異世界から来た少女は、暴走族と関わってなにを思うか?

で、学校に着いた。うん、竜ヶ崎高等学園…ここで合ってるみたいだ。
…あれ?門が開いてない。来る時間間違えたかな?えっと…あ、早く着きすぎた。学校の登校可能時間より20分ぐらい前だ。
あんま外出ないから、どのくらいの距離ならどんくらいの時間で着けるとか把握してないんだよねぇ。今度からもっと外に出る…最重要項目に設定しておこう。

空中浮遊(フライ)

門が開いてないならその上から通ればいいよね?えーっと…周りには誰もいないみたいだね。さすがに転校初日から浮くのは勘弁したい。

「ふんふふふーん♪」

今は気分がいいので鼻歌を歌いながら校内を歩く。今は学園長室を目指して歩いてるんだけど…あれ、ここって全然違くない?

「もしかして迷った?…まぁ、そんなことないか。」

歩けど歩けども学園長室にたどり着かない。どこ?どこにあるの学園長室は!?誰か、誰でもいい!私を学園長室まで連れて行ってくれー!
…あ、私が学校に着いてからもう15分ぐらい経ってるから、門のところまで戻れば誰かに会えるかな?会えたらその人に学園長室がどこか聞いてみよう!


◇◆◇

―――と、言うわけで門のところまで戻ったよ。丁度黒髪で緑色の綺麗な人がいたから、その人に聞いてみることにする。

「こんにちは!ここの学園長室ってどこか知ってますか?」
「…あ?見ない顔だな、お前。どこのどいつだ?」
「まぁまぁ、それはどうでもいいから。学園長室がどこか、早く教えてください!」
「…はぁ。一階の廊下をまっすぐ行って、二つ目の曲がり角で曲がる。そのまままっすぐ行けばある。で、お前の名前は?」
「ありがとう!じゃあね!!」

「…は?こっちの質問無視?」

ごめんね、黒髪くん。今は急がなくちゃいけないから!さっきの質問は聞こえなかったことにして、教えてくれた通りに進む。
―――おお!合ってる!すごい!!なんでわかんなかったんだろう?

学園長室に着いた。なんか、随分丈夫そうな扉だね?丈夫にしなきゃいけないような事情でもあるのかな…。

「おはようございます!!」
「入るときはノックぐらいしろ!!」

学園長室で書類に囲まれながら椅子に座っていたのは、信じられないことに私の知り合いだった。両親伝てに知り合った子―――遠山達磨(とおやまたつま)だったのだ。

「随分立派になったんだねー?あの頃は無職だったのに…ばーちゃんは嬉しいよ」
「???俺にはお前みたいな婆さんはいないんだが…」

ん…?ああ、性別を変えたからわからないのか。

「璃瑠だよ、終夜璃瑠!もう忘れちゃった?」
「…はぁ!?嘘だろ!?お前、俺に冗談言ってるな?」
「ほんとだよー。…ほら、これでどう?わかったでしょー?」

魔法を解いて元の姿に戻る。すると達磨は宇宙猫の顔になっていた。すごーい、人間ってこんな顔も出来るんだ。私、吸血鬼と人間の混血だから、今まで知らなかった。ちなみに吸血鬼の血が7割で、人間の血が3割。だから再生力が強いし、人間の血が入ってるおかげで吸血もしなくていいし、弱点もない!いい組み合わせだよね、これ。

しばらく経って現実を少しは理解できたのか、

「本当に璃瑠なんだよな?」

と問いかけてきた。あれ、まだわかんなかった?

「そうだよー。お父さんたちが男装しろって言ってきたから男装してたんだ。女子だってばれないようにするために、魔法まで使ってね。理由はわかんないけど!」

そういって私はまた魔法を発動した。いやー、やっぱり魔法って便利だなー。

「ああ…なるほどな。まぁ、男装させたのは…うん…。兎環さんの好みだろうな。あの人最近男装ものの本読んでたから。」
「え"、そうなの!?結構衝撃的だよ、それ…。――ん?待って、誰かこっちに向かってきてるよ。」

さすがにさっきの会話は聞かれちゃマズイものだと思ったから、聞かれても問題ないような会話をする。
一分か、二分くらいしただろうか。そのくらいの時間が経ったあと、学園長室の扉が開かれた。

「おい」
「…あれ、さっきの黒髪くんじゃん!また会ったね!」
「お前らはノックを知らないのか?全く…」

黒髪くんも達磨に用事があったのかな?随分と早い再会だったね。

「どうでもいいだろ。それより、お前、さっきは名乗りもせずに立ち去ったよな?…この俺相手に、よくそんなことやってくれたな」
「なに、達磨。この黒髪くんってそんなに有名な子なの?」

誰かとは話すときは一人称だけ気を付けておけばいいよね?さすがに口調までは気を付けなくてもいいか。男子の中にたまにいる喋り方でしょう。うん。

「…あー、そこそこ有名なんじゃないか?こいつは黒雨夜(くろさめよる)。全国No.1の暴走族、遼花の現総長だ。」