放課後、先生との秘密



待ちに待ったクリスマスが来た。

ま、受験生にとってクリスマスなんてあっても無いようなもんだけど。
先生にも勉強しろって言われて会えないし。
24日もひたすら勉強させられて。

先生に会いたい。


お風呂上がりに部屋でTikTokを見ていたら突然部屋の扉が開いた。


葵
「うわびっくりした」

こーすけ
「今日ヒラん家で泊まるわ」

葵
「は?あたしは?」

こーすけ
「葵はちゃんと勉強しなさい」

葵
「そこは今日くらい息抜きでもしたら?って声掛けるところだろっ!!」

こーすけ
「俺とヒラはもう終わったけど葵はマジで勉強しろ」

葵
「ケチ」

こーすけ
「ケチじゃない」


葵
「ふんっ!こーすけなんか嫌い」



そう言うとこーすけは嫌なのか焦りだした。


こーすけ
「ええっケーキ!ほら明日ケーキ買ってくるから」

葵
「明日はクリスマス終わってんだよ」

こーすけ
「まぁまぁ…あ、お前キヨ連れ込むなよ」

葵
「呼びたくても会ってくれないんですー」

こーすけ
「ふーんちなみに明日の夕方まで俺ヒラん家いるから」
「父さんもいないし」


それって先生連れ込んでも、俺は帰ってこないからゆっくりしとけってこと?
そんなこと言っても先生は来ねぇんだよ!!


葵
「わかった」


こーすけ
「じゃいってくるわ」


葵
「いってら〜」


こーすけはあたしの頭を撫でてから出ていった。

よっしゃ!監視の目が無くなったからちょっとゲームでもしよ!!

クリスマスまで勉強してられっかよ


ってプレステの配線がない。
Switchが無い。


こーすけっ!!!!💢💢


必然的に勉強しかできねぇじゃん。


とりあえずお菓子を大量に部屋に持ち込んで、机に向かった。


ん〜赤本解いてもさっぱりわからん。
やっぱりちゃんと3年間学校行って、部活もちゃんとして成績良くしとくべきだった。


葵
「先生に会いたい」


1人になると余計寂しさが募っていく。
2日前まで学校あったから別に会えてないわけじゃないけど。
でもちょっとは…いやめっちゃ会いたくなるんだよ。

先生も同じ気持ちならいいのに。


今先生何してんだろ…





ふと外を見ると雪が降っていた。



葵
「一緒に見たかったな…」



そんな気持ちになればなるほど勉強なんか手につかない。



インスタを見ても、ナチが彼氏とディズニー行ってるし。
フジとナナは家でクリスマスパーティしてるし。
アリサは…知らんけど多分遊んでるか勉強してる。


はぁ…今日くらい遊ばせてくれ。
あたしがなんかか悪いことしたかよ。
なんのいじめなんよ。


葵
「家にいるのに帰りたい」



受験鬱すぎる。
とにかくやり込むしかないか。



赤本をひらいてシャーペンを握る。

文字が頭に入らない。
問題文を読んでるはずなのに、先生の声で脳内再生されるのが一番の問題だと思う。


「集中しろ、葵」
「こんなものできねぇの?」


……ほら、今も。


葵
「はぁ……無理」


スマホを手に取って、無意識に連絡先を探してしまう。
……ないんだった。


突然家来きたりしないかな…




スマホを置いて、もう一度赤本を開く。
さっき解いたはずの問題、また間違えてる。


葵
「なんで同じとこで引っかかるんだよ……」


シャーペンを置いて、深く息を吐いた。

頭の中がぐちゃぐちゃだ。
問題も、将来も、先生のことも。

先生が今ここにいたら、
「はいはい一旦休憩すんぞ〜」って言いながら
赤本取り上げてくるんだろうな。

で、「ちゃんとできてるとこもあるじゃん偉い」って褒めてくれる。

……妄想が一番の現実逃避。



葵
「会えないのに」


小さく呟いて、机に額をつける。


??
「葵ー!」


なんか外からバカでかい声で名前を叫ばれた気がする。
いや、そんなわけないだろ。

……変に期待するな。


葵
「いやいや来るわけない」




自分に言い聞かせるみたいに言って、
立ち上がってカーテンを少し開けた。




葵
「やっぱり…」




誰かがあたしの家の前で大きく手を振ってる。
そんなの誰か確認しなくても分かる。







あたしの大好きな人だもん。




急いで玄関に向かって鍵を開けた。


先生
「よっ!今仕事帰りでさ〜てか厚着して来いよ寒いだろ」


部屋着のまま飛び出てきたけど、それどころじゃないもん。


葵
「なんでいんの?…まじ?これ夢?」


そこには大好きな人がいた。
こんなに願ってたからかな?
先生も同じ気持ちだったのかな?

