清川先生side___________
今日は久々の休みで買い物に来ていた
補講期間の土日は友達とテニスしたりゲームしたりで買い物するタイミングを逃してた。
もう家には綾鷹くらいしかなくて、
これ以上暑くなったらほんと孤独死してもおかしくない
最近マジで暑すぎて、外出た瞬間「俺がなんか悪いことした?」って地球に問いかけたくなる
そしたらうっしーから急に電話かかってきて
「これもう誰か地球規模でロウリュしてるだろ」って言ってきたくらいだし
ほんと最近暑すぎる
どっかに最強熱波師いるだろこれ
そうしてぼーっとしながらショッピングモールを歩いていた。
今日はコナンの映画でも見て帰ろうかなぁ
葵が隣にいたら楽しんだろうなぁ
俺ずっと葵のことばっかだな
今に始まった事じゃねぇけど四六時中、葵の事ばかり考える生活で、仕事で辛いことがあってもすぐ楽になれるんだよな
会いたい
抱きしめたい
付き合いたい
幸せにしたい
笑顔が見たい
それを毎日、何百回何万回キリがないほど繰り返し考えてる
俺高校生みたいな恋してんなぁ
「昨日会ったばっかなのに…会いてぇ」
そんな独り言さえ出てしまう
そんな時だった
「え!!キヨくん?!!」
懐かしい声がして思わず振り返ると
「ララ…!!!」
そこにいたのは、北海道にいた頃付き合っていた元カノだった。
「うわぁ会えると思ってなかった!!やっばぁ!久しぶりキヨくん!!」
ララは相変わらず明るい笑顔とテンション高めの話し方で昔の記憶をつい思い出してしまう
初めてララを知ったのは………いや家が隣だったから物心ついた時からずっと一緒にいたんだ。
中学の頃にララを意識するようになって、中学を卒業する時に告白したら、成功して付き合った
懐かしいな…
「何してんのここで」
「友達と旅行中!!今日は別行動なんだぁ!!てかさ!東京の駅広すぎてわかんないよ!ほんと迷子になったべや〜!」
「ふーん」
懐かしい方言に少し地元に帰りたくなってしまう
久々に帰ろっかなぁ
「ふーんって冷たっ!!ねぇ今から行きたいとこあるから付き合ってよ!!!」
「え、ちょっ俺もやることあんだって!!!!」
俺の手を強引に引っ張って歩き出した
こいつはいつもそう。人の話を聞かない
聞かないと言うより自分のことばっかり
別れる時だって……俺あんなに好きだったのに…
“また会えたらララと付き合って?“
“誰よりもキヨくんが好きだよ
ずっと忘れないから、向こうでも頑張ってね“
“世界で1番大好きだよ“
そう言って円満に別れたつもりだったのに
こいつは別れる2か月前から他の奴と浮気してた
全部口だけで中身なんてない
遠距離になるって分かった瞬間すぐ別れる選択をしたのはこいつだった。
その時点で気づくべきだったな…
それを知ったのはこっちに来て2年が経った頃だった。確か大学2年の時
俺だけがこいつのこと本気だったんだよ
3年間も付き合って
結婚も高校生ながら考えてたのに……
「ちょっと人混みすごいから……」
と自然な流れでララが俺の腕に手をかけてきた。
「……っ、おいララっやめろ」
「なにさぁ〜別にいいじゃん!元カレとちょっと腕組むくらい!!それとも意識してんの〜?キヨくん相変わらず可愛いねぇ」
「はぁ…」
ほんとこいつは人の言うことを聞かない
拒んだら拗ねそうだしこのままにしとくか
てか振りほどきたくてもこいつ力強くてできない
ただ、俺は……今、心のどこかで、
“葵に見られたら“
ってあり得ないことを考えていた。
……いや、そんな偶然あるわけない
