あれから1週間経って前より先生とは仲良くなった気がする。
ナチ達とこーすけを集めてにあの日のこと全部話したら泣いてた
「夫婦になった未来が見えるよ〜」とかいじられたりしたけど、あたしの好きな気持ちも全部認めてくれてるみたいで嬉しかった。
だけどこーすけは怒ってた。ありえない俺の妹を取るな!!ってあたし姉なんだけどな
麻央ちゃんはあの日生きる希望を失って屋上から飛び降りたらしい。
きっと…いや絶対あたしのせいだ。
すごく罪悪感でいっぱいになった。
だけど屋上の真下は花がいっぱい植えられてて
両手両足の骨折で済んだらしい。
今日は校長からの指示で先生がお見舞いに行ってるみたい。
麻央ちゃんと1番仲良いのが先生だからって理由で
仕方ないけどすごく不安。刺されたりしてないかな…
あと
未だに先生はLINE交換してくれないんだよなぁ
お前はすぐ調子乗るからだめだって言われた
そら乗るだろ、乗らない方がおかしいだろ
まぁ麻央ちゃんみたいになりたくないしそれでいいのかも、最近忙しそうだし
朝
月曜日 7時30分
「葵そろそろ起きろよー」
目が覚めると目の前にエプロン姿のこーすけがいた
毎回思うけど勝手に入ってくんなよ
起こしてくれんのはありがたいけど
「おはよぉ今何時?」
「7時半だよ朝ごはん作ったからたべてな」
「ありがとう」
「あ、今日から水泳だから水着持ってけよ」
え、忘れてたまずいどうしよう
水着はあるけどあたし泳げないんだよな
1年の時も2年の時もサボってたけど、今年はそうもいかなくて絶対にやらないといけない
終わったわ。
一旦ご飯食べよう。これは現実じゃないかもしれない
リビングで
「なぁこーすけ今から風邪引く方法教えて」
「𝑆𝐴𝑆𝑈𝐺𝐴⤴︎𝑁𝐼あるわけないだろ」
「朝からそれやめれる??」
「いやぁプール休みたいあたしの分まで授業出てよ」
「周り女子ばっかで俺がいたらキモイだろ」
「他人だったら絶対やだ」
「おい。カナズチだっけ?泳いでるとこ見たことないわそういえば」
「泳げないんだよ、浮かんだら沈むし、沈んだら沈んだで焦って溺れる」
「それ、ただの石じゃん」
「やかましいわ」
こーすけは笑いながらお茶をゴクッと飲んだ
「まぁマジでやばいって思った時はちゃんと牛沢先生に言えよ?」
「あぁそうだな」
「てかもう8時10分だぞ〜行くぞ俺」
「え、ちょ!置いてくな!!」
「3分待ってやる」
こーすけがどこかのボスキャラ感出しながら言った
「バルス!!」
「よし置いてくわ」
「冗談だろ!!」
こーすけがめっちゃ笑ってるわ
今日も平和でいいわぁ
学校に着くと、いつものメンバーがいた
葵 「おはよ〜」
ナチ「おはよ〜あおちん」
ナチ アリサ「おはよー」
ナチ「今日3、4限プールだけど水着もってきた?」
葵 「一応持ってきた」
ナナ 「そういえばあおちんって泳げんだっけ?泳いてるとこみたことねぇけど」
ナチ 「あおはカナズチだからすぐ溺れんだよな」
葵 「まじでやばいんだよ入りたくねぇ」
アリサ 「今年の見学地獄だよ水の中いた方がマシだわ」
葵 「なにすんの?」
ナナ 「なんかね男子と混じってプールの周り走ったりすんのよ、頭おかしいって」
アリサ 「うちらはただサボってるだけだけど、普通に生理とかだったら死ぬぞあれ」
葵 「うぇぇ最悪」
ナチ 「葵が溺れたらあたしが助けてやんよ」
葵 「それでもはいりたくねぇ」
水泳の時間が近づくにつれて、心臓がじわじわと締めつけられていく感じ。
制服のポケットの中で手をぎゅっと握って、自分に言い聞かせる。
大丈夫、最悪見学すればいい。
プールの水は怖いけど、牛沢先生はきっとちゃんと見てくれてる。
はぁなんで今日に限って先生いねぇんだよ
二限が終わるのが辛い
もうやだ
「葵顔死んでんぞ」
「今から隕石降ってこねぇかな」