そう考えるだけで泣きそうになる。
あたし今日なんにも頑張ってないのに。



先生
「んはは夢じゃねぇよ」
「ん、おいで」


先生が手を広げた。


葵
「先生っ」


先生に吸い込まれるように思いっきり抱きつく。
それに答えるようにぎゅーっと抱き締め返してくれた。

一瞬にして先生の温もりに包まれて幸せが溢れ出していく。
あぁやっとだ。
ずっと欲しかった。
ずっと触れたかった。
ずっと…会いたかった。


先生
「はぁマジで幸せ」

葵
「先生っ大好き」

先生
「俺も大好き葵愛してるよ」
「会いたかった?」

葵
「そりゃ会いたかったよ!」


こんなんじゃ足りないくらい会いたかったよ。
先生のことばっかり考えて苦しかった。


そんなこと言ったら重たいって思われそうで言わないけど。


先生
「んじゃそんな素直なあおちゃんにプレゼント」


葵
「えなに?」


先生はコートのポケットを探って、少し照れたように目を逸らした。


先生
「そんな大したもんじゃないけどさ」



小さな箱を差し出される。


葵
「え…」


え、これティファニーじゃない?
そんな高いもの貰っていいの?
知らないフリした方がいい?





先生
「開けてみ」


そう言われてそっと蓋を開けると、
中には小さなシルバーのキラキラしたネックレスが入っていた。





葵
「可愛い…」
「めっちゃ嬉しいよありがとう!!」

先生
「俺からのクリスマスプレゼント」



そう言ってネックレスをつけてくれる。
さっきより顔が近くてドキドキが止まらない。

やばいかっこいい…好きすぎて溶けちゃいそう。

あたしこんなに幸せになっていいの?



先生
「めっちゃ似合ってるよ…今日もすげぇ可愛い」
「見て俺とお揃い」



コートの中から先生が付けてるネックレスを見せてくれる。

ほんとだ…!!
先生も似合ってる。
何よりもお揃いってのが嬉しい。







葵
「えええっ初めてのお揃いじゃんありがとっ」
「高かったくない?これ」
「あたし…なんのお返しもできないよ?」



思わず俯いてしまうと、先生が頭を撫でた。



先生
「葵にお金なんか使わすつもりないし、別に高くねぇよ心配すんな」
「喜んでくれたらそれでいいの」


そう言って頬を両手で持ち上げられ自然と目が合う。

胸がいっぱいになって言葉が出てこない。




先生
「その顔可愛いなぁ」
「これ付けてたら俺がそばにいなくても考えてくれる?頑張れる?」




そりゃもうめっちゃ頑張れるよ。
なんでもできちゃいそう。


葵
「付けてなくてもずっと考えてるけどね?」
「けど、これあったらもっと頑張れるしもっと先生のこと考えるよ」
「……受験も…頑張るから」


徐々に先生の頬が赤くなっていく。
照れた笑笑


先生
「ずる…可愛すぎるだろ」


先生が近ずいて来てキスしようとしてきた。
あたしは咄嗟に先生の口元に手のひらを向けた。



葵
「だーめ卒業したら…ね?」




実は挨拶に来た時、あたしの部屋でキスしまくったことパパにバレたんだ。

寝たフリして、先生の行動見張ってたらしくて…

そのせいでぎゅー以外はもう卒業まで禁止になってしまった。

ほんとどうかしてるよ……




先生
「もー今の雰囲気はちゅーするところだろぉ!」



わかってるよそんなこと。
でも誰が見てるか分からない。
こうやってぎゅーしてるとこも見られたらどうするの?
こんなとこでキスしてるとこ見られたら、先生終わっちゃうよ。

