溺愛する身代わり姫を帝国王子は、逃さない。

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 巫女養成施設は、デスリスク帝国の王宮内にあった。

  帝王の住む宮殿から離れているのは、いいこと。

  直系の王族は、穢れ濃すぎるってきくし。

  ただ養成施設の管理が杜撰なもので。

  一国の姫君に与えられたものとは、思えないほど。

  王宮育ちではない私の普段着より、酷い。

  巫女装束だけど、地位は見習いだからというけど。

  着古しているためか、所々綻びがみえ、身軽に動きやすいようにと膝丈。

  姫巫女としてではないそれは、生地が薄く簡素な刺繍すらない。

  白い薄衣に、見習い特有の白紫の細い腰紐を簡単に巻きつけているだけ。

  飾りっ気のない衣装だった。

  足元の白いサンダルも薄汚れ、黄ばみが目立っているし。

  母譲りの白金の髪や、薄衣の中の白い肌。

  毎日ゴシゴシ丁寧に洗っているから、綺麗だけども。

  過酷な労働で、以前よりも痩せてしまった。

  確かにもともと細すぎるけども。

  過労で疲れた重々しい身体は、気のせいではない。

  思わず緋色の瞳から、滲む涙を拭ってしまうほど。

  身体が悲鳴をあげているのは、切実に感じている。

  どうしても変わらない現況。

  デスリスク帝国へ来て、三年ほど続いている。

  衣食住は揃っているので、労働や他国に対して卑下する差別など。

  食事が少なくても、生命に危険は今のところない。

  堪えることが出来れば、他に問題はないはずなのに。

  なぜ、こんなにも涙が溢れてしまう?

  考え出すと、鬱屈してしまう。

  だからこそ、今日は比較的に楽な担当。

  いつもより元気な自分自身に、何か気晴らしが欲しい。

  たとえ身体が悲鳴あげてても、穢れこもる巫女養成施設にいるよりまし。

  浄化の養成施設のくせに、穢れが濃すぎ。

  身体の疲れより、心を慰めたい。
 
  過酷な現実を忘れる、何かが欲しかった。