死のうとも思った。
ベランダから飛び降りれば。
何かがかわると。
そんな淡い期待を胸に秘めて。
私は臆病だったから。
せめて、楽にはなれると思って。
でも、できなかった。
一歩が踏み出せなかった。
そんな自分が悔しかった。
でも、泣けなかった。

いつしか、私はしゃべれなくなった。
のどが凍り付いて動かない。
ひきこもってから、1回も話していないのだから当たり前。
別にしゃべろうとも思わなかった。

そんなふうに思っている自分がいた。
そんな自分が腹立たしかった。

それでも。それでも。
食事だけは置いてあった。
それだけが、私の存在を表していた。
まだ、私は覚えられている。
まだ、いらない子じゃないんだと。

ある日、その食事が置かれていなかった。
あぁ、これで自分は死ぬんだ。
そう、思った。
死ぬってどういうことなんだろう。
死んだら、幸せになれるのかな。
頭の中を『死ぬ』の一言が駆け巡る。
夜になり、ベッドに横たわる。
1階から聞こえる、家族の笑い声。
久しぶりに私は泣いた。
悔しかった。情けなかった。
悲しかった。
こんなとき、声をだして思いっきり泣けたらいいのに。
声がでない私は、ただただ涙が零れ落ちる。
静かに。零れ落ちた涙は、布団にしみこんだ。

「・・・お前を、助けてやろうか・・・?」

いきなり窓が開き、黒髪の男が部屋に入ってきた。