放課後、先生との秘密

香坂玲斗side______



今日は葵と付き合って1ヶ月記念日


俺はわかってるんや。
俺といればいるほど葵が苦しくなることも、清川先生の元に戻りたいことも。
俺の事好きじゃないことも。
なのにわかってても離せない。


ずっと好きだった人と付き合えて、無理矢理でも彼女として隣にいてくれたこの奇跡を無駄にしたくなかった。

ずっとそんな素振りも知らないフリしてた。


葵は優しいから
俺が拗ねたら気を遣うし、俺が喜ぶなら嫌なことでも我慢する。
今日の浴衣だって。絶対好みじゃないのに俺のために着てくれた。



その優しさが、たまらなく嬉しくて。
同時に、たまらなく怖い。

笑ってくれてるのに、どこか遠い。
手は繋いでるのに、いつまで経っても心は掴めてない。

ヒラとか友達の前で見せる、あの無邪気な笑顔。
何も考えてないみたいに笑う、あの顔。


あれを、俺はまだ一度も見たことない。


俺は素のあの笑顔に惚れたのに。



もうこれ以上葵を縛り付けてはいけない。
1ヶ月記念っていうキリのいい日に葵を解放してあげたい。

これ以上…俺の恋人ごっこに付き合わさせてはいけない。


葵には大好きな人と幸せになって、その笑顔をまた影から見たい。
もうそれだけで俺は十分やって気づいたんよ…
この1ヶ月沢山幸せにしてくれたから、次は俺から幸せにさせてあげたい。




葵
「レトくん何にする?」



葵が首を傾げながら何味のクレープにするか聞いてきた。


可愛いな……
このままキスしたいな…

何度も手を出しそうになった。
でもそれは好きな人とするべきだから
きっと葵はそれを望んでないし、いつもキスだけで耐えて。
俺がファーストキスを奪ってごめん。
でも俺と別れても、俺が初めてだって思い出して欲しい





レト
「えっ?あ、チョコバナナにしよかな…」

葵
「なんかキモ」

レト
「は?何がキモいねん」

葵
「いやぁ?」



ニコニコしながら葵はそう言った。

最近葵が徐々に素を見せてくれる。
その変化が嬉しくて
少しでも俺の事好きやったらいいのに。

こんなくだらないやり取りも、今日で最後か…







葵
「はいチョコバナナ」

レト
「ありがとう」


他にも葵の好きな焼きそばとかりんご飴を買って、花火が見やすい場所に向かう。


2人並んで座った。
芝生の上に座るの文句言ってたけど、渋々座ってさ、それすらも可愛く感じてしまう。

もう好きで好きでしかたない。



あと40分で花火が上がる。


けど俺とは花火は見させない。
綺麗な景色は大好きな人と見て欲しいから。

あぁ胃がキリキリする。帰りたい……




こんな時になって、(なまえ:下の名前)との日々が走馬灯みたいに、鮮明によみがえってくる。




初めて手を繋いだ日
初デートの日
初めてキスした日
ゲームで勝って(なまえ:下の名前)がキレた日
バイト帰りに迎えに行ったら「会いたかった」って言って俺に抱き着いてきた日
一緒に遊戯王やってくれた日
俺の買い物に着いてきてくれた日
暇な日に何時間も電話してくれた日
俺の親と出かけた日






思い返すだけで心は満たされて。
いつも俺は幸せだった。
でも(なまえ:下の名前)はずっと俺の為に我慢してくれてたんよな?







さよなら言うには…思い出を作りすぎたのかもしれない。


香坂玲斗 side___END