「ねぇキヨくん彼女できた?」
「……いねぇよ」
「何その間!好きな人いるの?」
「おまえに関係ねぇだろ」
「つまんなー」
ララと話してたらどんどんストレスが溜まっていく
昔はこのテンションも可愛いとさえ思えたのに
スタイルも顔も昔より綺麗になったて俺はこいつを受け入れられねぇし
正直こいつの顔なんてもう見たくもねぇ
「てかさ、キヨくんって今でもゲームガチ勢?」
「……いや、最近はまぁ夜にちょっとだけやるくらい」
「結局ゲーム実況者?にならなかったんだね」
「あぁやりたかったんだけど、教師も諦めたくないなって」
「キヨくんが教師だったらモテそう!!かっこいいもんこんなのが先生だったら!!」
「変なやつはいっぱい寄ってくるわまじで」
「昔から変わんないね変な人寄せ付けるやつ」
「てか!そういえばララもさー最近ゲーム始めたんだよ!“オープンワールド”ってやつ??すごい広い世界で、馬乗ったり魚釣ったりできるやつ!!」
「それ多分ゼルダとかだろ」
「そう!!!それ!!でも途中で気づいたんだよね……」
「なにを?」
「ララ……マップ読めないのゼハハハハ」
「その黒ひげみたいな笑い方やめろあはははは」
今その笑い方出してくんのは違ぇだろ
マジでこいつなんなんだよ!!
「だからねずっと同じ崖の下に落ち続けてんの!」
「お前それ逆に才能あるだろ」
「あとね、祠?ってとこあるじゃん?あそこで“風使え”ってヒント出たから、私リアルでスマホに息吹きかけてたの」
「あはははは腹痛ぇんだけど!!ゲームじゃなくて現実で風起こしてどうすんだよ!」
「だってさ〜スイッチって感知するでしょ?モーションとか!」
「息は感知しねぇだろ馬鹿だなぁ」
「でもさ、私が“フーッ!”って吹いた瞬間、ちょっとリンクが前に進んだの!!」
「たまたまだろ絶対ただの偶然」
「じゃあこれってオカルト……?」
「違ぇよただの勘違いだわぎゃははは」
「でもキヨくん昔、“ゲームは信じる力が大事”って言ってたよ?」
「それは精神論であってスピリチュアルじゃねぇんだよ」
…っく、ダメだ……こいつアホすぎる
俺はもう笑いを堪えきれなくなってた。
こいつほんと変わってないわぁ
ぶっ飛んでておもしろい
なんか懐かしいな……
「なに笑ってんのさ〜!なんか楽しくなってきたっしょ?」
「まぁ、ちょっとだけな」
「でしょ〜!!ララ今日も絶好調☆」
──そんな時だった。
「せんせっ……」
……え?
どこかで、確かに葵の声が聞こえた気がした。
自然と、振り返ってしまう。
だけどいなかった
空耳……?
でも、今確かに葵の声だった気がして、心臓が一瞬止まったような気がした
「なに?キヨくんどしたの?急に振り向いて」
「……いや、なんでもねぇ」
そう言いながら、また胸の奥が痛んだ。
なんか、嫌な予感がする……
この直感はよく当たるんだよな…
ララはまだ俺の腕を軽く掴んでいる。
その距離感は誰が見ても「親密」に見えていたはずだ。
もしかして
いや、まさか。
そんな偶然
「……っ」
だめだ。
その“まさか”が起きたら、俺にとって一番怖いことだから
……今の、もし葵に見られてたら……
心が、一気に冷えた。
見られてたら俺もう拒絶されるわ…
まさか、な……
でもこの胸騒ぎは、どうしても消えなかった。
葵…もしそこにいたなら、俺はまたお前に最悪な姿を見せてしまったかもしれない。
俺、何やってんだよ……
最悪だ。こんなの、ごめんじゃ済まない。
そんな思いが、じわじわと胸の奥を締めつけた。
まぁでも葵じゃないかもしんねぇし
