溺愛する身代わり姫を帝国王子は、逃さない。

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  クレマチス小王国の姫君、ルアンとして生まれてしまったこと。

  それが仇となり、デスリスク帝国へ連れてこられてしまった。

  この世界は、穢れ濃すぎる妖魔界。

  邪王の欠片を宿す六代妖魔王が、その世界をほとんど制していることもあり、あちらこちら戦乱が広がっている。
 
  私の住む小王国は、影響を受けない平和な森深い場所なのに。

  南東の大国であるデスリスク帝国の支配下の一つであることには、変わらなかった。

  帝国は、莫大な富と権威を維持するため、帝国では植民地として奪い取った国々から、年齢を拘ることなく姫君を一人、人質として手に入れる習慣がある。

  そのために、私も連れて来られたのだけど。

  それには、他にも理由があった。

  多少なり、知っていなかったわけじゃない。

  それでも関わりあわなければ、お伽話のようなものなのに。

  邪王の欠片を宿すことで、帝国の王族となると莫大な力をその身に取り込むことが出来る。

  それに支配権すべてを委ねれば、邪念がその身体をむやみに蝕む。

  周囲のものや、他国に操られ、国を統治するなど出来ない。

  その上、直系の王子となれば、幼さゆえに十代までは邪王の欠片の影響で、狂いかねない現状。

  まさかのまさかで。

  大事な人質とは、これこそ名ばかり。

  濃すぎる穢れを祓う儀式が多々必要。

  人質としてきた姫君たちを巫女として、いずれは王族直系の聖女にするための教育する施設があるとは、思っていなかった。

  大切に育てられた、他国の姫君を禍々しい浄化の儀にまで、利用するとは。

  養成のためとはいえ、過酷な労働を強いるとは。

  さすがは穢れ漂う帝国、鬼畜すぎる。

 



 ※お読みいただき、ありがとうございます。
  作者は、焦りやすく抜けている性格なもので、ゆっくり丁寧に書きます。
  ゆえに、文字数約1000文字くらいで進みます。