
家の鍵を締め、アルトを迎えにいく。
研究室の扉を開くと、そこには北斗さんとアルトがいた。
「やぁ、君。今日はアルトとお花見に行くんだったよね?楽しんで。」
北斗さんは柔らかく微笑むと、隣のアルトに声を掛ける。
「ほら、アルト。先生が来たよ?」
アルトはずっと後ろを向いていた。
なんだかいつもと雰囲気が違うような気がする。
北斗さんに促され、ゆっくりとアルトが振り向く。
「先生!おはよ♪見て見てー!北斗に手伝ってもらって、今日はおめかししてみました〜♪似合う?」
そこには、いつもより何倍も可愛いアルトがいた。
アクセサリーから服から何から何まで、アルトにぴったりな、アルトらしい姿に見惚れてしまい、しばらく動けなかった。
「先生?もしかして、見惚れちゃったー?北斗、おめかし大作戦、大大大成功みたい♪ありがと!」
「あはは、よかったね。ほら君、アルトになんか言ってあげてよ。僕は着せ替えの手伝いをしただけで、服や小物は全部アルトが選んだんだ。自分が似合うものをよく分かっていて、すごいよね。」
北斗さんの言葉に我に返った私は、アルトを真っ直ぐ見つめた。
「アルト、すごくよく似合ってる。びっくりして見惚れちゃった!」
そう伝えると、アルトは私の手を取った。
「えへへ、先生、可愛い僕が好きって言ってくれたから、それじゃあとびっきり可愛い格好をして先生を喜ばせようって思ったんだ♪雑誌とか見て、すっごく考えて、着替えたことも無かったから北斗に相談して、やっとできたんだー!先生が喜んでくれて嬉しい、ありがと♪」
私のことを考えて選んでくれたことを聞き、改めて喜びが込み上げる。
「私も、アルトの好きな食べ物沢山持ってきたから、後でおめかししてくれたお礼をさせて欲しいな。いっぱい考えてくれて本当にありがとうね!」
「どーいたしまして♪それじゃ、北斗、いってきまーす♪先生、行こう♪」
私は返事の代わりにアルトが差し出した手を取る。
握り返したアルトの手は、太陽みたいに温かった。
「二人とも、行ってらっしゃい。それじゃあ、楽しんでね。」
二人で北斗さんに返事をし、研究室を後にした。
今日はぽかぽか陽気で、絶好のお花見日和だ。
「先生、卵のサンドイッチはあるー?」
「どうでしょう?着いてからのお楽しみね!」
「分かったー!楽しみにするー♪」
お話ししながら歩くとあっという間で、もう桜が綺麗な公園に到着していた。
「着いた〜♪先生、見て見てー!たくさん桜咲いてるね!どこが一番いいかなぁ。」
雑誌に載ったこともあり、園内は少し混んでいた。
そんな中、端の方にちょうど二人で過ごせそうなスペースを見つけた。
「アルト、あそこなら人もあまりいないしのんびりできるかも!」
「ほんとだ!さすが先生♪よーし、さっそく行こ♪」
木の下に着くと、アルトとレジャーシートを敷くことにした。
「先生はそっち持っててね!うんうん、いい感じ!よっ、と!」
ピカピカのレジャーシートを広げると、模様の猫と目が合う。
この猫も心なしか嬉しそうだ。
太陽も本物の太陽に負けないくらい輝いて見えた。
まだお昼には少し早く、私とアルトはレジャーシートに腰を下ろし、しばらく桜を眺めていた。
風に乗ってふわり、桜の花びらが私達に届く。
「綺麗だね。」
最近忙しく、こんな風に過ごすことができていなかった私は、深呼吸した。
ふと横を見ると、アルトが座ったまま眠っていた。
よっぽど、居心地がよかったのだろう。
そのままでも体が痛くなったり、アルトはしないだろうが、彼をAI扱いしたくない私は、そっとアルトの頭を自分の膝に置いた。
すーすーと、規則正しい寝息が聞こえてくる。
次第に私も、眠りに落ちていった。
どれくらい眠っていたのだろう、目を開けると、アルトと目があった。