変に考えるのはやめよう
「ね、キヨくん」
「なに?」
「あのさ、ララのこと…恨んでる?」
「は?」
「知ってんだよね?ララがその…浮気してたの」
「友達から聞いた失望したわお前には」
「ごめんね?寂しさに耐えられなかったんだ」
「俺寂しくさせたつもりねぇけどな」
「俺の気持ちが重いって言ってたのは誰だよ」
「怒らないの?」
「もう怒るとかそんなん通り越してんだわ」
「あれから何年経ってんだよ」
「ごめんキヨくん…だけどほんとララ、キヨくんのこと好きだったよ……」
「今更何?」
「元に戻りたいの…昔みたいに」
お前と復縁?するわけねぇだろ調子に乗んな
「お前今旅行中なんだろ?しかも遠距離嫌だって言ってたじゃねぇか」
「引っ越してくるからっ」
「都合良すぎんだろ、いつまでもお前のこと好きだと思うな」
「冗談だよどんな反応するか気になっただけじゃん!!」
「何ムキになってんのさ〜」
ララが俺の事を叩いてきた
いちいち強いんだよ
にしてもムカつく
戻りたいってなんなんだよ嘘でも気持ち悪い
「痛ってぇ」
「ちょっとくらいそっちに未練あってもいいじゃーん」
「1ミリもねぇし今俺好きな人いんだよ」
「好きな人!?やっぱり?!きゃぁぁ!!かわいいキヨくん!!」
「うるせぇ耳元で騒ぐな」
「だけどほんとあの頃はヤンキーで人寄せ付けない雰囲気だったのに、今はなんか落ち着いてかっこいいね」
お前にかっこいいなんて言われたくねぇわ
今すぐにでもこの手を振りほどいて走り去りたい
それすらも出来ないくらいホールドされててもうもう痛いまである
「ねぇキヨくん!あそこのパフェ食べに行こっ?甘いの好きだったよね!!」
俺が返事をする前に手を引っ張って連れてかれた
はぁマジでなんなんだこいつは
なんで俺こんなやつ好きだったんだよ
確かに今思えば付き合ってる時もこうして振り回されてばっかだったな
人気のないカフェに入った
「ねーキヨくん今日実はさ…」
あぁこれララがよく使うやつだ
絶対良くないこと言ってくるやつだ
思わず身構えてしまう
「何?」
「あのね、本当は今日別行動じゃなくて友達と喧嘩しちゃったの」
「うん」
「家泊めてくんないかな?」
いい訳ねぇだろ何考えてんだ
早く北海道帰ってくんねぇかな
「無理に決まってんだろ」
「え〜いいじゃん〜ママにキヨくん今も元気だよ〜ってしたいじゃん」
「はぁまじでお前と話して良い気しねぇ」
「いつまでも自分のことばっかじゃん、俺の気持ちとか1度でも考えたことあんの?」
「き、キヨくんごめんそんな怒らなくても…」
「もう俺とお前は別れてんの、もう赤の他人なんだよ」
「っ……じゃあ…今日だけセフレになってよ」
は?キモすぎて虫酸がはしるわ
もしかしてこいつ、わざわざ俺に会うために旅行来て……これが目的なんか?
マジで何考えてるかわかんねぇ
「は……?」
「なんだよそれ…なるわけねぇだろ」
思わず低い声が出た
ララは、口元に笑みを浮かべて俺を見ている。
これは俺を試してる顔だ
正直冗談なのか本気なのかわからない。
「ララ達相性良かったじゃん!!」
「まじで気持ち悪いからやめろ」
「ね、キヨくんはララ別れてから誰かとしたことあるの?」
「まぁあるっちゃあるけど……」
そりゃ俺も健全な男だからな
お酒の勢いとかあるだろ
「じゃああたしともできるでしょ」
「俺はもう好きなやつとしかもうしねぇの」
「つまんないなぁ」
「そうやってお前は浮気してきたんだな」
「えへへバレちゃった」
バレちゃった☆じゃねぇよ!!!
