次の日 朝7時半

「おっしゃっ!今日は1発で起きれたぁあ!」

目覚ましの爆音で無理やり起きる。
朝がまじで弱い。毎日二度寝でギリギリ。でも一発で起きれた日はあまりいいことが無い

「……はぁ、昨日マジで遊びすぎたわ」

学校から帰ったあと、ナチ達と合流して、3時までカラオケにいた。ポテトを食べれなかったのが心残りだけど。

学校が始まるまであと40分程
ここでタイムロスをしてしまったら遅刻する。
急いで髪を巻いて、メイクして制服を着てSwitchをカバンに入れて、よくあるペロペロキャンディを食べる

これが朝のルーティン

「……おい、起きてんのか葵!」

下から母親の怒鳴り声。
お約束すぎるこの朝の流れ。

「起きてるってばぁ〜!」

ドアを開けると、台所で朝ごはんを作ってる母親の背中。

「なに、また昨日遅くまで遊んでたん?男か?」

「ナチ達とだけど」

「夜中に帰ってくんならもうでて行けよ」

はぁ、、、朝からなんなの

「あんた今日弁当いんの?」

母親が、顔も見ずに言った。

「出来れば欲しい」

「作ってないんだけど」

「ごめん、、、もう行くわ」

「おはよこーすけ〜」

母親が声のトーンを上げて言った

こーすけは、私の血の繋がってない同い年の弟。母親の連れ子。同じ学校に通ってる。
弟とは仲良くしてる。母親が見てないときにね。
あの人は、あたしとこーすけが仲良くしてるのを見たくないんだと思う。露骨に機嫌悪くなるし。

こーすけと目で挨拶をして家を出た。
なんでこーすけはそんなキラキラした目ができるんだよ、、


昔は違った。
本当のお母さんが生きてた頃は、誕生日にはケーキを買ってくれて、朝寝坊すれば学校まで送ってくれた。
みんなからは「優しいお母さんだね」「愛されてるね」って言われてた。


お母さん会いたい、、、、助けてよっ



事故でお母さんがいなくなって、お父さんがあの人を連れてきて――全部変わった。

目が合わない。声にも感情がない。
もう慣れたけど、慣れたくなかった。
母親と弟の関わりを見てたまにむしゃくしゃしてしまう。

母親が来てから、家の空気はすっかり変わった。

あたしは「そこにいるけど要らないもの」になった。

お父さんは仕事が忙しくて家にいないことが多い。
母親とこーすけの家庭の中に、あたしだけがうまく馴染めず、取り残されたみたいだった。

「……行ってきます」

少し肌寒い4月の朝。
イヤホンをつけて、上着のフードを深くかぶる。
自分の世界に逃げ込まなきゃ、やってられない。


みんなは私のことを「生粋のギャル」だって言う。
でも本当は、この黒く濁った心を隠すために、派手にするしかなかった。




扉を開けて、朝の空気が体にしみる。
冷たくて、でも、部屋の空気よりずっとマシだった。

歩きながら思い出すのはナチ達と、放課後先生としたゲーム。

「……うるさかったな、ほんとに」

でも、楽しかった。

自分のことを見てくれてるって思えた。

「……はぁ、やっぱ今日は、図書室寄るか」

そんな風に思える自分に、ちょっと驚いた。

あの家より、うるさいあの場所の方が――
今のあたしには、よっぽど落ち着ける。



「おお!あおちん今日は早ぇじゃん!」

歩いていたらナチが後ろから話しかけてきた

「ナチおはよ」

「ん?どしたまたなんかあった?お母さんと」

「ナチっ」

「一限サボろっか」

「いやそれは大丈夫行くよ」

「無理してんでしょ分かってるよ葵のこと」
「とりあえずまだ時間あるしゆっくり行こ?話してよ」

ナチは普段歩くのが早くて、追いつくのに必死なのに今日は歩幅を合わせてくれる
そういう気遣いがすごく嬉しい。だけど今は辛い
何で私は幸せになれないの、、、、

「……話すほどのことじゃないって」

「そうやってまた全部自分の中でぐるぐるするのやめな〜?」

「……してないし」

そう言いながら、ちょっとだけ顔を伏せる。
でも、ナチには見透かされてるのが分かってた。

「帰ってくんなって言われた」

涙混じりにそう言った
ナチの前で泣くの何回目なのかな


ナチは何も言わずに、ただ黙って歩いてた。
あたしの涙がポツポツ落ちても、無理に拭こうともしないし、変に慰めることもない。

でも自然に手を繋いでくれた


あったかい。ナチのそばにいると、そんな感覚になる。

「今日うちの家泊まってく?」

「でも、、、」

「いいんだよ私らの中に遠慮なんか必要ない」

「ぅぅぅナチっ!!」

あたしは思わずナチに抱きついた
ナチは優しく背中を撫でてくれる

「家が全てじゃないしさ。葵にはうちらがいるじゃん」


その言葉が、ストレートに胸に刺さる。
そういうとこ、ズルいよナチ。優しすぎるんだよ

「何時でもいいからしんどくなったら来なよ」

無理強いしないナチが、あたしの事を全部分かってるみたいで嬉しかった



「……ありがとう」


そう言うと、ナチは少しだけ照れた顔で前を向いて早く歩き出す。
言葉だけじゃなくて、心で寄り添ってくれる子。
そういう子が、そばにいてくれるだけで違う


「なー、今日クレープ食べ行かん?」

「今日?」

「今日」

「うん、行く、行きたい」

ちゃんと笑って、そう言えた。

だけど図書室にも行きたい、、

こうやって先生のことを考えるのも悪くないかも

今日は朝から最悪だったけど、
今はナチがいてくれたおかげで心が晴れたきがした。

イヤホンは外して、パーカーのフードも下ろして。いつも通りの私に戻れた


学校で