「それはそれで危ねぇだろ」
「終わったらポテト買ってあげるよ」
「え、まじ?頑張るそれはやるわ」
「あお単純バカで良かった」
「聞こえてんぞ」
「けど溺れてるとこ動画撮りてぇな」
「助けろよそこは」
「あははははそうだな」
ナチは小学校の時に水泳で日本ベスト8に入ったくらい泳ぐのがうまい
に、比べて私は走るのは遅いし、泳げないし何ができるんだか
ついに三限になってしまった。
久々の水着にちょっと心臓バクバクする
怖い、溺れるの、怖い
てかまだ4月だぞ凍え死ぬわ
プールサイドに立つと足が震えだしてきた
水の反射が眩しい。
準備体操を済ませて
数人の女子はすでに水に入ってて、きゃーきゃー言いながら泳いでる。
牛沢先生は笛を口にくわえて行った
「おーし、じゃあ今日はまず泳力測定から!25m泳げる人は列に並べー!」
あたしはその列のいっちばん後ろに立った。
というか、列のふりをして立ってるだけ。
誰よりも小さくなって、存在消すくらいの勢いで。
そしたら牛沢先生がこっち見て言ってきた。
「坂木、いけるか?泳いだことないよな」
「溺れたら助けてくれます?」
「当たり前だ」
「ううぅ頑張ります」
「坂木なら大丈夫だよ、けど無理だけはするな」
「はい頑張ります!」
あたしの番だぁぁぁ死ぬんだ今から
「……はぁ、行くしかねぇ……!」
潜る前に一度だけ深呼吸して、あたしはプールに飛び込んだ。終わったらポテトが食べれる!
最初の5メートルくらいは潜水でなんとかなった。
水の中は怖いけど、まだ足も動いてるし、息も持つ。
このまま行けるかも──
そう思ったのも束の間。
身体が浮いてきて、そろそろ泳ぎに切り替えようとしたとき。
「……え、どうやって浮けばいいの?」
一瞬思考が止まった。
あたし小、中、高で1度しか泳いだことないんだった
腕を前に出して、かくように動かしてみた。
でも、進まない。
しかも足がつかないことに気づいた瞬間、身体が沈みかけて、慌ててバタ足しようとしても水が暴れるだけでうまくいかない。
「っ……!」
息が苦しい。死ぬんだもう、
なんか走馬灯が見える気がする
浮こうとしても浮けない。
水の中で視界がぐるぐるして、耳に入ってくる音はぼやけてる。
「うぅっ!」
パニックになって水面から顔を出そうとするけど、息がうまく吸えない。
水が口に入って、咳き込んで──
「坂木!!」
先生の声が遠くで聞こえた気がした。
次の瞬間、何かが背中に触れて、ぐいっと身体が引っ張られる。
「大丈夫だからな、葵!」
ナチの声だった。
一緒に浮かんできて、すぐに牛沢先生の姿が視界に入る。
「レト!!坂木を保健室連れてけ!!俺もいくから」
近くに居た玲斗くんを指名した
朦朧とした意識の中で、抱えられるようにしてプールサイドに引き上げられた。
そこで意識は途絶えた
目が覚めると、白い天井が見えた。
ぼんやりした視界が少しずつクリアになって、あたしは瞬きした。
「……あ」
視線を横に向けると、すぐ隣に玲斗くんがいた。
制服の袖が濡れていて、髪もまだ少し水に濡れてる。
「起きた!!?大丈夫?しんどくない?」
「だ、大丈夫」
「よかったぁぁ死んだんかと思ったぁ」
玲斗くんってこんな人なんだちょっと面白いかも
だけどなんか手に違和感を感じる
すごい暖かい
あたしの手を、玲斗くんがぎゅっと握ってた。
「な、なんで手?」
反射的に手を引こうとすると、玲斗くんがハッとして言った。
「あ、ごめんっ」
玲斗くんが慌てて手を離した
てか気まずい。そこまで話したことないのに
「……よかった……ほんとに……」
その声は、泣きそうなほどかすれていて。
「そんなに焦った?」
「焦るに決まってるやろ、あんなん……」
あたしが無言になると、玲斗くんは少し黙ったあと、静かに言った。
「急に先生が焦りだして何かと思って見たら葵溺れてるし、けどどうにも出来やんくて」