「じゃあ俺やる事あるしもう行くわ」
「うん…」
なんでお前が悲しそうな顔すんだよ
こんな奴に罪悪感感じてる俺は何なんだ…
「そんな顔すんなよ」
「だってララ明日で帰っちゃうしキヨくんが北海道に、帰ってくるまで会えないじゃん…」
「会えなくていいんだよ俺達は」
「もう終わってんの」
「そうだよね…ごめんねっララなんでだろっ」
くそ泣きやがった
ララが泣く時はほぼ演技だ
俺はもう騙されない
だけど俺のせいで泣いてるこいつに
申し訳なさが勝ってしまって
気づくとララの横に座り頭を撫でていた
「ごめん」
「ララまたキヨくんのこと…」
「勘違いしてるだけだろ久々に会ったからそう思うだけ」
「うぅぅごめんねっ」
ララが泣きじゃくりながらも、突然顔を上げてニコッと笑った
葵の方が可愛い
「ねぇキヨくんぎゅーして?」
一瞬戸惑ったけど、セフレになるよりはマシかと思い、仕方なくララの背中に腕を回した。
その感触が懐かしくて、心のどこかがザワついた。
罪悪感。
だけど葵の方が抱き心地がいい
葵とする方が落ち着くし……幸せだ
葵に会いたい…
「お前、なんでそんな俺を振り回すんだよ…」
ララは俺の胸に顔をうずめながら、甘えた声で言った。
「だってキヨくんが一番特別だったの、誰と付き合っても越えられないさ」
「だから余計触れたくなるの」
「こんなに距離感近くしてるのも」
「ここに旅行来たのも…キヨくんに一か八かで会うためだったんだ」
何が本当で何が嘘かわかんねぇけど
多分こいつはみんなにそう言ってんだろうな…
こんな奴が普通にいるから人を簡単に好きになるのが怖い
「会わなかったらどうしてたんだよ」
「それはその時だよ」
俺はララの気持ちも分かる気がした。
だけど、あの時の思い出が好きなだけで
勘違いしたらダメここで流されたらダメだ
「今から友達に連絡して呼び出して仲直りしろ」
ララは一瞬ためらったが、やがて小さく頷いた。
「うん……分かった」
「来るまでここにいてくれる?」
「あぁ分かったよ」
ララはまた笑顔になって友達に電話をかけた
単純なとこ葵と似てんな…
葵はこんなたち悪くねぇけど
「うんごめんララが悪かったうん今どこ?駅?わかった今から行くうん、ありがと」
ララは俺から離れた
「ありがとうキヨくんのおかげで仲直りできた」
「良かったなじゃあ俺行くわ」
「えーもう行っちゃうの?」
ララは名残惜しそうに唇を尖らせた。
「お前の友達、駅で待ってんだろ。早く行け」
「…そうだね行くよ」
そうしてお会計を済ませた
なんか奢らされた
まぁいいけど
「いつもありがとねキヨくん」
「また地元帰ったら、俺の事見つけろよ〜」
「さっきまで赤の他人だって言ってたくせに〜」
「そうだけどお前ん家俺の家の隣だし…腐れ縁てやつか」
「んふふふそうだね幼馴染だったね」
もそあの頃に戻れるなら
昔の俺に隣に住んでる女だけは好きになるなって伝えてぇわ
「たぶん冬には1回帰るかもしんねぇ」
「その時はララ誰かと結婚してっかもねぇー!」
「はいはい無い無い」
「じゃあ気をつけてな」
「したっけね!!」
またね……か
この“またね“に何回苦しめられたか
笑顔で手を振るララに俺も振り返して見送ってから、俺は映画館に向かった 。
歩きながら、胸の奥が妙にざわつく。
葵のことが、無性に頭に浮かぶ。
もし今、葵がここにいたら。
ララの笑顔なんかより、ずっと温かくて、落ち着く空気に包まれてたはずだ。
「会いてぇ…」
そう小さく呟いた
葵の連絡先交換するべきだった…
今めっちゃ会いてぇわ