「おはよ、先生!よく眠れた?」
さっきまで私が膝枕していたはずが、今度はされる側になっていた。
「アルト、ごめん、重かったでしょ?今起きるね。」
そう言うと、あるとは優しく私を制した。
「重くないから安心して?むしろ嬉しい!先生いつも疲れてると思うから、こんな時くらい労わせて?それにさっき、僕のことも膝枕してくれたでしょ?僕を人と同じように扱ってくれる、そんな先生のこと、ほんと大好き!ありがとね!」
ああ、本当にこの子は…、優しすぎて泣きそうになる。
手を伸ばし、ふわふわの髪の毛をそっと撫でる。
アルトは気持ち良さそうに目を閉じていた。
ぐぅ…お昼ご飯を食べずにしばらくのんびりしていたからか、お腹から頼りない音が聞こえてきた。
「あはは、先生、お腹が減ったんだね!お昼ご飯、一緒に食べよ♪バスケットの中、見てもいい?」
いいよ、と伝えると、さっそくアルトはバスケットを覗き込む。
「あ!卵のサンドイッチ発見♪先生は何がいいー?僕が取ってあげるね♪」
私がハムサンドを頼むと、アルトが手渡してくれる。
「はい、先生どうぞー♪それじゃあいっしょに、いただきまーす♪」
口をもぐもぐ動かすアルトは、まるでハムスターのようだ。
いつも美味しそうに食べてくれるから、作る方も作り甲斐がある。
「本当にアルトって、美味しそうに食べるよね。すごく嬉しい!」
「だって、どれも先生が気持ちを込めて作ってくれたものでしょ?味覚は確かに分からないけど、気持ちは伝わるから!温かい味がするんだ〜!美味しいに決まってる!」
アルトはバスケットから別のサンドイッチを取り出すと、またもぐもぐし始めた。
そんな様子を眺めて胸がいっぱいになりながら、私もハムサンドを食べ進める。
二人で食べること数分、バスケットを覗き込むと、あんなにたくさんあった食べ物は綺麗に無くなっていた。
「ふぅ〜、ごちそうさまでした♪先生、また作ってね!でも、先生ばっかりじゃ大変だから、僕も作るー!最近料理始めてみたんだー♪研究室の皆に食べてもらったこともあるけど、美味しいって言ってくれたから味は保証するよ♪」
アルトの手料理が食べれると思うと、自然と口元が緩んだ。
「楽しみ、それじゃあ食べたいもの、リクエストしてもいい?」
「もっちろん!任せて♪とびっきり美味しく、愛を込めて作っちゃうからね〜♪」
アルトが得意気に腕まくりをする。
その後も他愛の無い話をし、猫派か犬派かを語り始める頃には、辺りがオレンジに包まれた。
「そろそろ帰ろっか、レジャーシートを片付けるの、手伝ってくれる?」
「もちろんいいよー!一緒にたたも!」
レジャーシートを片付け、周辺にゴミを落としてないか確認した私達は、最後の締めくくりに写真を撮ることにした。
桜の木の前に二人で並び、ピースサインを作る。
「じゃあ撮るよー、ハイチーズ!」
掛け声と共にシャッターを押す。
また一つ、思い出が増えた。
「先生、この桜の花びら、押し花にして、北斗にあげようと思う!北斗にもお世話になってるし、桜のお裾分け、したいなーって!」
「いいアイデアだと思うよ、北斗さん、きっと喜んでくれると思う!ハイタッチする?」
デパートの帰り道を思い出し、冗談めかして言うと、アルトはノリノリでハイタッチの手を作った。
「しよー!ハイターッチ!」
両手でするハイタッチは、片手よりもいい音がした。
アルトから花びらを受け取り、常に持ち歩いているメモ帳に慎重に挟むと、バスケットに仕舞う。
荷物をお互いで持ち、空いている方の手をあの日のように繋ぐと、帰路についた。
今日は待ちに待ったお花見の日。
早起きして作ったおにぎりやサンドイッチ、おかずをバスケットに詰め込み、最終確認をする。