「でもありがとね」
ぽつんとそう言うと、玲斗くんは小さく頷いて、うつむいた。
「もっと、しっかり助けれたらよかったけど……」
「十分だよ、ほんとに」
目が覚めて最初に見たのが玲斗くんだったこと。
それがなんだか、あたしにとっては救いだったのかもしれない
少しだけ目を伏せながら、そっと手のひらを見つめる。
さっきまで繋がれていた手の感触が、まだほんのり残っていた。
するとそこにこーすけがやってきた
「葵っ!!!!大丈夫かあ!!!」
こーすけがいつにも増して焦ってる
「うるさいなぁ」
玲斗「じゃあ俺教室戻るわな」
葵「うんありがとうね」
こーすけ 「なんで?いたらいいじゃん」
玲斗「いや今から部活の呼び出しあってさ」
こーすけ 「サッカー部ってほんと忙しいな」
ごめん助けてくれたのはありがとうだけど
気まずいから早く行ってくれお願い
葵「玲斗くんまたね」
玲斗「無理したらあかんで〜」
そう言って玲斗くんは出ていった
「香坂絶対葵のこと好きだろ」
「は?なんで?」
「いつも葵の事見てる気がする」
「自意識過剰?では無いか、てか違うクラスなのになんで見てるの知ってんだよきめぇよ」
「変な虫つかねぇようにしたってんだよ」
「あたしのこと好きすぎだろ怖いよ」
「俺の妹っ!」
「お姉さんな」
「てか、今日はゆっくりここで安静にしといてだってさ保健室の先生が言ってたよ」
「よっしゃサボれるラッキー」
「あと牛沢先生から聞いたけど葵は危ねぇからプールの授業はレポートに変更だって」
ありがとうほんとに感謝
あたしの命は先生にかかってる
「まじで神すぎる」
「あ、俺購買いかねぇと!」
「あたしより飯かよ」
「飯には勝てねぇだろ」
「まぁそうだな」
「あと迎えに来たいんだけど今日バイトだからさき帰んなごめんな」
「分かったまた後でな」
「ゆっくりしとけよ」
こーすけはあたしの頭をくしゃっと撫でて立ち上がった
ドアの方へ向かう背中に、小さく手を振った。
ふぅ。
ひとりになった保健室で、窓の外の青空をぼんやり見上げる。
なんかいろいろあったのに、今日ってまだ月曜日なんだよな。
「はぁ疲れた……」
急に睡魔が襲ってくる。瞼が重い
目を瞑る瞬間に先生のことを考えた
起きた時先生に会えたらなって
でも今日は休みだから会えないな
「先生、寂しいよっ」
その声は廊下で皆がはしゃぐ声にかき消された
放課後に続く
ナチ達とこーすけを集めてにあの日のこと全部話したら泣いてた
「夫婦になった未来が見えるよ〜」とかいじられたりしたけど、あたしの好きな気持ちも全部認めてくれてるみたいで嬉しかった。
だけどこーすけは怒ってた。ありえない俺の妹を取るな!!ってあたし姉なんだけどな
麻央ちゃんはあの日生きる希望を失って屋上から飛び降りたらしい。
きっと…いや絶対あたしのせいだ。
すごく罪悪感でいっぱいになった。
だけど屋上の真下は花がいっぱい植えられてて
両手両足の骨折で済んだらしい。
今日は校長からの指示で先生がお見舞いに行ってるみたい。
麻央ちゃんと1番仲良いのが先生だからって理由で
仕方ないけどすごく不安。刺されたりしてないかな…
あと
未だに先生はLINE交換してくれないんだよなぁ
お前はすぐ調子乗るからだめだって言われた
そら乗るだろ、乗らない方がおかしいだろ
まぁ麻央ちゃんみたいになりたくないしそれでいいのかも、最近忙しそうだし
朝
月曜日 7時30分
「葵そろそろ起きろよー」
目が覚めると目の前にエプロン姿のこーすけがいた
毎回思うけど勝手に入ってくんなよ
起こしてくれんのはありがたいけど
「おはよぉ今何時?」
「7時半だよ朝ごはん作ったからたべてな」
「ありがとう」
「あ、今日から水泳だから水着持ってけよ」
え、忘れてたまずいどうしよう