俺は今日あったことを忘れるかのように
映画を2つ見た
だけどやっぱりこの罪悪感は消えなかった
清川先生side_________END
今日は久々の休みで買い物に来ていた
補講期間の土日は友達とテニスしたりゲームしたりで買い物するタイミングを逃してた。
もう家には綾鷹くらいしかなくて、
これ以上暑くなったらほんと孤独死してもおかしくない
最近マジで暑すぎて、外出た瞬間「俺がなんか悪いことした?」って地球に問いかけたくなる
そしたらうっしーから急に電話かかってきて
「これもう誰か地球規模でロウリュしてるだろ」って言ってきたくらいだし
ほんと最近暑すぎる
どっかに最強熱波師いるだろこれ
そうしてぼーっとしながらショッピングモールを歩いていた。
今日はコナンの映画でも見て帰ろうかなぁ
葵が隣にいたら楽しんだろうなぁ
俺ずっと葵のことばっかだな
今に始まった事じゃねぇけど四六時中、葵の事ばかり考える生活で、仕事で辛いことがあってもすぐ楽になれるんだよな
会いたい
抱きしめたい
付き合いたい
幸せにしたい
笑顔が見たい
それを毎日、何百回何万回キリがないほど繰り返し考えてる
俺高校生みたいな恋してんなぁ
「昨日会ったばっかなのに…会いてぇ」
そんな独り言さえ出てしまう
そんな時だった
「え!!キヨくん?!!」
懐かしい声がして思わず振り返ると
「ララ…!!!」
そこにいたのは、北海道にいた頃付き合っていた元カノだった。
「うわぁ会えると思ってなかった!!やっばぁ!久しぶりキヨくん!!」
ララは相変わらず明るい笑顔とテンション高めの話し方で昔の記憶をつい思い出してしまう
初めてララを知ったのは………いや家が隣だったから物心ついた時からずっと一緒にいたんだ。
中学の頃にララを意識するようになって、中学を卒業する時に告白したら、成功して付き合った
懐かしいな…
「何してんのここで」
「友達と旅行中!!今日は別行動なんだぁ!!てかさ!東京の駅広すぎてわかんないよ!ほんと迷子になったべや〜!」
「ふーん」
懐かしい方言に少し地元に帰りたくなってしまう
久々に帰ろっかなぁ
「ふーんって冷たっ!!ねぇ今から行きたいとこあるから付き合ってよ!!!」
「え、ちょっ俺もやることあんだって!!!!」
俺の手を強引に引っ張って歩き出した
こいつはいつもそう。人の話を聞かない
聞かないと言うより自分のことばっかり
別れる時だって……俺あんなに好きだったのに…
“また会えたらララと付き合って?“
“誰よりもキヨくんが好きだよ
ずっと忘れないから、向こうでも頑張ってね“
“世界で1番大好きだよ“
そう言って円満に別れたつもりだったのに
こいつは別れる2か月前から他の奴と浮気してた
全部口だけで中身なんてない
遠距離になるって分かった瞬間すぐ別れる選択をしたのはこいつだった。
その時点で気づくべきだったな…
それを知ったのはこっちに来て2年が経った頃だった。確か大学2年の時
俺だけがこいつのこと本気だったんだよ
3年間も付き合って
結婚も高校生ながら考えてたのに……
「ちょっと人混みすごいから……」
と自然な流れでララが俺の腕に手をかけてきた。
「……っ、おいララっやめろ」
「なにさぁ〜別にいいじゃん!元カレとちょっと腕組むくらい!!それとも意識してんの〜?キヨくん相変わらず可愛いねぇ」
「はぁ…」
ほんとこいつは人の言うことを聞かない
拒んだら拗ねそうだしこのままにしとくか
てか振りほどきたくてもこいつ力強くてできない
ただ、俺は……今、心のどこかで、
“葵に見られたら“
