溺愛する身代わり姫を帝国王子は、逃さない。

 第3話


「嫌って……、まったく」

「……それより、これはどうゆうこと、なのでしょうか?」

 私は、上官であった巫女姫のあまりの敬い方に気づいていた。

 自分を落ち着かせながら、私は敬語で話しかけた。

「さすがにすぐさま、王宮本邸にある王子宮に連れて行くには、いろいろ面倒だからねえ」

「王子宮?」

「そうだよ。だからね、まずは僕専用の別荘にした」

「は? だから、どうゆう……」

「どうゆうって、一応ここも王宮敷地内であることは、変わらないけど?」

「い、一体、この状況は、どうゆうこと、なのですか?」

 レイカルド様の言葉に驚愕し、私は目を剥いた。

「あれ? ルアンは、まだ僕の素性に気づいてないわけ?」

 「う、嘘でしょう?」

 私は、震えた声音ながらも、慌てて言い返した。

 「嘘なんて言わないよ。僕は、デスリスク帝国第三王子、レイカルドだけど?」

「!」

  前世と同じ立場に、私は深い眩暈を覚えていた。

 同じく帝国の王子の一人とは。

 これまた、以前と同じく問題が多すぎる展開かも。

「ルアンが一国の姫君ならば、その名前くらい、きいたことがあるだろう?」

 そう言いながらレイカルド様は、組んでいた足を解いた。

 リネンを大きく捲りあげたレイカルド様は、そのまま寝台へとあがってくる。

「来ないでください!」

「往生際が悪いな、ルアンは」

「だから来ないでって!」

「ルアン」

「帝国の王子ならば、貧国の姫君よりも、もっと相応しい方、いっぱいいらっしゃるでしょう?」

 私は、ぶんぶんと首を振りながら、そう説得しようと試みる。

 気にせずそのままやってきたレイカルド様は、私の細腕を掴んでしまう。

 レイカルド様は、私を後ろから抱きすくめてくる。

「僕は、ルアンがいい」

「いや、いやですって!」

 白金の髪に顔を埋めたレイカルド様に、そう甘く囁かれても、私はどうにか逃げようと激しく抗う。

 レイカルド様は、自分の胸奥へ細すぎる身体をぎゅっと押しつけてくる。

 剥がしたリネンを大きく捲りあげて、そのまま寝台の下へ落とした。

「ルアン、本当にわかってないわけ? 僕には逆らえないこと」

 何か言いかけた私の耳朶に、その形のいい唇を寄せたレイカルド様は、ぼそりと低い声音で私を威圧してきた。