放課後、先生との秘密

プール


水着に着替えて深呼吸した。

"プールで先生と2人きり"


その言葉が頭の中で何度も駆け巡っていく。
思春期の男みたいで恥ずかしいけど、訳わかんないくらいドキドキしてるの。

こんなの好きな人と合法で出来ていいの?
なにかの罪で捕まない?


流石に学校で、しかもプールの中でそういうこと始まっちゃったりしないよね?



葵
「……いやいやそんなこと考えてる場合じゃない」

これはただの補講だ。
煩悩は捨てろ!!


てかラッシュガード忘れた。
ほぼ下着みたい。
いや中学生とか皆こんなんじゃん。
考えすぎ!!



あたしは切り替えて更衣室を出た。


プールにはもう先生がいて大の字になって浮いていた。
多分何回か泳いでたんだろな。





なんかどさくさに紛れてちゅーとかされないかな。



葵
「お待たせ〜」

先生
「偉い!よく来た!!入れ入れ」



先生が手を貸してくれてプールの中に入った。


先生の手細くて大きくて大好きだなぁ。



葵
「さっっむ!!」


いくら室内プールだといっても水はまだ冷たくて凍え死にそう。


先生
「大丈夫泳いだら慣れるしょ」
「あ、カナズチだから泳げねぇのか」

葵
「え殺すぞ」


先生が満面の笑みで笑った。
人の事バカにしやがって!!!


先生
「とりあえず泳ぐぞぉ!」

葵
「おー!!」


お互い拳を突き上げて気合いを入れた。


先生といたらなんでもできる気がする。
隣にいたら安心するしね。



先生
「とりあえず久々だし水に慣れるところからやろっか」


そう言って先生はあたしの頭をわしずワシ掴みしてきた。



葵
「え、えちょ待って何する気?怖い怖い怖い」

先生
「大丈夫大丈夫沈めねぇから」

葵
「信じられるかそんなの!」


こっちは両手で頭掴まれてんだわ!
何されるかわかんないから余計怖い。


先生
「俺一応教師な」
「問題起こすほどバカじゃねぇの」



そう言って先生の手が徐々に水面に近ずいていく。

い、息どうやるんだっけ!?
顔面ごと行くの?
何この状況まじで。


先生
「顔に水かかったか?」


ちゃぷんと額に水が触れる。


葵
「……え、うん」


え、それだけ?
無理やり沈められるのかと思ってた。


先生
「どう?慣れそう?」

葵
「……まだ生きてる」

先生
「な?」



先生はくすっと笑って頭を撫でてくれた。
そっと手が離れていく。


水に慣れさせようとしてくれたのかな?


先生
「じゃあそのまま息止めて自分で顔つけて」


葵
「……ん」


息を止めて、そっと顔を水につけた。

冷たい。
真っ暗で怖い。
体を動かしてないのに全然息が持たない。




葵
「……っはぁ!」

先生
「はいできた!偉すぎるわ流石に」


一つ一つできる度先生が褒めてくれて自己肯定感が上がっていく。



思ったより全然短くて怖くなかった。
きっと先生が隣にいてくれたおかげでもある



先生
「もういける?」

葵
「……うん」

先生
「じゃあもう泳ご」
「いやまだ気が早いか」
「平泳ぎの足の形できるよな?」


葵
「カエルみたいな?」

先生
「そう一旦試そ」



なんかいつもより先生が先生してて別人みたい。



先生は泳いで見本を見せてくれる。
足をカエルみたいに曲げて…パッと開いて閉じる動き。

体育の先生にもなれちゃうのすごいなぁ…


先生
「はいどうぞ」


葵
「溺れたら?」

先生
「すぐ助けるから安心しろ」



その言葉を信じてあたしは小さく息を吸った。



葵
「…よし」



壁を力ずよく蹴った。
一気に体が水に預けられて視界がぐらっと揺れる。


足を引いてカエルみたいに開いてぎゅっと閉じる。


水がも重くて思ったより前に進まない。
腕もどうしていいか分からなくなってバタつく。

この感覚なんか前と……


葵
「……っ」

息が浅くなる。
体が沈みそうになって、焦りが一気に来た。



先生
「そろそろ息継ぎしろ!!」


息継ぎってどうやってすんの?
とりあえず頭を水面からだす?


葵
「……っ、ぶはっ…うっ?!」


口に水が一気に入ってくる。
思わず手足がバタついた。


やばい死んじゃう!!