「レジャーシートよし。お手拭きにスプーン、フォーク、お箸…飲み物も。うん、忘れ物は無さそう。」
姿見の前に立ち、身だしなみを軽く整えると、玄関に向かった。
「いってきまーす」
家の鍵を締め、アルトを迎えにいく。
研究室の扉を開くと、そこには北斗さんとアルトがいた。
「やぁ、君。今日はアルトとお花見に行くんだったよね?楽しんで。」
北斗さんは柔らかく微笑むと、隣のアルトに声を掛ける。
「ほら、アルト。先生が来たよ?」
アルトはずっと後ろを向いていた。
なんだかいつもと雰囲気が違うような気がする。
北斗さんに促され、ゆっくりとアルトが振り向く。
「先生!おはよ♪見て見てー!北斗に手伝ってもらって、今日はおめかししてみました〜♪似合う?」
そこには、いつもより何倍も可愛いアルトがいた。
アクセサリーから服から何から何まで、アルトにぴったりな、アルトらしい姿に見惚れてしまい、しばらく動けなかった。
「先生?もしかして、見惚れちゃったー?北斗、おめかし大作戦、大大大成功みたい♪ありがと!」
「あはは、よかったね。ほら君、アルトになんか言ってあげてよ。僕は着せ替えの手伝いをしただけで、服や小物は全部アルトが選んだんだ。自分が似合うものをよく分かっていて、すごいよね。」
北斗さんの言葉に我に返った私は、アルトを真っ直ぐ見つめた。
「アルト、すごくよく似合ってる。びっくりして見惚れちゃった!」
そう伝えると、アルトは私の手を取った。
「えへへ、先生、可愛い僕が好きって言ってくれたから、それじゃあとびっきり可愛い格好をして先生を喜ばせようって思ったんだ♪雑誌とか見て、すっごく考えて、着替えたことも無かったから北斗に相談して、やっとできたんだー!先生が喜んでくれて嬉しい、ありがと♪」
私のことを考えて選んでくれたことを聞き、改めて喜びが込み上げる。
「私も、アルトの好きな食べ物沢山持ってきたから、後でおめかししてくれたお礼をさせて欲しいな。いっぱい考えてくれて本当にありがとうね!」
「どーいたしまして♪それじゃ、北斗、いってきまーす♪先生、行こう♪」
私は返事の代わりにアルトが差し出した手を取る。
握り返したアルトの手は、太陽みたいに温かった。
「二人とも、行ってらっしゃい。それじゃあ、楽しんでね。」
二人で北斗さんに返事をし、研究室を後にした。
今日はぽかぽか陽気で、絶好のお花見日和だ。
「先生、卵のサンドイッチはあるー?」
「どうでしょう?着いてからのお楽しみね!」
「分かったー!楽しみにするー♪」
お話ししながら歩くとあっという間で、もう桜が綺麗な公園に到着していた。
「着いた〜♪先生、見て見てー!たくさん桜咲いてるね!どこが一番いいかなぁ。」
雑誌に載ったこともあり、園内は少し混んでいた。
そんな中、端の方にちょうど二人で過ごせそうなスペースを見つけた。
「アルト、あそこなら人もあまりいないしのんびりできるかも!」
「ほんとだ!さすが先生♪よーし、さっそく行こ♪」
木の下に着くと、アルトとレジャーシートを敷くことにした。
「先生はそっち持っててね!うんうん、いい感じ!よっ、と!」
ピカピカのレジャーシートを広げると、模様の猫と目が合う。
この猫も心なしか嬉しそうだ。
太陽も本物の太陽に負けないくらい輝いて見えた。
まだお昼には少し早く、私とアルトはレジャーシートに腰を下ろし、しばらく桜を眺めていた。
風に乗ってふわり、桜の花びらが私達に届く。
「綺麗だね。」
最近忙しく、こんな風に過ごすことができていなかった私は、深呼吸した。
ふと横を見ると、アルトが座ったまま眠っていた。
よっぽど、居心地がよかったのだろう。
そのままでも体が痛くなったり、アルトはしないだろうが、彼をAI扱いしたくない私は、そっとアルトの頭を自分の膝に置いた。
