記憶の中で恋をしていた


親しげに話す男性に、心当たりはやはり無かった。

それに、会ったことないはずなのに、嫌悪感というか不信感というか、もやもやした気分が渦巻いた。


朝、病院のベッドで目を覚ました私は、親が日本にいないことを看護師さんに話すと、親しい人はいるかと尋ねてきた。

私には彼氏もいないし、特別仲のいい女友達がいるわけでもなかったが、親友である雄輝のことが思い浮かび、雄輝を呼んでもらうことにした。


1時間前。
雄輝が来てくれた。


「紫桜、倒れてたん?大丈夫か?」

「迎えに来てくれてありがとう」

「成宮じゃなくて何で俺?」

「…誰?」


耳馴染みのない人名が彼の口から飛び出す。


「え、記憶喪失でもしてんの?」

「は?」

「紫桜の彼氏だろ」

「彼氏?私に?」


こんな私に彼氏?

いるわけないない。


「まあいいや、呼んでくる」


私の知らない男性と2人きりにするつもりか?

雄輝はその場を離れてしまう。電話をかけに行くのだろう。

戻ってきた雄輝は、俺帰るわ、と帰ってしまった。


そして今に至る。