ってあり得ないことを考えていた。
……いや、そんな偶然あるわけない
「ねぇキヨくん彼女できた?」
「……いねぇよ」
「何その間!好きな人いるの?」
「おまえに関係ねぇだろ」
「つまんなー」
ララと話してたらどんどんストレスが溜まっていく
昔はこのテンションも可愛いとさえ思えたのに
スタイルも顔も昔より綺麗になったて俺はこいつを受け入れられねぇし
正直こいつの顔なんてもう見たくもねぇ
「てかさ、キヨくんって今でもゲームガチ勢?」
「……いや、最近はまぁ夜にちょっとだけやるくらい」
「結局ゲーム実況者?にならなかったんだね」
「あぁやりたかったんだけど、教師も諦めたくないなって」
「キヨくんが教師だったらモテそう!!かっこいいもんこんなのが先生だったら!!」
「変なやつはいっぱい寄ってくるわまじで」
「昔から変わんないね変な人寄せ付けるやつ」
「てか!そういえばララもさー最近ゲーム始めたんだよ!“オープンワールド”ってやつ??すごい広い世界で、馬乗ったり魚釣ったりできるやつ!!」
「それ多分ゼルダとかだろ」
「そう!!!それ!!でも途中で気づいたんだよね……」
「なにを?」
「ララ……マップ読めないのゼハハハハ」
「その黒ひげみたいな笑い方やめろあはははは」
今その笑い方出してくんのは違ぇだろ
マジでこいつなんなんだよ!!
「だからねずっと同じ崖の下に落ち続けてんの!」
「お前それ逆に才能あるだろ」
「あとね、祠?ってとこあるじゃん?あそこで“風使え”ってヒント出たから、私リアルでスマホに息吹きかけてたの」
「あはははは腹痛ぇんだけど!!ゲームじゃなくて現実で風起こしてどうすんだよ!」
「だってさ〜スイッチって感知するでしょ?モーションとか!」
「息は感知しねぇだろ馬鹿だなぁ」
「でもさ、私が“フーッ!”って吹いた瞬間、ちょっとリンクが前に進んだの!!」
「たまたまだろ絶対ただの偶然」
「じゃあこれってオカルト……?」
「違ぇよただの勘違いだわぎゃははは」
「でもキヨくん昔、“ゲームは信じる力が大事”って言ってたよ?」
「それは精神論であってスピリチュアルじゃねぇんだよ」
…っく、ダメだ……こいつアホすぎる
俺はもう笑いを堪えきれなくなってた。
こいつほんと変わってないわぁ
ぶっ飛んでておもしろい
なんか懐かしいな……
「なに笑ってんのさ〜!なんか楽しくなってきたっしょ?」
「まぁ、ちょっとだけな」
「でしょ〜!!ララ今日も絶好調☆」
──そんな時だった。
「せんせっ……」
……え?
どこかで、確かに葵の声が聞こえた気がした。
自然と、振り返ってしまう。
だけどいなかった
空耳……?
でも、今確かに葵の声だった気がして、心臓が一瞬止まったような気がした
「なに?キヨくんどしたの?急に振り向いて」
「……いや、なんでもねぇ」
そう言いながら、また胸の奥が痛んだ。
なんか、嫌な予感がする……
この直感はよく当たるんだよな…
ララはまだ俺の腕を軽く掴んでいる。
その距離感は誰が見ても「親密」に見えていたはずだ。
もしかして
いや、まさか。
そんな偶然
「……っ」
だめだ。
その“まさか”が起きたら、俺にとって一番怖いことだから
……今の、もし葵に見られてたら……
心が、一気に冷えた。
見られてたら俺もう拒絶されるわ…
まさか、な……
でもこの胸騒ぎは、どうしても消えなかった。
葵…もしそこにいたなら、俺はまたお前に最悪な姿を見せてしまったかもしれない。
俺、何やってんだよ……
最悪だ。こんなの、ごめんじゃ済まない。
そんな思いが、じわじわと胸の奥を締めつけた。