その次の瞬間。

ぐっと引き寄せられて、体が一気に浮いた。



先生
「大丈夫?ちゃんと溺れんなよ…」


プールサイドに誘導されて縁に倒れ込んだ



葵
「げほっ……っ、もうむり……!」

先生
「ちょっと休憩しよか」





肩で息をして、必死に呼吸する。
胸がばくばくして、耳の奥がキーンってする。


先生が背中をさすってくれる。
そのお陰で徐々に楽になってきた気がする。


葵
「……ねぇいっぱい水飲んだ……」


鼻の奥がズキズキする…
もう帰りたいよ……



先生
「いやクジラかと思ったわ」


「あんな溺れ方するやつお前しか見たことねぇ」って先生は手を叩いて笑いだした。




いや笑い事じゃねぇよ!!
ほんと死ぬかと思った


葵
「もう帰りたーい」


先生
「まだ始まったばっかだろ気持ちはわかるけどな」
「でも後でうっしーが見に来るからなぁ」

葵
「えー?来るん?だりぃ」


先生
「様子見て何とか点数つけるとか言ってたわ」

葵
「こんなの無理じゃん」

先生
「まぁなんとかなるしょ」


葵
「頑張ります……」


それから15分くらい休憩した。
休憩といっても水を掛け合ったり鬼ごっこをしたり水中でじゃんけんしたり。
普段できない遊びを思う存分した。




次第に水面がオレンジ色に染まっていって天井に淡い影を移していた。

思わず見惚れてしまう程に綺麗。


ふと時計を見ると5時半を指していた。
刻一刻と時間が迫っていってる。
そろそろ泳げるようにならないとやばい。



葵
「もうこんな時間か……休憩終わる?」


後ろにいた先生に問いかけた。


先生
「……っその体制でこっち向くな」


先生は、パッと顔を背けて、手で自分の口元を覆う。

葵
「え……なんで?」


プールサイドの縁に手を置いて振り返っただけでなんでそんな照れてるの?
耳真っ赤だけど?


先生
「バックしてるみたいでエロい」

葵
「……は?きも」



予想外の言葉に思わず反射的にキモって言ってしまった。


いやバックってあの?
ええっ……

そんな風に見えんの?