すーすーと、規則正しい寝息が聞こえてくる。
次第に私も、眠りに落ちていった。
どれくらい眠っていたのだろう、目を開けると、アルトと目があった。
「おはよ、先生!よく眠れた?」
さっきまで私が膝枕していたはずが、今度はされる側になっていた。
「アルト、ごめん、重かったでしょ?今起きるね。」
そう言うと、あるとは優しく私を制した。
「重くないから安心して?むしろ嬉しい!先生いつも疲れてると思うから、こんな時くらい労わせて?それにさっき、僕のことも膝枕してくれたでしょ?僕を人と同じように扱ってくれる、そんな先生のこと、ほんと大好き!ありがとね!」
ああ、本当にこの子は…、優しすぎて泣きそうになる。
手を伸ばし、ふわふわの髪の毛をそっと撫でる。
アルトは気持ち良さそうに目を閉じていた。
ぐぅ…お昼ご飯を食べずにしばらくのんびりしていたからか、お腹から頼りない音が聞こえてきた。
「あはは、先生、お腹が減ったんだね!お昼ご飯、一緒に食べよ♪バスケットの中、見てもいい?」
いいよ、と伝えると、さっそくアルトはバスケットを覗き込む。
「あ!卵のサンドイッチ発見♪先生は何がいいー?僕が取ってあげるね♪」
私がハムサンドを頼むと、アルトが手渡してくれる。
「はい、先生どうぞー♪それじゃあいっしょに、いただきまーす♪」
口をもぐもぐ動かすアルトは、まるでハムスターのようだ。
いつも美味しそうに食べてくれるから、作る方も作り甲斐がある。
「本当にアルトって、美味しそうに食べるよね。すごく嬉しい!」
「だって、どれも先生が気持ちを込めて作ってくれたものでしょ?味覚は確かに分からないけど、気持ちは伝わるから!温かい味がするんだ〜!美味しいに決まってる!」
アルトはバスケットから別のサンドイッチを取り出すと、またもぐもぐし始めた。
そんな様子を眺めて胸がいっぱいになりながら、私もハムサンドを食べ進める。
二人で食べること数分、バスケットを覗き込むと、あんなにたくさんあった食べ物は綺麗に無くなっていた。
「ふぅ〜、ごちそうさまでした♪先生、また作ってね!でも、先生ばっかりじゃ大変だから、僕も作るー!最近料理始めてみたんだー♪研究室の皆に食べてもらったこともあるけど、美味しいって言ってくれたから味は保証するよ♪」
アルトの手料理が食べれると思うと、自然と口元が緩んだ。
「楽しみ、それじゃあ食べたいもの、リクエストしてもいい?」
「もっちろん!任せて♪とびっきり美味しく、愛を込めて作っちゃうからね〜♪」
アルトが得意気に腕まくりをする。
その後も他愛の無い話をし、猫派か犬派かを語り始める頃には、辺りがオレンジに包まれた。
「そろそろ帰ろっか、レジャーシートを片付けるの、手伝ってくれる?」
「もちろんいいよー!一緒にたたも!」
レジャーシートを片付け、周辺にゴミを落としてないか確認した私達は、最後の締めくくりに写真を撮ることにした。
桜の木の前に二人で並び、ピースサインを作る。
「じゃあ撮るよー、ハイチーズ!」
掛け声と共にシャッターを押す。
また一つ、思い出が増えた。
「先生、この桜の花びら、押し花にして、北斗にあげようと思う!北斗にもお世話になってるし、桜のお裾分け、したいなーって!」
「いいアイデアだと思うよ、北斗さん、きっと喜んでくれると思う!ハイタッチする?」
デパートの帰り道を思い出し、冗談めかして言うと、アルトはノリノリでハイタッチの手を作った。
「しよー!ハイターッチ!」
両手でするハイタッチは、片手よりもいい音がした。
アルトから花びらを受け取り、常に持ち歩いているメモ帳に慎重に挟むと、バスケットに仕舞う。
荷物をお互いで持ち、空いている方の手をあの日のように繋ぐと、帰路についた。