まぁでも葵じゃないかもしんねぇし
変に考えるのはやめよう
「ね、キヨくん」
「なに?」
「あのさ、ララのこと…恨んでる?」
「は?」
「知ってんだよね?ララがその…浮気してたの」
「友達から聞いた失望したわお前には」
「ごめんね?寂しさに耐えられなかったんだ」
「俺寂しくさせたつもりねぇけどな」
「俺の気持ちが重いって言ってたのは誰だよ」
「怒らないの?」
「もう怒るとかそんなん通り越してんだわ」
「あれから何年経ってんだよ」
「ごめんキヨくん…だけどほんとララ、キヨくんのこと好きだったよ……」
「今更何?」
「元に戻りたいの…昔みたいに」
お前と復縁?するわけねぇだろ調子に乗んな
「お前今旅行中なんだろ?しかも遠距離嫌だって言ってたじゃねぇか」
「引っ越してくるからっ」
「都合良すぎんだろ、いつまでもお前のこと好きだと思うな」
「冗談だよどんな反応するか気になっただけじゃん!!」
「何ムキになってんのさ〜」
ララが俺の事を叩いてきた
いちいち強いんだよ
にしてもムカつく
戻りたいってなんなんだよ嘘でも気持ち悪い
「痛ってぇ」
「ちょっとくらいそっちに未練あってもいいじゃーん」
「1ミリもねぇし今俺好きな人いんだよ」
「好きな人!?やっぱり?!きゃぁぁ!!かわいいキヨくん!!」
「うるせぇ耳元で騒ぐな」
「だけどほんとあの頃はヤンキーで人寄せ付けない雰囲気だったのに、今はなんか落ち着いてかっこいいね」
お前にかっこいいなんて言われたくねぇわ
今すぐにでもこの手を振りほどいて走り去りたい
それすらも出来ないくらいホールドされててもうもう痛いまである
「ねぇキヨくん!あそこのパフェ食べに行こっ?甘いの好きだったよね!!」
俺が返事をする前に手を引っ張って連れてかれた
はぁマジでなんなんだこいつは
なんで俺こんなやつ好きだったんだよ
確かに今思えば付き合ってる時もこうして振り回されてばっかだったな
人気のないカフェに入った
「ねーキヨくん今日実はさ…」
あぁこれララがよく使うやつだ
絶対良くないこと言ってくるやつだ
思わず身構えてしまう
「何?」
「あのね、本当は今日別行動じゃなくて友達と喧嘩しちゃったの」
「うん」
「家泊めてくんないかな?」
いい訳ねぇだろ何考えてんだ
早く北海道帰ってくんねぇかな
「無理に決まってんだろ」
「え〜いいじゃん〜ママにキヨくん今も元気だよ〜ってしたいじゃん」
「はぁまじでお前と話して良い気しねぇ」
「いつまでも自分のことばっかじゃん、俺の気持ちとか1度でも考えたことあんの?」
「き、キヨくんごめんそんな怒らなくても…」
「もう俺とお前は別れてんの、もう赤の他人なんだよ」
「っ……じゃあ…今日だけセフレになってよ」
は?キモすぎて虫酸がはしるわ
もしかしてこいつ、わざわざ俺に会うために旅行来て……これが目的なんか?
マジで何考えてるかわかんねぇ
「は……?」
「なんだよそれ…なるわけねぇだろ」
思わず低い声が出た
ララは、口元に笑みを浮かべて俺を見ている。
これは俺を試してる顔だ
正直冗談なのか本気なのかわからない。
「ララ達相性良かったじゃん!!」
「まじで気持ち悪いからやめろ」
「ね、キヨくんはララ別れてから誰かとしたことあるの?」
「まぁあるっちゃあるけど……」
そりゃ俺も健全な男だからな
お酒の勢いとかあるだろ
「じゃああたしともできるでしょ」
「俺はもう好きなやつとしかもうしねぇの」
「つまんないなぁ」
「そうやってお前は浮気してきたんだな」
「えへへバレちゃった」
バレちゃった☆じゃねぇよ!!!
