溺愛する身代わり姫を帝国王子は、逃さない。

 第5話


「……」

 思わず私は、レイカルド様に見惚れ、呆然としている。

 考えがまともに働かずに、私は目を見開いたままだった。

 レイカルド様の右手が下がり、思わず滲ませたルアンの眦に光る雫を拭った。

 そのまま柔らかな白い頬に、滑り落ちてゆく。

 レイカルド様の開いた指のうちの親指が、私の唇に触れた。

「!」

 我に返った私の胸奥で、熱い鼓動が跳ねあがる。

 唇も、その指に触れている箇所すべて。

 燃えるように、火照っていた。

 それを意識すると、耳のそばに心臓があるかのように、激しい鼓動が波打ちはじめる。

 まじかに迫ってくるレイカルド様の顔を見ていられず、私が瞼を閉じそうになった時。

「大丈夫だよ、ルアン。そう簡単には抱かないから」

 労わるようなとても優しい声音に、私は瞳を瞬かせた。

「それは、どうゆう?」

「ルアンの光の鼓動って、思ったよりも強くてね。だから僕の発作も、うまくおさまっているわけだし。だから口づけだけで、今の時点としては、充分だから」

「……そ、それならいいのですが」

 瞼を開けて、困惑を隠しきれないでいる私がそうぼやくと、レイカルド様は微苦笑を浮かべた。

「それにね、すぐさま抱いて、せっかく見つけることができた、お気に入りの姫巫女に、僕は嫌われたくはないから」

「……」

「それでもルアンは、僕には逆らえない。それはもうわかっているね?」

「あっ」

 レイカルド様は、断言しいっそう自分に近づいてきて、私は小さく声をあげた。

 レイカルド様は、そのまま私の唇をついばんだ。

 その行為に私は、慌てて身じろぐ。

 レイカルド様は、私が逃げられないようにしっかりと両頬を挟んで、押さえつけてくる。

 そして、そのまま深く口づけてきた。