記憶の中で恋をしていた



「紫桜、一緒に家帰ろ」

「送ってくれるんですか?」

「送る…?いや、一緒に住んでるでしょ」

「なんで君と?」


君??


「ねえ紫桜もしかしてだけど、記憶…失ってる?」

「多分そうですね、君のことだけさっぱり」


なんで星出のことは覚えてて、俺のことだけ…。


「とりあえず、帰ろ!何か思い出すかもしれないし!」


無理に笑顔を浮かべてみた。

でも紫桜は困ったような顔をするだけ。


「ここにいても仕方ないから…帰りますか」


仕方ないから、か。

病院を後にして、バスに揺られながら微妙な距離感で帰る。

紫桜はすぐ傍にいるのに、触れられない。


「ここですか、家」

「うん」


玄関を開けて、紫桜を先に入れる。恐る恐る入っていくが、あまりピンと来ていないようだ。


「何か思い出した?」

「特に何も」

「同棲してたことも思い出せない?」

「はい…」


なんとなくギクシャクしている。


「紫桜さ、一旦敬語やめない?あと、成宮くんって呼ばないで、悟って」

「…」


怪訝な顔をされる。