「じゃあ俺やる事あるしもう行くわ」
「うん…」
なんでお前が悲しそうな顔すんだよ
こんな奴に罪悪感感じてる俺は何なんだ…
「そんな顔すんなよ」
「だってララ明日で帰っちゃうしキヨくんが北海道に、帰ってくるまで会えないじゃん…」
「会えなくていいんだよ俺達は」
「もう終わってんの」
「そうだよね…ごめんねっララなんでだろっ」
くそ泣きやがった
ララが泣く時はほぼ演技だ
俺はもう騙されない
だけど俺のせいで泣いてるこいつに
申し訳なさが勝ってしまって
気づくとララの横に座り頭を撫でていた
「ごめん」
「ララまたキヨくんのこと…」
「勘違いしてるだけだろ久々に会ったからそう思うだけ」
「うぅぅごめんねっ」
ララが泣きじゃくりながらも、突然顔を上げてニコッと笑った
葵の方が可愛い
「ねぇキヨくんぎゅーして?」
一瞬戸惑ったけど、セフレになるよりはマシかと思い、仕方なくララの背中に腕を回した。
その感触が懐かしくて、心のどこかがザワついた。
罪悪感。
だけど葵の方が抱き心地がいい
葵とする方が落ち着くし……幸せだ
葵に会いたい…
「お前、なんでそんな俺を振り回すんだよ…」
ララは俺の胸に顔をうずめながら、甘えた声で言った。
「だってキヨくんが一番特別だったの、誰と付き合っても越えられないさ」
「だから余計触れたくなるの」
「こんなに距離感近くしてるのも」
「ここに旅行来たのも…キヨくんに一か八かで会うためだったんだ」
何が本当で何が嘘かわかんねぇけど
多分こいつはみんなにそう言ってんだろうな…
こんな奴が普通にいるから人を簡単に好きになるのが怖い
「会わなかったらどうしてたんだよ」
「それはその時だよ」
俺はララの気持ちも分かる気がした。
だけど、あの時の思い出が好きなだけで
勘違いしたらダメここで流されたらダメだ
「今から友達に連絡して呼び出して仲直りしろ」
ララは一瞬ためらったが、やがて小さく頷いた。
「うん……分かった」
「来るまでここにいてくれる?」
「あぁ分かったよ」
ララはまた笑顔になって友達に電話をかけた
単純なとこ葵と似てんな…
葵はこんなたち悪くねぇけど
「うんごめんララが悪かったうん今どこ?駅?わかった今から行くうん、ありがと」
ララは俺から離れた
「ありがとうキヨくんのおかげで仲直りできた」
「良かったなじゃあ俺行くわ」
「えーもう行っちゃうの?」
ララは名残惜しそうに唇を尖らせた。
「お前の友達、駅で待ってんだろ。早く行け」
「…そうだね行くよ」
そうしてお会計を済ませた
なんか奢らされた
まぁいいけど
「いつもありがとねキヨくん」
「また地元帰ったら、俺の事見つけろよ〜」
「さっきまで赤の他人だって言ってたくせに〜」
「そうだけどお前ん家俺の家の隣だし…腐れ縁てやつか」
「んふふふそうだね幼馴染だったね」
もそあの頃に戻れるなら
昔の俺に隣に住んでる女だけは好きになるなって伝えてぇわ
「たぶん冬には1回帰るかもしんねぇ」
「その時はララ誰かと結婚してっかもねぇー!」
「はいはい無い無い」
「じゃあ気をつけてな」
「したっけね!!」
またね……か
この“またね“に何回苦しめられたか
笑顔で手を振るララに俺も振り返して見送ってから、俺は映画館に向かった 。
歩きながら、胸の奥が妙にざわつく。
葵のことが、無性に頭に浮かぶ。
もし今、葵がここにいたら。
ララの笑顔なんかより、ずっと温かくて、落ち着く空気に包まれてたはずだ。
「会いてぇ…」
そう小さく呟いた
葵の連絡先交換するべきだった…
今めっちゃ会いてぇわ
俺は今日あったことを忘れるかのように
映画を2つ見た
だけどやっぱりこの罪悪感は消えなかった
清川先生side_________END