水着はあるけどあたし泳げないんだよな
1年の時も2年の時もサボってたけど、今年はそうもいかなくて絶対にやらないといけない
終わったわ。
一旦ご飯食べよう。これは現実じゃないかもしれない
リビングで
「なぁこーすけ今から風邪引く方法教えて」
「𝑆𝐴𝑆𝑈𝐺𝐴⤴︎𝑁𝐼あるわけないだろ」
「朝からそれやめれる??」
「いやぁプール休みたいあたしの分まで授業出てよ」
「周り女子ばっかで俺がいたらキモイだろ」
「他人だったら絶対やだ」
「おい。カナズチだっけ?泳いでるとこ見たことないわそういえば」
「泳げないんだよ、浮かんだら沈むし、沈んだら沈んだで焦って溺れる」
「それ、ただの石じゃん」
「やかましいわ」
こーすけは笑いながらお茶をゴクッと飲んだ
「まぁマジでやばいって思った時はちゃんと牛沢先生に言えよ?」
「あぁそうだな」
「てかもう8時10分だぞ〜行くぞ俺」
「え、ちょ!置いてくな!!」
「3分待ってやる」
こーすけがどこかのボスキャラ感出しながら言った
「バルス!!」
「よし置いてくわ」
「冗談だろ!!」
こーすけがめっちゃ笑ってるわ
今日も平和でいいわぁ
学校に着くと、いつものメンバーがいた
葵 「おはよ〜」
ナチ「おはよ〜あおちん」
ナチ アリサ「おはよー」
ナチ「今日3、4限プールだけど水着もってきた?」
葵 「一応持ってきた」
ナナ 「そういえばあおちんって泳げんだっけ?泳いてるとこみたことねぇけど」
ナチ 「あおはカナズチだからすぐ溺れんだよな」
葵 「まじでやばいんだよ入りたくねぇ」
アリサ 「今年の見学地獄だよ水の中いた方がマシだわ」
葵 「なにすんの?」
ナナ 「なんかね男子と混じってプールの周り走ったりすんのよ、頭おかしいって」
アリサ 「うちらはただサボってるだけだけど、普通に生理とかだったら死ぬぞあれ」
葵 「うぇぇ最悪」
ナチ 「葵が溺れたらあたしが助けてやんよ」
葵 「それでもはいりたくねぇ」
水泳の時間が近づくにつれて、心臓がじわじわと締めつけられていく感じ。
制服のポケットの中で手をぎゅっと握って、自分に言い聞かせる。
大丈夫、最悪見学すればいい。
プールの水は怖いけど、牛沢先生はきっとちゃんと見てくれてる。
はぁなんで今日に限って先生いねぇんだよ
二限が終わるのが辛い
もうやだ
「葵顔死んでんぞ」
「今から隕石降ってこねぇかな」
「それはそれで危ねぇだろ」
「終わったらポテト買ってあげるよ」
「え、まじ?頑張るそれはやるわ」
「あお単純バカで良かった」
「聞こえてんぞ」
「けど溺れてるとこ動画撮りてぇな」
「助けろよそこは」
「あははははそうだな」
ナチは小学校の時に水泳で日本ベスト8に入ったくらい泳ぐのがうまい
に、比べて私は走るのは遅いし、泳げないし何ができるんだか
ついに三限になってしまった。
久々の水着にちょっと心臓バクバクする
怖い、溺れるの、怖い
てかまだ4月だぞ凍え死ぬわ
プールサイドに立つと足が震えだしてきた
水の反射が眩しい。
準備体操を済ませて
数人の女子はすでに水に入ってて、きゃーきゃー言いながら泳いでる。
牛沢先生は笛を口にくわえて行った
「おーし、じゃあ今日はまず泳力測定から!25m泳げる人は列に並べー!」
あたしはその列のいっちばん後ろに立った。
というか、列のふりをして立ってるだけ。
誰よりも小さくなって、存在消すくらいの勢いで。
そしたら牛沢先生がこっち見て言ってきた。
「坂木、いけるか?泳いだことないよな」
「溺れたら助けてくれます?」
「当たり前だ」
「ううぅ頑張ります」
「坂木なら大丈夫だよ、けど無理だけはするな」
「はい頑張ります!」
あたしの番だぁぁぁ死ぬんだ今から
「……はぁ、行くしかねぇ……!」
潜る前に一度だけ深呼吸して、あたしはプールに飛び込んだ。終わったらポテトが食べれる!