先生
「上目遣いで俺の事みて誘ってんの?」

葵
「ばかっ」


あたしが目を逸らして前を向くと先生が後ろからぎゅっと抱き締めてきた。

水着のせいでいつもより密着感がやばい。
あとなんか…背中に当たってるよ先生……


葵
「……先生?」

先生
「なんで上の服着てこなかったん?」

葵
「忘れただけじゃんかっ」

先生
「たまに胸元見えてて…わざとやってんのかと思った」


お腹にあった手がどんどん胸に伸びてくる。
やばい…ここでそんなっ…


葵
「せ、先生?なにしてんの?」

先生
「嫌だったら……俺の事突き飛ばして」
「もう止まんねぇから」


突き飛ばせるわけないじゃん。
バカ。

先生の声はもう、いつもの余裕なんて欠片もなくて、切羽詰まった一人の男の人の声だった。


先生
「レトにここ…触られたことあんの?」


指先が、水着をじわじわと押し退けてあたしの肌に直接触れる。

水の中なのに触れられてるところが熱い。
指先がそっと尖った部分をなぞる。


葵
「たぶ……んっないっやぁぁ……せんせっ…っ」

先生
「ふーん」


無意識に声が出てしまう。
心臓が口から飛び出しそうなくらい跳ねて、膝の力が抜けて、そのままプールに沈んでしまいそう。


先生
「可愛い声出すなバレたらどうすんの?」



先生の顔があたしの首筋に埋められる。
濡れた髪が当たってくすぐったい。

腫れ物触るかのように優しく揉みしだかれる。
こんなので喘いでる動画を見た時嘘だろって思ったのに…やばいくらい気持ちよくてどうにかなってしまいそう。


葵
「……せんせっ」

先生
「そろそろさ二人でいる時はキヨって呼べよ」

葵
「やだっ……んんあっ…できない」

先生
「友達といる時キヨって言ってんじゃん」
「すげぇ嬉しいのに俺の前じゃ先生先生って」
「いつまでただの先生でいればいいの?」
「なぁ?」



図星だ。
友達の前では「キヨちんがさ〜」なんてたまに名前で言って。
だってみんなそう呼んでるし。

でも、本人の前で呼ぶのはどうしても恥ずかしくてできなかったのに




葵
「あっ…キ、キヨ…くんっそこばっか……やだっ」


先生
「くんって…お前マジで俺の事殺す気か」



手がピタッと止まったかと思えば、次の瞬間顎を引かれ、吸い付くような深いキスであたしの唇を塞いだ。



キヨ
「……それは反則だろ」


唇が離れた瞬間、耳元で掠れた声が響く。
そこ声だけでイッちゃいそうになる。


今度は体制を変えて正面を向けさせられた。
先生のが大きくなって苦しそうにしてあたしに擦り寄せてくる。
その先よりも今は…キスがしたい。


もっとあたしのことだけ考えてほしい。
まだ……足りない。


葵
「ねぇキヨっもっと…して?」


先生の首に手を回してそう言った。
恥ずかしさなんてもう存在してない。

ただ欲に一直線で、早く先生が欲しい。
今だけは何されてもいい。
卒業までとかもうどうでもいい。


キヨ
「……お前、自分が何言ってんのか分かってんの?」

葵
「わかってる…キヨがすきっはやくっ」

先生
「……っ可愛すぎんだろそれ」



次の瞬間、先生が首筋吸い付いてきて鎖骨にかけて痕を残すみたいに赤い華を咲かせた。


葵
「見えちゃうよっ」

先生
「もう俺のもんだから」
「ぜってぇ離さねぇ」


その言葉と共に後頭部を引き寄せられる。


逃げる隙なんて一ミリも与えないような、強引で熱いキスが降ってきた。


葵
「んむっ……! ……んん、……っ」



さっきまでのキスとは、熱量が全然違う。
舌が深く、奥まで侵入してきて、あたしの口の中を探るかのように動いてる。

その動きに合わせてあたしも必死に舌を絡ませた。
気持ちよくて頭が真っ白になっていく。

さっきまで部活の掛け声が聞こえてたのに、もう2人の吐息とリップ音の反響しか聞こえない。


葵
「……んぁ、……ふ、きよ……っ」


一瞬だけ唇が離れた隙に、熱い吐息が混ざり合う。

先生の瞳は、オレンジ色の光を反射して、見たこともないくらい熱く、鋭く光っていた。

今度は何度も下唇を甘噛みしてどんどん深くなる。
あたしの頬を伝う唾液がどっちのかもう分からない。


先生
「愛してるっ葵」

葵
「あたしもっ」


先生の手が水着にかかって捲りあげようとした時だった。

プールの扉が開く音がした。
牛沢先生が来る

今いい所だったのに。


先生
「クソッ…来たか」
「ごめん……やりすぎたわ」

葵
「…幸せだった」


脳が溶けるところだったもん。
しかも牛沢先生が来なかったらここで、最後まで行ってたかもしれない。
バレてたらお互い終わってた。


先生
「可愛いなぁ」


先生が愛おしい顔をして頭を撫でてくれる。
さっきまでのことが嘘みたいに。


先生
「……次はこんなとこじゃなくてちゃんとしたとこでしよ」
「せめて卒業してから」

葵
「うん……」


足りないよ先生っ……


先生
「そんな顔しても同じ気持ちだからな?」


頬をぷにぷにされる。
すっごくちゅーしたい。
触れるだけでいいからもう一回。


葵
「……ね、せんせっ」

先生
「だーめ」




あたしらのイチャイチャを遮るように牛沢先生が入ってきた


牛沢
「おーい泳げるようになったかー?」

先生
「さっきちょっと溺れて休憩してたんだよ」


葵
「いやほんと死ぬかと思った」


色んな意味でね。



あたしはふと首にキスマが付いてることを思い出した。

パッと首に手を押し当てたけどもう遅かったみたいで、牛沢先生は今にも溜息をつきそうな顔をしていた。



牛沢
「……ふーん…遊んでんのもいいけど
あと30分でここ閉めねぇといけないから」


牛沢先生はそれ以上追求せずわざとらしく腕時計に目を落とした。
き、気まずい…



先生
「おう!じゃあちょうどいいな。葵ラストスパート行くぞ!」

葵
「おぉ!!」

牛沢先生
「あははっ…お前らほんと仲良いな」


その笑い方はほぼ呆れに近かった。
先生は未だにこの空気に察せて無さそうだし。



あたしはとりあえず息を整えることにした。
さすがにもう帰りたいし一発で成功させたい。
深く深呼吸をした。


先生
「大丈夫俺隣についてるから」

葵
「……わかってるよ先生」




あたしは勢いよく顔を水につけた。

冷たい水が頬の熱を冷ましてくれるけど、心はどうも落ち着かない。
さっきまでの出来事を思い出して疼いてしまう。

何度も溺れかけて、そのたびに最初からやり直して。
だけど「お前ならできる」って2人に沢山言ってもらったおかげで10回目くらいでやっと成功した。



バシャバシャと響く水音の陰で、あたし達は牛沢先生の前で「生徒と教師」の時間を必死に演じきっていた。