Someday 〜未来で逢いましょう〜

時間旅行のハワイ最後の日。
翔太に出逢えたおかげで、不安だらけの時間旅行はまだ1日を残して、素晴らしい旅に確定していた。
午前は最後のやりたいこと、シュノーケリングをするためにカラカウア通りをもっとダイアモンドヘッド方面へ進んだところにある、広大な施設内でシュノーケリングができるという場所に来た。
20年前カイルアビーチでシュノーケリングセットを持参して行ったが、莉子の相手とシュノーケリングを和也と交代でしているうちに莉子がお腹が空いたとグズりだし、大してシュノーケリングをしないうちになんとなく終わったのが心残りになったのかもしれない。
海で自由に泳ぎながら好きな場所へ移動するのもいいが、海水浴客がいないのでぶつかる心配も、ストレスを感じることもなく、海に直結したシュノーケリング専用の施設で種類豊富な熱帯魚を存分に見られる。
色とりどりの熱帯魚達がその愛くるしい姿形で楽しませてくれるのだ。
あっという間に過ぎてしまう楽しい時間。
20年前だということを忘れるくらい、何も不自由はなく過ごせた数日だった。
現世なら、もっと最新の施設やアクティビティの他にもリニューアルされた店も沢山あって、もっとアップデートされた楽しいことに触れられたのかもしれない。
しかし、経済的には円安続きで何もかもが高いと感じる
現世を考えると、この20年前という時代はありがたい。
やりたかったことも自分の中で「済」マークを付けることができ、あとは翔太に対する気持ちをきちんと整理して終わらせるだけだ。
熱帯魚達の小さなダンスに癒されたのも束の間、今日は昨日のように午前中から太陽にエネルギーを吸い取られて、夕方までお昼寝をするわけにはいかない。
有終の美を飾るがごとく、翔太と最後の時間をきちんと整えて行きたい。
シュノーケリングを終えてホテルへ戻る途中、その足はドレスワンピの店で止まった。
ここは、20年前訪れた時に見つけ、気に入ったワンピースを1枚買って帰ったことのあるローカルブランドのドレスワンピース専門の店だ。
ここで買ったワンピースがまだクローゼットの中にある。
体型も少しずつ変わってもう着れないだろうと、再度着てみるということをすることもなく、タンスの肥やしというものになっている。
翔太との最後の晩餐のため、何か気に入ったのがあれば…ハンガーラックにびっしり掛かっている、数あるワンピースを右端から順に一着ごとにめくり、全体を眺めては右に寄せる。
くすみブルーグレーの生地に胸元はVカットの露出少なめのノースリーブで、巻きスカートのようなAラインのロングワンピースに目が止まった。
ハンガーラックからそのくすみブルーグレーのワンピースを取り出して全体を見る。
40代後半にはどうなのだろうか…悩んでいると店員の女性がカタコトの日本語で「ステキ、ステキ」と言ってグッドサインを親指で作る。
そりゃあおかしいとは言わないわよね…
でもそのスカートの裾がヒラヒラと控えめに揺れる感じと、窮屈感を取り払ってくれそうな伸縮性のある生地が気に入り、美紗子は最後の買い物として購入を決めた。
急いでシャワーを浴び、メイクをし、髪を整え、買ったばかりのワンピースに身を包んだ。
馬子にも衣装で、少しはましに見えるだろうか…
鏡の前でしばらく、色んな角度に向きを変えて自分を写しては、キリがないチェックは続いた。
部屋を軽く片付け、ある程度パッキングも済ませ、明日の朝すぐに出発できるように整えて部屋を出た。