清川先生side___________





この2週間俺は葵に冷たくしてどんな反応するか楽しんでた。


遅刻してきたら、キツく怒って
話しかけられても、わざと素っ気なく返した。



けど、家に帰る度、葵とまともに会話しなかったなとか、笑顔にさせてやれなかったとか、後悔に苛まれていた。





“冷たくしたら、どんな反応をするか“なんてただの前置きだった


ただ自分の気持ちが抑えられなくなるのが怖かっただけ。


これ以上葵に触れたら、抑えが効かなくなる気がして。


……葵のこと、ただ好きだって気持ちだけなら
こんなに苦しくなかったかもしれない。



笑っててほしい。
触れたい。
抱きしめたい。
俺だけを見ててほしい。
俺だけのことを考えて欲しい。
俺を好きでいて欲しい。


その全部を欲しがってる自分が怖かった。


どんどん欲張りになっていく自分が。

だから、少しでも距離を取ることで
“生徒”と“教師”に戻れると思った。

でも無理だった。


葵に会うたびにたまらなく好きになっていく


レトと葵が話してるところを見た瞬間、ありえないくらい腹が立った。


こんな気持ちになるの久しぶりで
自分でも怖かった


前に、レトが葵の事好きってうっしーに聞いてから、取られてしまうんじゃないかってヒヤヒヤしてた


葵の頭を撫でたのを見た時も、嫉妬で頭おかしくなりそうになった


できるならぶっ飛ばしてやりたかった


俺の葵…じゃねぇけど、誰にも葵に触れてほしくない。




ご褒美って言い訳で好き放題しちまったけど

葵に触れるたびに俺ほんとに幸せになる
抱きしめる度葵が幸せそうな顔するから
たまらなく愛おしく感じて


葵に面と向かって好きって言えてほんと涙が出るほど嬉しかった


やっと葵に伝えられた…


これは今までに無い感情だった


好きな人が出来たら普通に好きだって言えるのに、こんな関係のせいで…でもそれがいいのかも



俺こんなに葵のこと好きなんだな…
もっと違う形で葵と出会いたかった。



……1ヶ月、会えねぇのか。


夏休み、あいつは自由に誰とでも会えて、誰かに笑って、触れられて
それでも、俺のことを思い出してくれるんだろうか。

まさかだけど、誰かに奪われたりしねぇよな…


信じてるけど、不安でたまんねぇ


連絡先、交換すればよかったかな……
いや、それは踏み越えちゃいけねぇラインだな


散々好きだって言って、抱き締めた奴がそんなこと言えねぇけど


でも、葵は「先生のことだけが好き」って言ってくれた。


……大丈夫。俺は信じる。葵を。


そうだ。
教師って立場を忘れたわけじゃない。
でも……葵のことは、誰にも渡さない。



あぁダメだな、やっぱり葵がいねぇと
俺は空っぽだ。


「葵、会いたいよ」


何も無い部屋で、その言葉が反響した。


さっきまで会ってたのにな…
もう葵の声が聞きたい
葵の笑顔がみたい




きっと、夏休みどこかで会える気がする。
その日まで。

俺はずっと、葵だけを想ってる。
誰にも言えないまま、ただ、それだけを抱えて。


早く葵を…俺の彼女にしたい…







先生side______END_____