最初の5メートルくらいは潜水でなんとかなった。
水の中は怖いけど、まだ足も動いてるし、息も持つ。
このまま行けるかも──
そう思ったのも束の間。
身体が浮いてきて、そろそろ泳ぎに切り替えようとしたとき。
「……え、どうやって浮けばいいの?」
一瞬思考が止まった。
あたし小、中、高で1度しか泳いだことないんだった
腕を前に出して、かくように動かしてみた。
でも、進まない。
しかも足がつかないことに気づいた瞬間、身体が沈みかけて、慌ててバタ足しようとしても水が暴れるだけでうまくいかない。
「っ……!」
息が苦しい。死ぬんだもう、
なんか走馬灯が見える気がする
浮こうとしても浮けない。
水の中で視界がぐるぐるして、耳に入ってくる音はぼやけてる。
「うぅっ!」
パニックになって水面から顔を出そうとするけど、息がうまく吸えない。
水が口に入って、咳き込んで──
「坂木!!」
先生の声が遠くで聞こえた気がした。
次の瞬間、何かが背中に触れて、ぐいっと身体が引っ張られる。
「大丈夫だからな、葵!」
ナチの声だった。
一緒に浮かんできて、すぐに牛沢先生の姿が視界に入る。
「レト!!坂木を保健室連れてけ!!俺もいくから」
近くに居た玲斗くんを指名した
朦朧とした意識の中で、抱えられるようにしてプールサイドに引き上げられた。
そこで意識は途絶えた
目が覚めると、白い天井が見えた。
ぼんやりした視界が少しずつクリアになって、あたしは瞬きした。
「……あ」
視線を横に向けると、すぐ隣に玲斗くんがいた。
制服の袖が濡れていて、髪もまだ少し水に濡れてる。
「起きた!!?大丈夫?しんどくない?」
「だ、大丈夫」
「よかったぁぁ死んだんかと思ったぁ」
玲斗くんってこんな人なんだちょっと面白いかも
だけどなんか手に違和感を感じる
すごい暖かい
あたしの手を、玲斗くんがぎゅっと握ってた。
「な、なんで手?」
反射的に手を引こうとすると、玲斗くんがハッとして言った。
「あ、ごめんっ」
玲斗くんが慌てて手を離した
てか気まずい。そこまで話したことないのに
「……よかった……ほんとに……」
その声は、泣きそうなほどかすれていて。
「そんなに焦った?」
「焦るに決まってるやろ、あんなん……」
あたしが無言になると、玲斗くんは少し黙ったあと、静かに言った。
「急に先生が焦りだして何かと思って見たら葵溺れてるし、けどどうにも出来やんくて」
「でもありがとね」
ぽつんとそう言うと、玲斗くんは小さく頷いて、うつむいた。
「もっと、しっかり助けれたらよかったけど……」
「十分だよ、ほんとに」
目が覚めて最初に見たのが玲斗くんだったこと。
それがなんだか、あたしにとっては救いだったのかもしれない
少しだけ目を伏せながら、そっと手のひらを見つめる。
さっきまで繋がれていた手の感触が、まだほんのり残っていた。
するとそこにこーすけがやってきた
「葵っ!!!!大丈夫かあ!!!」
こーすけがいつにも増して焦ってる
「うるさいなぁ」
玲斗「じゃあ俺教室戻るわな」
葵「うんありがとうね」
こーすけ 「なんで?いたらいいじゃん」
玲斗「いや今から部活の呼び出しあってさ」
こーすけ 「サッカー部ってほんと忙しいな」
ごめん助けてくれたのはありがとうだけど
気まずいから早く行ってくれお願い
葵「玲斗くんまたね」
玲斗「無理したらあかんで〜」
そう言って玲斗くんは出ていった
「香坂絶対葵のこと好きだろ」
「は?なんで?」
「いつも葵の事見てる気がする」
「自意識過剰?では無いか、てか違うクラスなのになんで見てるの知ってんだよきめぇよ」
「変な虫つかねぇようにしたってんだよ」
「あたしのこと好きすぎだろ怖いよ」
「俺の妹っ!」
「お姉さんな」
「てか、今日はゆっくりここで安静にしといてだってさ保健室の先生が言ってたよ」
「よっしゃサボれるラッキー」
「あと牛沢先生から聞いたけど葵は危ねぇからプールの授業はレポートに変更だって」
ありがとうほんとに感謝
あたしの命は先生にかかってる
「まじで神すぎる」
「あ、俺購買いかねぇと!」
「あたしより飯かよ」
「飯には勝てねぇだろ」
「まぁそうだな」
「あと迎えに来たいんだけど今日バイトだからさき帰んなごめんな」
「分かったまた後でな」
「ゆっくりしとけよ」
こーすけはあたしの頭をくしゃっと撫でて立ち上がった
ドアの方へ向かう背中に、小さく手を振った。
ふぅ。
ひとりになった保健室で、窓の外の青空をぼんやり見上げる。
なんかいろいろあったのに、今日ってまだ月曜日なんだよな。
「はぁ疲れた……」
急に睡魔が襲ってくる。瞼が重い
目を瞑る瞬間に先生のことを考えた
起きた時先生に会えたらなって
でも今日は休みだから会えないな
「先生、寂しいよっ」
その声は廊下で皆がはしゃぐ声にかき消された
放課後に続く