しかも…パパに嘘つくことになる。



葵
「もし誰かに見られたらどうすんの?」

先生
「ふーん見られなかったらしていいってわけ?」


そういうことじゃないけどさ…
ま、そうなるよね


葵
「そ、卒業まで我慢!!パパの約束破るの?」

先生
「…ごめん今は仕方ない」

葵
「え」

先生
「今日誰もいないしょ?こーすけから聞いてんの」
「ガッ…お父さんに葵のことよろしくって」


先生はあたしの手を取って玄関を開けた。



葵
「え、ちょっとっ!!」

先生
「お邪魔します」


すぐに鍵を閉めてあたしをドアの背に追いやり手を縛られて完璧に逃げられなくなってしまった。





葵
「ちょ、待って待って…良いって言ってない」





それは言い訳で、まだ心の準備ができてないだけ





先生
「嫌だった?」

葵
「嫌じゃないよ…」

先生
「今日くらい許して?クリスマスだから」

葵
「特別な日ってこと?」

先生
「そう」
「葵は1ミリもしたくない?」


そんなのしたいに決まってんじゃん
そんな誘ってる目で見られたら余計に。


葵
「そんなわけない」



目を瞑った。
もう全部受け入れるから早くしてよ。


そう待っていたら先生が唸り出した。


先生
「……ん〜やっぱり卒業まで取っとくか」



……は?なんで?
覚悟できてたのに?



先生
「葵のこと…ちゃんと大切にしたいってわかって欲しいし」
「チラチラ脳裏にお父さんの顔がっ!!」


先生が名残惜しそうに、あたしの頭に額を軽く当てる。


葵
「ここまでしたくせに…?」

先生
「欲しかったってこと?」

葵
「うん」

先生
「可愛すぎるって」



先生は微笑んであたしの額にキスをした。
そのまま、流れるように鼻や頬、唇の横にキスをして、そのまま首筋にキスマをつけられた。


その勢いだとちゅーして、最後まで行っちゃうと思ったのに。



けどもうネックレスまで貰ってそれ以上求めたらダメな気がした。




先生
「目がとろんってしてるけど?首弱いもんね」

葵
「先生のせいじゃんかっ//」

先生
「まじで俺もちょっとやばいから」

葵
「ばかっ!」


先生
「ちゅーは卒業したらまたいっぱいしような」

葵
「なんかそれはきもい」


先生は笑ってあたしに付いたネックレスに触れた。


先生
「愛してるよ葵」

葵
「あたしも…愛してる」


あたしを優しく抱き締めてくれる。
だけどその力にはもう一生離さないとでも言うかのように強い。



先生
「……我慢させてごめん」

葵
「でもあとちょっとだから問題ないよ」

先生
「葵はえらいなぁ」


あたしはできるだけ先生に負担の材料になりたくない。
わがまま言うならキスもその先もしたいよ。
堂々と街の中で手を繋ぎながら歩きたい。


出会い方が違えば…あたしが学生じゃなかったらって何度も思う。



先生
「卒業したら旅行とかいっぱい行こうな?」

葵
「え、まじで?」


そんなのやばいじゃん!
先生とお泊まりってこと?!
えっ死ぬ。



先生
「ま、受験受かったらの話だけどな?」


葵
「うっっ結局それかよ」



そう言いながらも、口元が緩むのを止められない。

先生は肩をすくめて、楽しそうに笑った。



先生
「だって条件付きにしとかないと絶対サボるだろ?」

葵
「しないし!」
「……多分」

先生
「ほらもう怪しい」



そう言って、指で軽く額をつつかれる。



先生
「ちゃんと受かったら葵がしたいこと全部やってあげる」



心臓がうるさい。

想像しただけで、
楽しみと不安とドキドキが一気に来る。
幸せな未来しか見えない。


葵
「……約束だからね」
「冗談だったら別れるから」

先生
「冗談なわけねぇだろ」
「だからその代わりな」


一拍置いて珍しく真面目な顔。
そんな先生も好き


先生
「今は頑張んだぞ」
「ずっと応援してるし勉強も一緒に頑張ろうな?」


その言葉が、何よりのご褒美だった。

葵
「……じゃあ」
「絶対受かる」

先生は満足そうに頷く。


先生
「んふふ俺の葵は偉い子だなぁ」
「じゃあ俺帰るわ勉強頑張れよ」


もう帰っちゃうのか…


ドアを開けて玄関に向かう背中が少し名残惜しそうで。


葵
「……先生」


そう呼ぶと振り返る。


先生
「ん?どした?」


葵
「か、帰らないでっ」


何引き止めてるの?
先生だってやることあるでしょ?

いや仮にもあたしは彼女だ。
甘えたい時に甘えないでどうする。


葵
「ねぇ寒いし家いていいよ?勉強教えてよ」

先生
「絶対襲うから無理」


冗談っぽく言ったのに、目は全然笑ってなくて。




葵
「……えそれ冗談?」
「真顔でそんな事言うなよ」


先生は少しだけ困った顔をして頭をかいた。


先生
「いや〜半分冗談だけどさ」
「葵さんすっごく部屋着がやばいの自覚してる?」

葵
「えっっ」


確かにロンTに短パンでスボンは履いてないように見える部屋着。
先生には刺激強かったってこと?


先生
「ほんとそろそろやばいから帰る」


一歩、玄関の外に出てから、振り返る。


葵
「ね、あたしのこと好き?」

先生
「葵しか好きじゃねぇよ」



即答だった。

「葵しか」その言葉がこんなにも嬉しいなんて知らなかった。
あたしには先生しかいない。
こんなに幸せにさせてくれるのも、こんなに好きだと思える人も。



先生
「暖かくして寝るんだぞ」
「あ、バカは風邪ひかねぇか」



そう言って、先生は子どものように笑った。
さっきまで近くにあった温もりが、もう一歩分遠くなる。


葵
「うるさいなぁ」


そう言いながらも口角があがる。
先生はそれに気づいたのか小さく笑った。

まだこうやって楽しい時間が続いて欲しいな。


帰って欲しくない。
1人になりたくない。



先生
「ほらそういうとこだよ」

葵
「……でも」



まだ一緒にいてよ…


先生
「可愛げないくせにちゃんと寂しそうな顔する」


葵
「……してないし」


強がって目を逸らすと、先生は一歩近づいてきて、そっとあたしの頭に手を置いた。
撫で方はいつも通りなのに、今日はやけに名残惜しそうで。


先生
「帰りたくないわ…」


その言葉に、胸がきゅっと締まった。
同じ気持ちだったんだって分かった瞬間、嬉しいのに苦しい。


葵
「……帰って欲しくない」


小さくそう言うと、先生は驚いたみたいに目を瞬かせてから、優しく微笑んだ。


先生
「名残惜しいくらいがちょうどいいのかもな」
「よし!こういう時は潔く帰るわ」



先生は一歩下がって、玄関の外へ出る。



先生
「じゃあおやすみ」
「明日起きたらまず俺のこと思い出せよ」

葵
「もう思い出してるし」


即答すると、先生は吹き出した。


先生
「はいはい」
「まじで可愛いな葵は」


そのまま手を振って、雪の中へ消えていく背中。
ドアを閉めて鍵をかけた瞬間、静けさが一気に戻ってきた。

……なのに。

胸はぽかぽかしてる。

ネックレスを握りしめて、ベッドに倒れ込む。


葵
「好きだよ先生っ」


もう先生に会いたいくらい先生不足だ。

先生無しじゃもう生きていけない。
もし居なくなったとしてもこのネックレスがあれば…
いや、いなくなることなんて死ぬ時以外あたし達にあるわけない。



ないよね……?



葵
「早く先生の奥さんになりたいな…」



言葉にするとなんだか恥ずかしい。
どんどん顔が熱くなる。

今はまだ言葉にするだけの夢。

だけど
同じ未来を想像できる人がいるって、
それだけで十分すぎるほど幸せだった。

先生となら一緒に笑って並べる未来があるって信じられる。


葵
「よっし!勉強するか!」


ベッドから起き上がって赤本をもう一度開く。

なんか今ならなんでもできちゃいそうだ。

さっき分からなかった問題がスラスラと解ける自分が怖い。

いやこれさっきまでやる気が無かっただけじゃね?
思わずそんな自分に笑ってしまう。


葵
「まじ単純すぎ」


このネックレスのおかげで先生がいつでも隣にいてくれている気がした。



こんなにも幸せなクリスマスがあるなんて、先生と付き合わなかったら知らなかった。


葵
「……あぁもう幸せ」


ネックレスをそっと握りしめて唇にあてた。
早くまた先生に会いたい……